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ふたりの科学

あの人はもう平気そう。つらいのは、私だけ?

…失恋のつらさを5,705人に聞いたら、男女の差は思ったより小さかったにゃ。

この研究を一枚で
問い
失恋のつらさは、男女でちがうのか
どこで
96か国から英語で答えた18歳以上の5,705人。失恋したことがあると答えたのは女性2,834人・男性1,490人で、平均30歳ごろ(Morris ほか 2015)
どうやって
2012〜2013年にネットで参加を呼びかけ、自分で選んだ1回の失恋について、心と体のつらさを10(耐えられない)までの数字で答えてもらい、どんな反応が出たかも選んでもらった
わかったこと
心のつらさの平均は女性6.84・男性6.58。差はあったがごく小さく、答えの散らばり方も男女でよく似ていた。ふられた側のほうがつらかったが、ふった側も軽くはなかった
その後の研究
オランダで結婚や離婚の歩みとさびしさを聞いた研究では、離婚してひとりでいる男性は同じ立場の女性より、心を預ける相手がいないさびしさが強かった(2007年)

こんな話、聞いたことないにゃ?

こないだ飲み会で会ったよ。元気そうだった
そっか。もう新しい人、いるのかな
さあ…でも普通に笑ってたよ
男の人って、切り替え早いもんね
(私はまだ、夜になると思い出すのに)

向こうが平気そうだと聞くと、
こちらのつらさまで、
なんだか重すぎる気がしてくる。

「男は切り替えが早い」。
そう言われることもあれば、
「男のほうが引きずる」と
言われることもあるにゃ。

ほんとうは、どうなのかにゃ。

🧪 研究 失恋のつらさを、数字で

96か国の5,705人に、
いちばんの失恋を
聞いた

アメリカのビンガムトン大学で人類学を研究していたモリスさんたち(2015年)は、2012年から2013年にかけて、ネットで調査への参加を呼びかけたにゃ。大学のメーリングリストや、Facebook のグループ、Reddit の掲示板。招待の文には「恋愛についての短い調査」とだけ書いて、失恋という言葉は入れなかったにゃ。

答えたのは、96か国の5,705人。失恋したことがある人は8割ほどいて、そのうちの8割は、一度ではなかったにゃ。

何度か失恋した人には、思い出す1回を自分で選んでもらったにゃ。いちばん最近のものでも、いちばんこたえたものでもいい。その失恋の心のつらさと体のつらさを、10を「耐えられない」とする数字で答えてもらったにゃ。

予想してみるにゃ

心のつらさの平均は、男女でどのくらいちがったと思う?

📊 結果の読み方

「差あり」と、
「ほとんど同じ」は、
両立する

計算すると、女性のほうが高いという差は「偶然ではない」と出たにゃ。でも、これだけ人数が多いと、ほんの小さな差でも「差あり」と出るにゃ。

差の大きさのものさしで見ると、心のつらさの差は0.1ほど。ふつう「小さい差」と呼ばれる目安の、さらに半分くらいにゃ。答えの散らばり方も、男女でよく似ていたと、研究者たち自身が書いているにゃ。

失恋のあと「悲しさ」があったと選んだ人(後半の調査)
男性0%
女性0%

前半の調査で「その他」の欄に「悲しかった」と書く人があまりに多かったので、後半の調査で選択肢に加えたものにゃ。

眠れなくなった、という人も、男女どちらにもとても多かったにゃ。

📎 ふった側は?

ふられた側のほうが、つらさは強かった。
でも研究者たちは、
ふった側にとっても
軽い出来事ではなかったと書いているにゃ。

別れを切り出したのがあの人のほうでも、あの人にとって、なんでもない夜だったとはかぎらないにゃ。

🤔 なぜ、平気そうに見えるのか

つらさは同じくらい。
なのに、
見え方がちがう

答えの数字は男女でほとんど同じなのに、「男は切り替えが早い」と見えることがある。そのわけは、この調査では調べていないにゃ。出されている見方を、ふたつ並べてみるにゃ。

研究者たち自身の推測

落ちこみを見せないほうが、得だった?

モリスさんたちは論文の終わりで、進化の考え方からこんな推測を書いているにゃ。大昔、失恋でひどく落ちこむ姿を見せる男性は、まわりに「次の相手を見つけるのに苦労しそう」と知らせることになった。だから、平気なふりをするほうが有利だったのでは、と。

確かめた結果ではなく、これから調べたい問いとして書かれたものにゃ。進化の話で男女の差を説明するやり方には、批判もあるにゃ。

つながりの研究者たちの見方

見せる場所が、ひとつしかなかった?

