
…北と南で数えてみたら、ちがいが出たにゃ。でも、その後の話にはつづきがあるにゃ。
この季節、こんなことないにゃ?
夏のあいだは平気だったのに、
秋の夕方だけ、少しだけ気持ちが下がる。
この「季節と気分」の関係を、
数えてみた人たちがいるにゃ。
アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)のノーマン・ローゼンタール博士は、南アフリカからニューヨークに移ってきて、冬になると自分の元気が落ちることに気づいたと、のちに語っているにゃ。
1984年、博士たちは、毎年おなじ季節にくり返し気分が落ちこむ人たちのことを論文にまとめたにゃ。そこでつけた名前が「季節性感情障害」。冬に起きるものは、日本では「冬季うつ」とも呼ばれるにゃ。
冬になると落ちこみ、春から夏には戻る。そんな人たちを記録したにゃ。
その冬の落ちこみには、眠りすぎる・食べすぎる・炭水化物がほしくなる、という共通点があったにゃ。
そのうち11人では、明るい人工の光で一日を長くしてみる試みもしたにゃ。ただ、論文の題にあるとおり、これは「予備的な結果」。人数も少なくて、効き目を言い切れる段階ではなかったにゃ。
日の光が関係しているなら、冬の昼が短い北の土地ほど、冬季うつの人は多いはずにゃ。
1990年、ローゼン博士たち(ローゼンタール博士も加わっていたにゃ)は、それを確かめようとしたにゃ。
フロリダ州サラソタ(北緯27度ほど)
メリーランド州モンゴメリー郡
ニューヨーク州ニューヨーク
ニューハンプシャー州ナシュア(北緯42〜43度ほど)
季節によって気分や暮らしがどう変わるかをたずねる質問票を、電話帳から選んだ住民に送ったにゃ。男女の数はそろえてあったにゃ。
冬季うつにあたる人の割合。いちばん南のサラソタと、いちばん北のナシュアの差は?
1.4% と 9.7%。
南と北で、7倍ほどのちがい
冬季うつにあたる人も、そこまではいかないけれど冬に調子を崩す人も、北の地点ほど多かったにゃ。この北ほど多いという傾向は、とくに35歳以上の人たちで目立っていたにゃ。
夏に調子を崩すタイプの人もいたけれど、こちらは緯度との関係は見られなかったにゃ。北と南で差が出たのは、冬のほうだけだったにゃ。
ただ、これは質問票の答えから「あてはまりそうな人」を数えた数字にゃ。お医者さんが一人ずつ診断したわけではないにゃ。
この数え方だと多めに出るのでは、という指摘も、のちに出てくるにゃ。
まだ決着はついていないけれど、有力な説をふたつ並べてみるにゃ。
ローゼンタール博士たちは、最初から日の長さに目をつけていたにゃ。1984年の論文でも、落ちこみは気候や緯度の変化につれて動いているように見える、と書いているにゃ。
冬季うつの多くの人では、体内時計が、寝起きの時刻より遅れているのでは、という説があるにゃ。2006年、アルフレッド・ルーイ博士たちは68人を調べて、体内時計のずれ具合と気分の重さに関係が見られた、と報告しているにゃ。
ただ、ずれの大きさと気分のよくなり方がいつも結びつくとはかぎらない、という研究もあって、説のひとつにとどまっているにゃ。
冬の朝はなかなか明るくならないし、夕方はすぐ暗くなる。体の時計と、外の明るさと、自分の予定。この三つの歩幅がそろいにくい季節なのかもしれないにゃ。
ここからが、正直に並べておきたい話にゃ。
オランダのメルシュ博士たちが、各地の有病率の調査を集めて緯度と比べたにゃ。北米の調査ではつながりが見えたけれど、世界全体では、緯度の影響はあったとしても弱い、という結論だったにゃ。
トラファンステッド博士たちは、アメリカの電話による健康調査に答えた18〜99歳の34,294人を調べたにゃ。この2週間の気分の落ちこみを、答えた日付・住んでいる緯度・日照の量と比べたけれど、どれとも関係は見られなかったにゃ。
