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仕事とこころ

燃え尽きたのは、私が弱かったから?

…同じ職場で、燃え尽きる人とそうでない人。その分かれ道を、1年追いかけた人たちがいたにゃ。

この研究を一枚で
問い
燃え尽きのしるしが出はじめた人のうち、1年後に燃え尽きる人と、持ち直す人を分けるものは何か
どこで
ある組織で働く466人(Maslach & Leiter 2008)
どうやって
燃え尽きのしるしと、職場との合い方(仕事の量・自分で決められるか・報われ方・人間関係・公平さ・大事にしたいこと)を、1年あけて2回答えてもらった
わかったこと
しるしが一部だけ出ていた人は1年で変わりやすかった。そのうち公平さにずれを感じていた人は燃え尽きのほうへ進み、感じていなかった人は仕事への手応えのほうへ戻っていた
その後の研究
医師の燃え尽きを減らす取り組みをまとめた分析(2017年)では、ひとりひとりに向けた取り組みより、職場のしくみに向けた取り組みのほうが効き目が大きかった

こんな気持ち、ないにゃ?

前は、この仕事けっこう好きだったのにな
休みの日も、ずっと仕事のことを考えてる
なんで私ばっかり、って思ってしまう
同じ職場で、平気そうな人もいるのに
(私が弱いだけなのかな)

へとへとなのに、休んでも戻らない。
仕事のことを考えると、
気持ちがすっと冷めていく。

そうなったとき、多くの人は
まず自分を疑うにゃ。
「ほかの人は、やれているのに」と。

燃え尽きるかどうかは、
ほんとうにその人の強さで
決まっているのかにゃ。

🧪 研究 1年後の分かれ道

466人に、
1年あけて、
同じことを聞いた

燃え尽きの研究を長く続けてきた心理学者のマスラックさんとライターさん(2008年)は、ある組織で働く466人に、1年あけて2回、同じ質問紙に答えてもらったにゃ。

聞いたのは、ふたつのことにゃ。

ひとつは、燃え尽きのしるし。へとへとになっているか。仕事に冷めた気持ちになっているか。「ちゃんとやれている」と感じられるか。

もうひとつは、職場との合い方。ふたりがそれまでの研究から、6つにまとめたものにゃ。

📋 職場との合い方、6つ

仕事の量 — こなせる量か
自分で決められるか — やり方や段取りに、口を出せるか
報われ方 — がんばりが、認められているか
職場の人間関係 — 支え合えているか
公平さ — 決め方に、筋が通っているか
大事にしたいこと — 自分の大事なことと、職場の求めることが合っているか

ふたりが目をとめたのは、1回目に、燃え尽きのしるしが一部だけ出ていた人たちにゃ。すっかり燃え尽きてもいないし、元気いっぱいでもない。ゆれている人たちにゃ。

この人たちは、ほかの人より、1年のあいだに大きく変わりやすかったにゃ。どちらへ変わるのか。そこに、分かれ道があったにゃ。

予想してみるにゃ

ゆれていた人たちの、1年後の行き先。分かれ道になっていたのは、6つのうちどれだったと思う?

📊 結果の読み方

分かれ道は、
「この職場は公平か」
だった

📊 わかったこと

しるしが一部だけ出ていた人のうち、
公平さにずれを感じていた人は、
1年後に燃え尽きのほうへ。

ずれを感じていなかった人は、
仕事への手応えのほうへ戻っていた

ここでいう公平さは、お給料が同じかどうか、だけの話じゃないにゃ。だれに何を任せるか。どう評価するか。そういうことが、筋の通ったやり方で決まっているか。決めるときに、自分がちゃんと扱われているか。