人のつながりとさびしさを調べてきた研究者たちのあいだには、男性はパートナーを、困ったときのただひとりの支えと見やすい、という見方があるにゃ。

もしそうなら、つらい顔を見せていた相手は、別れた相手その人だったことになる。別れたあと、つらさを見せる場所がなくなって、外からは平気そうにだけ見えるのかもしれないにゃ。

🔍 その後の研究

「男は立ち直らない」は、
どこから来たのか

この調査は、大学の発表を通して世界中で記事になったにゃ。見出しは「女性はより深く傷つくが、より完全に立ち直る」。発表の中では、男性は「完全には立ち直らず、ただ前に進むだけ」とも語られたにゃ。

でも、調査は同じ人を何年も追いかけたものではなく、立ち直りを測ってもいないにゃ。この部分は、発表の中での研究者の見立てにゃ。

それに、答えた人の多くは女性で、男性はその半分ほどだったにゃ。研究者たちは論文の中で、いちばん深く傷ついた男性ほど、昔の失恋を聞く調査には答える気になれなかったのかもしれない、という問いも残しているにゃ。

別れたあとのさびしさを、別の角度から調べた研究もあるにゃ。オランダで30〜76歳の2,000人あまりに、結婚や離婚の歩みと、さびしさを聞いた調査を、2007年にまとめたものにゃ。

わかったこと

離婚してひとりでいる男性は、心を預ける相手がいないさびしさが強かった

男性は、結婚していてもいなくても、頼れる人の輪が小さめだったにゃ。そして離婚してひとりでいる人どうしで比べると、男性のほうが「心を預ける相手がいない」さびしさが強かった。その差は、「パートナーがいてこそ」という思いの強さで、かなり説明できたにゃ。

🍻 今に置き換えて考える

「平気そう」は、
どこで見た顔?

調査の人たちは、ひとりで画面に向かって、名前を出さずに答えたにゃ。研究者たちも、人に言いにくい話を「自分の声で」話してもらうには、名前を出さないネットの調査が向いていると書いているにゃ。

いまの日本で、わたしたちが「あの人の平気そう」を見るのは、どんな場所かにゃ。

言い回し

「名前を付けて保存」と「上書き保存」

「男の恋は名前を付けて保存、女の恋は上書き保存」。日本でよく聞く言い回しにゃ。こちらは「男のほうが引きずる」と言っていて、「男は切り替えが早い」とは逆向きにゃ。

反対の決まり文句が、両方とも生き残っている。どちらも、そのとき見えた顔に合うほうが選ばれているのかもしれないにゃ。

人づての近況

「元気そうだったよ」は、飲み会の顔

共通の友だちから届く「元気そうだったよ」「普通に笑ってた」。それは、何人かで集まった席での顔にゃ。調査の数字は、だれも見ていないところで答えたつらさ。比べているのは、同じものではないのかもしれないにゃ。

次の朝

失恋で、会社は休めない

日本の職場で「失恋したので休みます」とは、なかなか言えないにゃ。眠れなかった朝も、いつもの電車に乗って、いつもの顔で「おはようございます」と言う。

あなたにも、そんな朝があったかもしれないにゃ。そのときのあなたも、まわりからは、きっと平気そうに見えていたにゃ。

あなたならどれ?

いまのあの人のこと、あなたの気持ちにいちばん近いのは?

🐱 猫の国の研究所より

ここからは、
研究所の考察にゃ。

あの人は平気そう。

そう聞くたびに、
「やっぱり私のほうが重かったんだ」と、
もう一度ふられたような気持ちに
なったかもしれないにゃ。

はじめの調査には、
「悲しさ」という選択肢が
なかったにゃ。

それでも「その他」の欄に、
自分で「悲しかった」と書きこむ人が
あまりに多くて、
後半の調査で、選択肢に加えられた。
選んだのは、男性の83%、女性の82%。

用意された欄に収まらないくらい、
悲しさは、男女どちらの答えにも
あふれていたにゃ。

あの人が、この5,705人の中に
いたかどうかは、わからないにゃ。
数字が教えてくれるのは、
平気そうな顔の下にも、
たいてい夜がある、
というところまで。

あの人の夜がどれくらいだったかは、
やっぱり、あの人にしか
わからないにゃ。

あなたの夜と、
あの人の昼の顔を、
並べていなかった?

ねこにも、失恋はあるにゃ。

ふられた次の朝も、
いつもどおり、ごはんを
ぜんぶ平らげる。
だれが見ても、平気なねこにゃ。

ただ、夜になると、
あの子が来ていた玄関のほうを、
しばらく見ているにゃ。

📚 参考文献

この記事で紹介した研究

📋 研究所のほかのレポートにゃ

🧊
RESEARCH No.69

気持ちを聞いたのに、起きたことの話しか返ってこないのは、男の人だから?

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🔍
RESEARCH No.71

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📋
RESEARCH No.72

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…手を動かす前とあとにも、家事はあったにゃ。

Morris, C. E., Reiber, C., & Roman, E. (2015). Quantitative sex differences in response to the dissolution of a romantic relationship. Evolutionary Behavioral Sciences, 9(4), 270-282. リンク
Morris, C. E. (2015). The Breakup Project: Using evolutionary theory to predict and interpret responses to romantic relationship dissolution (Doctoral dissertation). Binghamton University. リンク
Binghamton University (2015, August 6). Study: Women hurt more by breakups but recover more fully [Press release]. リンク
Dykstra, P. A., & Fokkema, T. (2007). Social and emotional loneliness among divorced and married men and women: Comparing the deficit and cognitive perspectives. Basic and Applied Social Psychology, 29(1), 1-12. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com