窓ふきだけの日曜日

📅 2026-07-11⏱️ 3分✍️ 匿名の窓ふき係
掃除日曜日無心水の音それだけ
日曜日、窓をふいた。 やることリストには、もっと大事なことが並んでいた。役所に出す書類とか、返してない連絡とか、買わなきゃいけない子どもの上履きとか。 ぜんぶ後回しにして、窓をふいた。 理由は特にない。朝、カーテンを開けたら窓がくもっていて、ああ、と思っただけだ。 バケツに水をくんで、古いタオルを一枚おろした。新聞紙がいいと昔誰かに聞いたけど、家に新聞紙はもうない。 窓ふきには、いいところがある。 考えごとができない。上を向いたり、腕を伸ばしたり、水が垂れてきたり、忙しいのだ。頭のおしゃべりが、手の忙しさに負ける。 内側をふいて、外側をふいて、また内側の拭き残しに気づいて。 一枚に三十分もかかった。 ふき終わった窓は、あるのかないのか分からないくらい透明になった。部屋に入る光が、ワントーン明るくなった気がした。気のせいかもしれない。気のせいでもいい。 書類は書かなかった。連絡も返さなかった。上履きは、平日に買えばいい。 夕方、子どもが窓に手形をつけた。 三十分が、五秒で終わった。 なんか笑ってしまった。まあ、そういうもんだよなと思いながら、手形は残しておいた。 また今度、ふけばいい。 --- *© 2026 匿名の窓ふき係*