研究者たちは、人はこの「決め方」と「扱われ方」を、自分がその場所でどう見られているかのものさしにしている、と考えているにゃ。

もうひとつ、見のがせないことがあるにゃ。しるしが出ていた人の中にも、1年後に、手応えのほうへ戻っていった人たちがいたこと。

燃え尽きのしるしは、出たら最後の下り坂ではなかったにゃ。そこはまだ、分かれ道の手前だったにゃ。

🤔 なぜ、公平さなのか

燃え尽きは、
人の中ではなく
人と職場のあいだに

なぜ公平さが分かれ目になったのか。この調査だけでは、決めきれないにゃ。手がかりになる見方が、いくつかあるにゃ。

研究者たちの見立て

不公平は、冷めた気持ちと怒りを呼ぶ

公平に扱われていないと感じると、冷めた気持ちや怒り、とげとげしさが生まれやすい、とふたりは考えているにゃ。仕事への冷めは、燃え尽きのしるしのひとつ。不公平が、ゆれていた人の背中を、燃え尽きのほうへ押したのかもしれないにゃ。

一般向けの本で

弱ったカナリアと、坑道の空気

同じふたりは、一般向けの本の中で、燃え尽きを個人の弱さではなく、人と職場の6つの「合わなさ」として描いてきたにゃ。新しいほうの本では、燃え尽きた人を炭鉱のカナリアにたとえているにゃ。坑道の空気が悪いと、カナリアが先に弱る。それはカナリアが弱いからではなく、空気のせいにゃ。

これは調査の結果そのものではなく、長く研究してきた人たちが本で示した考え方にゃ。

それに、本人の性格や体の調子が関係ないわけでもないにゃ。研究者たち自身も、人によるちがいは大事だと書いているにゃ。そのうえで、問いを「人のせいか、職場のせいか」から、「この人とこの職場の、どこが合っていないのか」に変えよう、というのがふたりの考えにゃ。

🔍 その後の研究

本人を変える?
職場を変える?

マスラックさんたちの調査には、続きがあるにゃ。調べた職場は、公平さにかかわるしくみをいくつか見直した。1年後には、働く人たちの受けとめがよくなっていた、とのちに書いているにゃ。

では、燃え尽きを減らすには、どこに手を入れればいいのかにゃ。

2017年に、医師の燃え尽きを減らす取り組みを確かめた19の研究、1,550人分をまとめた分析があるにゃ。取り組みを、医師ひとりひとりに向けたものと、職場のしくみや働き方に向けたものに分けて比べたにゃ。

取り組みのあと、へとへと感がどれだけ減ったか(19の研究をまとめて)
医師ひとりひとりに向けた取り組み0.18
職場のしくみに向けた取り組み0.45
目安:「小さい差」0.2
目安:「中くらいの差」0.5

差の大きさのものさし(効果量)で、0.2 が「小さい差」、0.5 が「中くらいの差」の目安にゃ。どちらにも効き目はあったけれど、職場に向けた取り組みのほうが大きかったにゃ。

ひとりでできる工夫に、意味がないわけじゃないにゃ。ただ、職場ぐるみの取り組みは、確かめること自体がむずかしく、調べた研究の数もまだ多くないにゃ。

2019年には、WHO(世界保健機関)も、燃え尽きを病気としてではなく、「うまく扱われてこなかった、職場の慢性的なストレス」から来るものとして、分類に書き入れたにゃ。仕事の場面にかぎって使うことばだ、とも添えているにゃ。

🏢 今に置き換えて考える

いまの職場の、
「決め方」のずれ

研究の466人は、年に一度の質問紙で、自分の職場との合い方を答えていたにゃ。

いまの日本の職場にも、重なる場面がいくつもあるにゃ。

年に一度の

ストレスチェックの、その先

日本では2015年から、50人以上の職場で、年に一度のストレスチェックが義務になったにゃ。2028年からは、もっと小さな職場にも広がる予定にゃ。

答えを部署ごとにまとめて、職場の見直しに使うしくみもあるけれど、こちらは努力目標で、どこまで使われているかは職場しだいにゃ。研究のふたりが組織といっしょにやっていたのは、まさにこの「まとめて見る」ほうだったにゃ。

