帰りの新幹線
ふつう・4分

帰りの新幹線:みんなの「普通」が、しんどい

匿名の普通になれない人・4分・ふつう

インスタを開いた。

同級生が結婚してた。ウェディングドレスの写真。「最高の一日でした」って書いてある。いいねが300件ついてる。

スクロールする。

別の同級生が転職してた。「年収100万アップ!」って書いてある。スーツ着て、新しいオフィスの前で笑ってる。

もっとスクロールする。

知り合いが家を買ってた。新築。庭付き。犬もいる。

閉じた。

別に、うらやましくないって思おうとした。人は人、自分は自分。

無理だった。

私は29歳。一人暮らし。賃貸のワンルーム。彼氏なし。貯金は50万。仕事は好きでも嫌いでもない。

スペックだけ並べると、なんか負けてる気がする。

誰と戦ってるんだろう。

「30歳までに結婚」「35歳までにマイホーム」「転職は若いうちに」

誰が決めたんだろう、そういうの。テレビ?雑誌?親?

でもそういう「普通」が頭に入ってて、そこから外れてる自分が、ダメに見える。

年末に実家に帰ったら、母親に言われた。

「〇〇ちゃん、結婚したんだって。あんたはどうするの?」

どうするもなにも。予定がない。

「焦んなくていいけど、そろそろねえ」

焦んなくていい、って言いながら焦らせてくる。

帰りの新幹線で、窓の外見ながら考えた。

私は遅れてるのか?普通じゃないのか?

でも、「普通」って何だ。

結婚してる同級生、幸せそうに見える。でもDMでは「旦那と喧嘩ばっかり」って言ってた。

転職した同級生、キラキラしてる。でも「毎日終電」って別の投稿であげてた。

家を買った知り合い、「ローンが35年」って。

みんな、全部は見せてない。いいところだけ切り取って、並べてる。

わかってる。頭では。

でも、心がついていかない。

比べちゃう。比べて、落ち込む。比べて、焦る。

最近、一つ気づいたことがある。

しんどい時って、だいたいSNS見た後。

誰かの「普通」を見て、自分の「普通じゃなさ」を突きつけられた後。

だから試しに、アプリを消してみた。アンインストールじゃなくて、ホーム画面から消しただけ。見ようと思えば見れる。でも、ワンタップじゃ開けない。

それだけで、少し楽になった。

朝起きて、無意識にインスタ開いてたのが、なくなった。夜、寝る前にタイムライン眺めるのが、なくなった。

代わりに何してるかっていうと、特に何もしてない。ぼーっとしてる。

でも、ぼーっとしてる時間の方が、人の投稿見てる時間より、ずっと穏やかだった。

私は私のペースで生きてる。

29歳、一人暮らし、彼氏なし。それのどこが悪い。

悪くない。たぶん。

まだ完全には信じられてない。でも、前より少し、思えるようになった。

みんなの「普通」は、みんなの「普通」。

私の「普通」は、私が決めていい。

― 匿名の普通になれない人

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