
…同じ「中立」でも、そばにいるときと、離れていくときがあるにゃ。
こんな会話、ないにゃ?
彼が一番動いてほしいときに、
ぴたっと止まる。
「中立」と言われても、
ひとりで立たされた気がする。
この形を、家族療法は
三角形で考えてきたにゃ。
アメリカの精神科医ボーエンさんは、1954年から1959年まで、アメリカの国の研究所で、家族をまるごと観察する研究をしたにゃ。そこから組み立てたのが「家族システム理論」にゃ。
数をかぞえた実験ではなくて、家族の動きを長く見つづけてできた考え方にゃ。
ふたりの関係は、少しの緊張でぐらつきやすい。だから緊張が高まると、三人目を巻き込む、とボーエンさんは考えたにゃ。
妻と義母の間の緊張が、夫と妻の間へ、夫と義母の間へと移っていく。ひとつの線だけで背負わなくてすむぶん、関係は落ちつくにゃ。
三角形には、近いふたり(内側)と、ひとり離れた人(外側)ができるにゃ。
おだやかなとき、外側はさみしい場所。だから外側の人は、内側のどちらかに近づこうとするにゃ。
では、ふたりの間ではげしいもめごとが起きたとき。三角形の中で、いちばん居心地がよくなるのはどこだと思う?
三人目が入ると、関係は落ちつく。
でも、何も解決はしない。
緊張が高いと、人は三角形の外側に出たくなる
あなたとお義母さんの間が、ぴりぴりしている夜。夫にとっていちばん楽なのは、ふたりのやりとりを少し離れて見ている場所にゃ。
「俺はどっちの味方もしない」は、中立を選んだ言葉かもしれない。でも、緊張から外へ出たいという動きのこともあるにゃ。
彼が冷たいから、とは限らないにゃ。ボーエン理論では、三角形はだれかの悪意でできるものじゃなくて、家族ならどこにでもある自然な動きだと考えられているにゃ。
「どっちの味方もしない」
同じ言葉でも、
そばにいる中立と、
離れていく中立があるにゃ。
ちがいは、言葉より
そのあとのふるまいに出るにゃ。
外側に出れば、自分の緊張は下がるにゃ。でも、ふたりの間の緊張はそのまま残る。
ボーエンに学んだ家族療法家は、離れることでだれでも自分の不安は下げられるけれど、それではたいてい三角形が残る、と書いているにゃ。
じつは、ボーエン理論がすすめるのも「どちらの味方もしない」ことにゃ。ただし、大事な続きがあるにゃ。
三人目がふたりのどちらともつながったまま、ふたりの緊張に巻き込まれずにいられれば、問題はふたりの間で解けていく、とボーエンさんたちは考えたにゃ。これを「脱三角化(三角形から降りる)」と呼ぶにゃ。
自分の緊張は下がる。でも、三角形はそのまま残りやすいにゃ。
母とも妻とも、それぞれ自分の言葉で話す。ふたりの関係を代わりに直そうとせず、ふたりが直接やりとりできるように返していくにゃ。
ボーエン理論では、中立は「どっちつかず」や「あいまい」とはちがう、とも考えられているにゃ。自分の考えは、はっきり言っていい。ただ、相手を変えようと力まないこと、にゃ。
それから、緊張がどこにたまるか。さっきの家族療法家は、三角形の重さがかかるのはいちばん弱い人とは限らないと書いているにゃ。ほかのふたりの関係を何とかしようと引き受けている人に、重さが集まりやすい、と。
間で伝言をつづける夫かもしれないし、なんとかしようとがんばってきたあなたかもしれないにゃ。
では、実際の夫婦に聞くと、どうだったのかにゃ。
台湾の心理学者ウーさんたち(2010年)は、結婚している女性125人に、義母とのもめごと、結婚の満足度、そして夫がどうふるまうかを聞いたにゃ。
・妻の側に立つ
・いっしょに解決を考える
・もめごとには、かかわらない
・母の側に立つ
全体では、義母とのもめごとが多い妻ほど、結婚の満足度は低かったにゃ。
じゃあ、夫のふるまいで、それは変わったのかにゃ。
夫がそのふるまいを「よくする」とき、もめごとがあっても満足度が下がりにくかったのは、どれだと思う?
ボーエン理論とは少しちがうところもあるにゃ。この研究では「妻の側に立つ」ことも助けになっていたにゃ。
でも、ふたつに共通しているのは、夫がその場から離れていないことにゃ。かかわらない夫のそばでは、もめごとの重さは軽くならなかったにゃ。
ただ、これは台湾の125人に一度だけ聞いた調査で、答えたのは妻だけにゃ。夫がこうしたからこうなった、とまでは言いきれないにゃ。
ボーエンさんが見ていたのは、1950年代のアメリカの家族だったにゃ。スマホもLINEも、まだない時代にゃ。
いまの私たちは、お義母さんと離れて暮らしていても、LINEでいつでもつながっているにゃ。義実家とのLINEグループがある家もあるにゃ。
お義母さんのメッセージに、夫だけ既読のまま何も返さない。向かい合っていれば「その場を外す」くらいの動きが、画面の中ではくっきり残るにゃ。あなたには、外側へ出ていく背中に見えるかもしれないにゃ。
母からのLINEを夫があなたに転送して、あなたの返事をまた母へ。スマホなら、伝言役はすぐにできてしまうにゃ。そのぶん、ふたりが直接やりとりしないまま、緊張が三つの線を行き来しやすいのかもしれないにゃ。
グループで代わりに答えるより、母とは母と、あなたとはあなたと、それぞれのトークで夫が自分の考えを話す。あなたがお義母さんに返すときは、「送る前に見てほしい」と隣にいてもらうのもひとつにゃ。
お義母さんとのことで、いまのあなたが夫にいちばん望むのは?

「あなたから言って」
と頼んで、
「俺はどっちの味方もしない」と返された夜。
味方じゃないんだ
と思って、ベッドの隅で
ぽつんとしたかもしれないにゃ。
もめごとがはげしいとき、
いちばん居心地がいいのは、
三角形の外側だったにゃ。
あの夜、彼はそこへ
出ていったのかもしれないにゃ。
冷たいからというより、
だれでも行きたくなる場所だから。
そのぶん、お義母さんとの線の重さは、
あなたのところに残った。
ベッドの隅のさみしさは、
気にしすぎじゃなくて、
その重さだったのかもしれないにゃ。
1950年代の家族を見つづけてできた考え方を、
ひと組の夫婦の夜に重ねてみた、
ねこたちの読みにゃ。
どの家にもぴったり合うとはかぎらないにゃ。
それでも、ここから拾えそうなのは、
彼を伝令役にしないこと。
お義母さんに何か言われたら、
「ありがとうございます。
私たちはこうしてます」と、
あなたの言葉で返してみる。
間で言葉を運ぶ人がいなくなると、
三角形は少しゆるむにゃ。
「どっちの味方もしない」には、
続きがあったにゃ。
ボーエンさんたちの中立では、
そのあとに
「でも、どっちからも離れない」が来る。
台湾の妻たちの答えでも、
重さを軽くしていたのは、
夫がその場に残るふるまいだったにゃ。
次に「どっちの味方もしない」と
返ってきたら、
そこで話を終わらせずに、
ひとつだけ聞いてみてにゃ。
「うん。それで、
あなたはどこにいてくれる?」
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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