だれがやるか

仕事が「気づいた人」に寄っていく

急ぎの仕事や、だれの担当でもない仕事。割り振りが話し合いではなく、「気づいた人」「手が早い人」で決まっていくと、同じ人に重なっていくにゃ。

量の話に見えて、研究のことばでいえば決め方の話でもあるにゃ。「なんで私ばっかり」は、そこから来ていることもありそうにゃ。

休んだ人の分

だれかの休みが、黙って配られる

急な休みや、長いお休み。人が足されないまま、まわりで分けて回す職場は多いにゃ。休む人が悪いわけでも、引き受ける人が弱いわけでもない。引き受け方が決まっていないことが、不公平の感じを生むのかもしれないにゃ。

2024年からは、育休の人の仕事を引き受けた同僚に手当を出す中小企業へ、国の助成も始まったにゃ。引き受けることを、見える形にしようとする動きにゃ。

あなたならどれ?

いまの職場で、いちばん「合っていない」と感じるのはどれ?

🐱 猫の国の研究所より

会場が、
しんとするとき

職場の答えをまとめて、
全員の前に出すと、
会場がしんとすることがある。
マスラックさんは、そう書いているにゃ。

自分だけだと思っていた気持ちを、
同僚の多くも抱えていたと、
そこではじめて知るからにゃ。

「同じ職場で、平気そうな人もいるのに」。
その人も、平気な顔をしていただけ、
かもしれないにゃ。

そして、しるしが出ていても、
1年後に手応えのほうへ戻った人がいた。
分かれ道にあったのは、
その人の強さより、
職場の決め方のほうだったにゃ。

平気な顔の下までは、
466人の答えにも書いていないにゃ。
そこは、会場の静けさから
思い浮かべた話にゃ。

分かれ道の手前にいるなら、
見てみたいのは、6つのどこがずれているか。
それから、あなたがどっちへ行きたいかにゃ。

決め方が変わるなら、ここで続けたいのか。
変わらなくても、ここにいたいのか。
それとも、別の坑道の空気を
吸ってみたいのか。

🐤

弱ったカナリアに、
「もっと強くなれ」とは
だれも言わないにゃ。

見なおされるのは、
カナリアじゃなくて、坑道の空気のほう。

「なんで私ばっかり」は、
あなたの弱音というより、
職場の空気についての
いちばん早い知らせ
なのかもしれないにゃ。

📚 参考文献

この記事で紹介した研究

📋 研究所のほかのレポートにゃ

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RESEARCH No.57

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…早めに落ち着いたのは「眠い」の感じ方。頭の働きは、14日目まで下がり続けていたにゃ。

🧠
RESEARCH No.56

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RESEARCH No.59

さみしい時期ほど、人のそっけなさが刺さるのはなぜ?

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Maslach, C., & Leiter, M. P. (2008). Early predictors of job burnout and engagement. Journal of Applied Psychology, 93(3), 498-512. リンク
Maslach, C. (2017). Finding solutions to the problem of burnout. Consulting Psychology Journal: Practice and Research, 69(2), 143-152. リンク
Maslach, C., & Leiter, M. P. (1997). The Truth About Burnout: How Organizations Cause Personal Stress and What to Do About It. Jossey-Bass.
Maslach, C., & Leiter, M. P. (2022). The Burnout Challenge: Managing People's Relationships with Their Jobs. Harvard University Press.
Panagioti, M., Panagopoulou, E., Bower, P., Lewith, G., Kontopantelis, E., Chew-Graham, C., Dawson, S., van Marwijk, H., Geraghty, K., & Esmail, A. (2017). Controlled interventions to reduce burnout in physicians: A systematic review and meta-analysis. JAMA Internal Medicine, 177(2), 195-205. リンク
World Health Organization. (2019). Burn-out an "occupational phenomenon": International Classification of Diseases. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com