
…働きすぎて疲れきった人の脳を、1〜2年あけて二度撮った研究があるにゃ。
最近、こんなことないにゃ?
「疲れてるだけ」
「私、だめになったのかな」
疲れきった時期の頭は、
自分でも知らない人のように
感じることがあるにゃ。
そして、いちばん知りたいのは
たぶんこっちにゃ。
この頭は、戻ってくるのかにゃ。
スウェーデンには、仕事などの長いストレスで疲れきった状態に、病院でつける診断名があるにゃ。
研究者のサヴィッチさんたち(2018年)は、そう診断された48人と、そうでない80人の脳を、MRIで撮ったにゃ。考える力のテストもしたにゃ。
それから1〜2年たって、患者さん25人と、比べる側の19人が、もう一度撮影に来たにゃ。そのあいだ、患者さんたちは認知療法を受けていたにゃ。
1回目と2回目で、脳の形がどう変わったかを見比べたにゃ。
最初の撮影で見えていたちがいは、1〜2年後、どうなっていたと思う?
考えをまとめる・段取りをつける・気持ちを整えることに関わる場所にゃ。1〜2年後には、比べる側との差がなくなっていたにゃ。
動きや習慣の切り替えに関わる場所にゃ。こちらも1〜2年後には、差がなくなっていたにゃ。
危ないものにすばやく気づく場所にゃ。1〜2年後も、大きめのままだったにゃ。この研究は、その先までは追っていないにゃ。
比べる側の人たちは、1〜2年で変わっていなかったにゃ。そして患者さんたちの変化は、本人が感じているストレスの強さと、いっしょに動いていたにゃ。最初の撮影では、前頭前野が薄めの人ほど、いやな気持ちを自分で静めるのが苦手だったにゃ。
これは、グループの平均のちがいにゃ。ひとりの画像を見て「この人は疲れきっている」と言えるものでも、「脳がこわれた」という話でもないにゃ。
言えそうなのは、「前の私ならすぐできた」という感じが、気のせいや怠けとは別に、体の側で起きていることと重なっているのかもしれない、ということ。そしてその一部は、時間とともに戻っていた、ということにゃ。
頭がぼんやりする、物忘れが増える、というのは、疲れきり以外の体の不調でも起きることがあるにゃ。続くときは医師に見てもらうと、ほかの原因も確かめてもらえるにゃ。
ストレスの研究者たちには、有力な説明があるにゃ。
強いストレスを受けると、前頭前野の働きは、短いあいだでもすぐに落ちる。大事な発表の前に、言うことが頭から飛んでしまう、あれにゃ。危ない場面では、じっくり考えるより先に体が動けるよう、脳が切り替わるのだ、という考え方にゃ。
その切り替わりが、何か月も戻らないとどうなるか。動物の研究では、長いストレスのあとで、前頭前野の神経の枝の形まで変わっていたにゃ。人の画像に見えたちがいも、その延長にあるのかもしれない、という見方にゃ。
同じグループの別の研究でも、疲れきった人たちは、いやな写真を見たときの気持ちを静めるのが苦手で、扁桃体と、気持ちをなだめる側の前頭のあたりとが、いっしょに動く度合いが弱めだったにゃ。レジでもたついただけで泣きそうになる日は、それと重なっているのかもしれないにゃ。
ただ、どちらが先なのかは、この研究だけでは決められないにゃ。ストレスが脳の形を変えたのか、もともとのちがいが疲れやすさにつながっていたのか。変化がストレスの強さといっしょに動いていたことから、研究者たちはストレスが先だった可能性を考えているにゃ。
頭の働きのほうは、どうなのかにゃ。
2022年に、疲れきった状態と診断された人たちの考える力を調べた17の研究をまとめた分析が出たにゃ。患者さん730人と、そうでない649人を比べたものにゃ。
疲れきった人たちと、そうでない人たちで、テストの点に差がなかったのはどれだと思う?
差は、小さめから中くらい。テストの平均で見える大きさにゃ。でも毎日の仕事では、その少しが「メール一通に30分」の重さになって感じられるのかもしれないにゃ。
柱の研究にも、限りはあるにゃ。2回目を撮れた患者さんは25人で、多くはないにゃ。それに、患者さんたちは全員が認知療法を受けていて、受けなかった組はないにゃ。だから、戻ったのが治療のおかげなのか、休んだ時間なのか、ストレスが軽くなったからなのかは、この研究では分けられないにゃ。
研究の患者さんたちは、スウェーデンで、名前のついた状態として治療を受け、1〜2年あとにもう一度撮影に来たにゃ。
いまの日本で疲れきった人のまわりは、少しようすがちがうかもしれないにゃ。
スウェーデンでは、この疲れきりが2005年から診断名として使われているにゃ。世界保健機関(WHO)の分類では、バーンアウトは病気ではなく「仕事にかかわる現象」とされていて、日本でもそのままの診断名にはならないにゃ。
名前がないと、「頭が回らない」は性格ややる気の話にされやすいのかもしれないにゃ。同じような疲れきりが、別の病名で書かれていたり、名前のないまま働き続けていたりすることも、ありそうにゃ。
休んで職場に戻ると、顔色はいいし、話もできる。だから「もう大丈夫なんでしょ」と、前と同じ量の仕事が回ってきやすいにゃ。
研究で前頭前野が戻っていたのが確かめられたのは、1〜2年後の撮影にゃ。途中は撮っていないから、いつ戻ったのかはわからないし、もっと早い人もいたはずにゃ。それでも、休みが明けた日に全部が戻っている、という話ではなさそうにゃ。会社によっては、短い時間から少しずつ戻る仕組みがあるにゃ。
仕事の段取りは前のように組めるのに、電話が鳴るとどきっとする。急な予定の変更に、胸がざわつく。研究では、警報の役の扁桃体は、1〜2年後もまだ大きめだったにゃ。大きさと気持ちがそのまま結びつくとはかぎらないけれど、戻りかたにでこぼこがあるのは、ありえることなのかもしれないにゃ。
そういう時期のことも、医師やカウンセラーに話しておくと、戻る道のりをいっしょに見てもらえるにゃ。
頭が回らない日が続くとき、あなたがしていることに近いのは?

「前の私なら、すぐできたのに」。
そう思うとき、
くらべている相手は、
元気だったころの自分にゃ。
17の研究をならべた表には、
「差なし」の行があったにゃ。
覚えてきた知識や、言葉の量。
疲れきった人たちで落ちていたのは、
速さや、覚えたまま使う枠のほうで、
これまでに積んできたものは
同じだけあったにゃ。
前の自分がいなくなったというより、
そこへ行く道が混んでいる、
に近いのかもしれないにゃ。
もちろん、画像と平均からは、
ひとりの頭の中までは見えないにゃ。
道の混み方も、すき方も、
人によってちがうはずにゃ。
ねこの話をひとつ、するにゃ。
冬毛は、
ひと晩では
抜けないにゃ。
春になると、ねこの冬毛は
何週間もかけて、少しずつ抜けかわるにゃ。
ブラシを通すたびに、
まだ残ってる、と思う。
それでも夏のはじめには、
ちゃんと軽くなっているにゃ。
研究で戻っていたところも、
ストレスが軽くなるのといっしょに
動いていたにゃ。
今日「まだ残ってる」と思ったら、
それは抜けかわりの
途中なのかもしれないにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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