ただ著者たちも、まれなタイプが大きな調査にうもれて見えない可能性は残る、と書いているにゃ。
この総説は、質問の中で「季節」にふれている研究を、思いこみが入りやすいとして外して集めているにゃ。診断がつくほどのうつでは季節の差を支える結果もある一方、一般の人の気分が毎年決まった時期に下がる、という形は見えなかったにゃ。
ローゼン博士たちと同じ質問票を使った24の研究(32,866人)をまとめた分析では、平均すると冬季うつにあたる人は5.01%。そして緯度が高いほど多い関係が出ていたにゃ。
「季節」をはっきりたずねる質問票では差が出やすく、季節にふれずに今の気分だけを聞くと差が出にくい。
どちらが正しいかというより、何をどう測るかで、見え方が変わるテーマなのかもしれないにゃ。
ローゼン博士たちの4地点を、日本の地図に重ねてみたにゃ。
札幌の市役所は北緯43度3分あたり。いちばん北のナシュア(北緯42〜43度ほど)と、ほぼ同じ高さにゃ。
東京(港区にある日本の経緯度の基準点)は北緯35度39分あたり。ニューヨークやメリーランドよりも南で、4地点でいえばサラソタとメリーランドのあいだに入るにゃ。
那覇は北緯26度13分あたり。いちばん南のサラソタ(北緯27度ほど)より、さらに少し南にゃ。
6月20日は19時00分。それが10月18日には
12月17日には16時30分まで早くなるにゃ。夏至のころとくらべると、2時間半ほど早く暗くなるにゃ。
でも、緯度だけでは今の暮らしは語れないにゃ。
1990年の調査のころとくらべて、今は在宅勤務の日がある人も増えたにゃ。家から一歩も出ないまま、気づいたら窓の外が暗くなっている日もあるにゃ。
反対に、朝は満員電車、昼は窓の少ないオフィス、帰り道はもう夜。会社勤めの日でも、明るい外を歩くのは駅までの数分だけ、ということもあるにゃ。
緯度が同じでも、どこで一日を過ごすかで、浴びている光はかなりちがうはずにゃ。
ローゼン博士たちが調べたのは、1990年ごろのアメリカの町の人たちにゃ。日本で同じ割合になるかは、この研究からはわからないにゃ。
ちょっと、自分の秋を
思いうかべてみるにゃ。
「日が短くなったな」と気づくのは、どんなとき?
どれが正しいとかはないにゃ。
あなたの秋が、どこから始まるのか。
それがわかると、ちょっとおもしろいにゃ。

北の町ほど冬に沈む人が多い、という1990年の数字。
そして、3万4千人を調べても季節の差は見えなかった、という2016年の数字。
研究所のねこたちは、どちらかを「まちがい」とは思わないにゃ。
毎年はっきり冬に沈む人は、たしかにいる。
でも、その人たちは全体から見ると多くはなくて、
みんなをまとめて平均するとうもれてしまう。
そういう重なり方なのかもしれないにゃ。
だから、秋の夕方に少し気分が下がっても、
それだけで「冬季うつかも」と心配しなくていいにゃ。
反対に、「季節のせいなんて気のせい」と
自分の感覚を打ち消さなくてもいいにゃ。
もちろん、これはひとつの見方にゃ。
ただ、落ちこみが何週間もつづいて、眠りや食事や毎日の用事にまで響いているときは、季節のせいかどうかは置いておいて、ひとりで抱えずに、信頼できる人や、ニャンタル、専門家に話してみてにゃ。
南の町で1.4%、北の町で9.7%。
日の短さと気分には、
つながりがあるように見えたにゃ。
でも、もっと大きな調査では
その差が見えないこともあったにゃ。
光が減る季節に気分が下がる人もいるし、
あまり変わらない人もいる。
どちらも、ふつうのことにゃ。
夕方が早くなったなと気づいたら、
それは季節がちゃんと進んでいるしるしにゃ。
にゃんたるは、日が短くなると
昼寝の場所を、窓ぎわに移すにゃ。🍂
📋 研究所のほかのレポートにゃ
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。