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仕事とこころ

「前の私なら、すぐできたのに」疲れきった頭は、戻ってくる?

…働きすぎて疲れきった人の脳を、1〜2年あけて二度撮った研究があるにゃ。

この研究を一枚で
問い
仕事の長いストレスで疲れきった人の脳には、画像で見てちがいがあるのか。時間がたつと、それは戻るのか
どこで
スウェーデンで、仕事のストレスで疲れきった状態と診断された48人と、比べる側の80人(Savic ほか 2018)
どうやって
MRIで脳の形を撮り、考える力のテストもした。1〜2年後に、患者25人と比べる側の19人がもう一度撮影を受けた
わかったこと
最初は、前頭前野が薄め・尾状核が小さめ・扁桃体が大きめだった。1〜2年後、前頭前野と尾状核は比べる側との差がなくなっていた。扁桃体は大きめのままだった
その後の研究
17の研究をまとめると、記憶や注意・処理の速さに小さめから中くらいの差があった。知識や言葉の量には差がなかった(2022年の分析)

最近、こんなことないにゃ?

メール一通の返事に、30分かかってる
会議で名前を呼ばれて、何を聞かれたのかわからなかった
今日の夕飯が、どうしても決められない
レジで小銭を出すのにもたついて、泣きそうになった
(前の私なら、こんなの一瞬だったのに)

「疲れてるだけ」
「私、だめになったのかな」

疲れきった時期の頭は、
自分でも知らない人のように
感じることがあるにゃ。

そして、いちばん知りたいのは
たぶんこっちにゃ。
この頭は、戻ってくるのかにゃ。

🧪 研究 疲れきった人の脳の画像

疲れきった人の脳を、
1〜2年あけて
二度撮った

スウェーデンには、仕事などの長いストレスで疲れきった状態に、病院でつける診断名があるにゃ。

研究者のサヴィッチさんたち(2018年)は、そう診断された48人と、そうでない80人の脳を、MRIで撮ったにゃ。考える力のテストもしたにゃ。

それから1〜2年たって、患者さん25人と、比べる側の19人が、もう一度撮影に来たにゃ。そのあいだ、患者さんたちは認知療法を受けていたにゃ。

1回目と2回目で、脳の形がどう変わったかを見比べたにゃ。

予想してみるにゃ

最初の撮影で見えていたちがいは、1〜2年後、どうなっていたと思う?

📊 結果の読み方

戻っていたところと、
まだのところ

前頭前野(おでこの奥)

薄め → 戻っていた

考えをまとめる・段取りをつける・気持ちを整えることに関わる場所にゃ。1〜2年後には、比べる側との差がなくなっていたにゃ。

尾状核(脳の奥)

小さめ → 戻っていた

動きや習慣の切り替えに関わる場所にゃ。こちらも1〜2年後には、差がなくなっていたにゃ。

扁桃体(警報の役)

大きめ → まだ大きめ

危ないものにすばやく気づく場所にゃ。1〜2年後も、大きめのままだったにゃ。この研究は、その先までは追っていないにゃ。

比べる側の人たちは、1〜2年で変わっていなかったにゃ。そして患者さんたちの変化は、本人が感じているストレスの強さと、いっしょに動いていたにゃ。最初の撮影では、前頭前野が薄めの人ほど、いやな気持ちを自分で静めるのが苦手だったにゃ。

これは、グループの平均のちがいにゃ。ひとりの画像を見て「この人は疲れきっている」と言えるものでも、「脳がこわれた」という話でもないにゃ。

言えそうなのは、「前の私ならすぐできた」という感じが、気のせいや怠けとは別に、体の側で起きていることと重なっているのかもしれない、ということ。そしてその一部は、時間とともに戻っていた、ということにゃ。

頭がぼんやりする、物忘れが増える、というのは、疲れきり以外の体の不調でも起きることがあるにゃ。続くときは医師に見てもらうと、ほかの原因も確かめてもらえるにゃ。

🤔 なぜ、そうなるのか

長いストレスは、
脳の形にまで届く?

ストレスの研究者たちには、有力な説明があるにゃ。

強いストレスを受けると、前頭前野の働きは、短いあいだでもすぐに落ちる。大事な発表の前に、言うことが頭から飛んでしまう、あれにゃ。危ない場面では、じっくり考えるより先に体が動けるよう、脳が切り替わるのだ、という考え方にゃ。

その切り替わりが、何か月も戻らないとどうなるか。動物の研究では、長いストレスのあとで、前頭前野の神経の枝の形まで変わっていたにゃ。人の画像に見えたちがいも、その延長にあるのかもしれない、という見方にゃ。

同じグループの別の研究でも、疲れきった人たちは、いやな写真を見たときの気持ちを静めるのが苦手で、扁桃体と、気持ちをなだめる側の前頭のあたりとが、いっしょに動く度合いが弱めだったにゃ。レジでもたついただけで泣きそうになる日は、それと重なっているのかもしれないにゃ。

ただ、どちらが先なのかは、この研究だけでは決められないにゃ。ストレスが脳の形を変えたのか、もともとのちがいが疲れやすさにつながっていたのか。変化がストレスの強さといっしょに動いていたことから、研究者たちはストレスが先だった可能性を考えているにゃ。

🔍 その後の研究

知っていることは、
減っていなかった

頭の働きのほうは、どうなのかにゃ。

2022年に、疲れきった状態と診断された人たちの考える力を調べた17の研究をまとめた分析が出たにゃ。患者さん730人と、そうでない649人を比べたものにゃ。

予想してみるにゃ

疲れきった人たちと、そうでない人たちで、テストの点に差がなかったのはどれだと思う?

