
黒猫のにゃんたる
咲きたい日
咲きたい日って、たまにあるんだにゃ。
今日は、それ。
バラの季節になって、行きつけの庭がぴんくと、あかと、しろでいっぱいになった。
毎日それを見てたら、ぼくもこういう色を着たくなった。
仕立て屋さんに、ローズピンクのシャツを頼んでみた。
袖口には、フリル。
注文するとき、胸がちょっとドキドキした。
ぼくのなかでまだ眠ってたぼくが、すこしだけ顔を出した気がしたから。
出来上がりを取りに行ったら、思ってたよりずっとぴったり来ていた。
ぼくの黒い毛に、桃色がよく映える。
鏡のなかのぼくは、ぼくよりもうちょっと立派な別のだれかみたいだった。
外に出て、バラの庭をひと回りした。
バラたちがちょっとだけぼくのことを見てる気がした。
『あ、おなじ色の人だ』って。
きれいな服を着るのは、誰かに見せたいんじゃない。
今日のぼくはこういうぼくでもよかったって、自分に確かめたいだけ。
……ところで、バラの香りを嗅いだらお腹が鳴った。
甘い匂いって、食べ物の匂いと似てるんだにゃ。
今日のおやつは、ピンクのなにかにしようかな。