日曜日、窓をふいた。
やることリストには、もっと大事なことが並んでいた。役所に出す書類とか、返してない連絡とか、買わなきゃいけない子どもの上履きとか。
ぜんぶ後回しにして、窓をふいた。
理由は特にない。朝、カーテンを開けたら窓がくもっていて、ああ、と思っただけだ。
バケツに水をくんで、古いタオルを一枚おろした。新聞紙がいいと昔誰かに聞いたけど、家に新聞紙はもうない。
窓ふきには、いいところがある。
考えごとができない。上を向いたり、腕を伸ばしたり、水が垂れてきたり、忙しいのだ。頭のおしゃべりが、手の忙しさに負ける。
内側をふいて、外側をふいて、また内側の拭き残しに気づいて。
一枚に三十分もかかった。
ふき終わった窓は、あるのかないのか分からないくらい透明になった。部屋に入る光が、ワントーン明るくなった気がした。気のせいかもしれない。気のせいでもいい。
書類は書かなかった。連絡も返さなかった。上履きは、平日に買えばいい。
夕方、子どもが窓に手形をつけた。
三十分が、五秒で終わった。
なんか笑ってしまった。まあ、そういうもんだよなと思いながら、手形は残しておいた。
また今度、ふけばいい。
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