差は、小さめから中くらい。テストの平均で見える大きさにゃ。でも毎日の仕事では、その少しが「メール一通に30分」の重さになって感じられるのかもしれないにゃ。

柱の研究にも、限りはあるにゃ。2回目を撮れた患者さんは25人で、多くはないにゃ。それに、患者さんたちは全員が認知療法を受けていて、受けなかった組はないにゃ。だから、戻ったのが治療のおかげなのか、休んだ時間なのか、ストレスが軽くなったからなのかは、この研究では分けられないにゃ。

🏢 今に置き換えて考える

「もう大丈夫なんでしょ」
と言われる時期

研究の患者さんたちは、スウェーデンで、名前のついた状態として治療を受け、1〜2年あとにもう一度撮影に来たにゃ。

いまの日本で疲れきった人のまわりは、少しようすがちがうかもしれないにゃ。

名前

日本では「バーンアウト」は診断名ではない

スウェーデンでは、この疲れきりが2005年から診断名として使われているにゃ。世界保健機関(WHO)の分類では、バーンアウトは病気ではなく「仕事にかかわる現象」とされていて、日本でもそのままの診断名にはならないにゃ。

名前がないと、「頭が回らない」は性格ややる気の話にされやすいのかもしれないにゃ。同じような疲れきりが、別の病名で書かれていたり、名前のないまま働き続けていたりすることも、ありそうにゃ。

戻る時期

見た目は元気。でも、まだ途中

休んで職場に戻ると、顔色はいいし、話もできる。だから「もう大丈夫なんでしょ」と、前と同じ量の仕事が回ってきやすいにゃ。

研究で前頭前野が戻っていたのが確かめられたのは、1〜2年後の撮影にゃ。途中は撮っていないから、いつ戻ったのかはわからないし、もっと早い人もいたはずにゃ。それでも、休みが明けた日に全部が戻っている、という話ではなさそうにゃ。会社によっては、短い時間から少しずつ戻る仕組みがあるにゃ。

でこぼこ

段取りは戻ってきたのに、まだびくっとする

仕事の段取りは前のように組めるのに、電話が鳴るとどきっとする。急な予定の変更に、胸がざわつく。研究では、警報の役の扁桃体は、1〜2年後もまだ大きめだったにゃ。大きさと気持ちがそのまま結びつくとはかぎらないけれど、戻りかたにでこぼこがあるのは、ありえることなのかもしれないにゃ。

そういう時期のことも、医師やカウンセラーに話しておくと、戻る道のりをいっしょに見てもらえるにゃ。

あなたならどれ?

頭が回らない日が続くとき、あなたがしていることに近いのは?

🐱 猫の国の研究所より

ここからは、
研究所の考察にゃ。

「前の私なら、すぐできたのに」。
そう思うとき、
くらべている相手は、
元気だったころの自分にゃ。

17の研究をならべた表には、
「差なし」の行があったにゃ。

覚えてきた知識や、言葉の量。
疲れきった人たちで落ちていたのは、
速さや、覚えたまま使う枠のほうで、
これまでに積んできたものは
同じだけあったにゃ。

前の自分がいなくなったというより、
そこへ行く道が混んでいる、
に近いのかもしれないにゃ。

もちろん、画像と平均からは、
ひとりの頭の中までは見えないにゃ。
道の混み方も、すき方も、
人によってちがうはずにゃ。

ねこの話をひとつ、するにゃ。

冬毛は、
ひと晩では
抜けないにゃ。

春になると、ねこの冬毛は
何週間もかけて、少しずつ抜けかわるにゃ。
ブラシを通すたびに、
まだ残ってる、と思う。
それでも夏のはじめには、
ちゃんと軽くなっているにゃ。

研究で戻っていたところも、
ストレスが軽くなるのといっしょに
動いていたにゃ。

今日「まだ残ってる」と思ったら、
それは抜けかわりの
途中なのかもしれないにゃ。

📚 参考文献

この記事で紹介した研究

📋 研究所のほかのレポートにゃ

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RESEARCH No.57

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💕
RESEARCH No.55

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Savic, I., Perski, A., & Osika, W. (2018). MRI shows that exhaustion syndrome due to chronic occupational stress is associated with partially reversible cerebral changes. Cerebral Cortex, 28(3), 894-906. リンク
Gavelin, H. M., Domellöf, M. E., Åström, E., Nelson, A., Launder, N. H., Neely, A. S., & Lampit, A. (2022). Cognitive function in clinical burnout: A systematic review and meta-analysis. Work & Stress, 36(1), 86-104. リンク
Golkar, A., Johansson, E., Kasahara, M., Osika, W., Perski, A., & Savic, I. (2014). The influence of work-related chronic stress on the regulation of emotion and on functional connectivity in the brain. PLoS ONE, 9(9), e104550. リンク
Arnsten, A. F. T. (2009). Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function. Nature Reviews Neuroscience, 10(6), 410-422. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com