
ふさふさのにゃんたる
釣りの日
魚は、たぶん、口実なんだにゃ。
本当に欲しいのは、釣れないあいだの時間のほうかもしれない。
水音と、葉っぱのざわめきと、たまに飛ぶ虫の音。
釣り糸が垂れてると、世界の音が、よく聞こえてくる。
『なにもしてない』ように見えるけど、たぶん、ぼくは『なにかしてる』。
なにをしてるかは、自分でも、よくわからないんだけど。
『ぼーっとする』って、けっこう難しい技術なんだにゃ。
釣り糸が、そのきっかけをくれる。
……ところで、ウキが揺れた。ぼくの心臓も、ちょっと揺れた。
さっきまで『釣れなくてもいい』って思ってたのに、目が、勝手にウキを追いかけてる。
からだのほうが、ぼくより、ずっと正直なんだにゃ。