
…にぎやかさは早く見えて、やさしさは時間がかかったにゃ。
こんな経験、ないにゃ?
新しい職場の人、子どもの園で会う人、
アプリで知り合った人。
なんとなくとしか言えない
最初の感じが、どのくらい当たるのか。
心理学では、ほんの短い切れ端を
「薄切り」と呼んで、調べてきたにゃ。
「5分に満たない短い切れ端からでも、人は思ったより多くを受け取る」。1992年に、そういう研究をたくさんまとめた分析があったにゃ。音を消した授業の数秒の印象が先生の学期末の評価と重なっていた、外科医の声の10秒が過去に訴えられたことがあるかと結びついていた、という研究もあるにゃ。
じゃあ、その人の性格は、どこまで短い時間で見えるのかにゃ。
心理学者のカーニーさんたち(2007年)は、初対面の大学生どうしが5分おしゃべりする映像を使ったにゃ。映っている30人を、334人が5秒・20秒・45秒・1分・5分のどれかだけ見て、その人の性格や頭のよさを当てたにゃ。
答え合わせの相手は、本人と友だちと親がつけた性格の点数と、知能のテストにゃ。「ほかの人もそう思った」ではなく、ちゃんと当たったかを見ているにゃ。
5秒だけ見た第一印象で、いちばん当たりにくかったのはどれだと思う?
外向性・頭のよさ・まじめさは、
5秒でもそこそこ当たった。
気分の揺れやすさや人あたりのやさしさは、
同じくらい当たるのに、もっと長く見る必要があった
暮らしの言葉にすると、こうにゃ。
よくしゃべる人か、おとなしい人かは、ほんの少し見ただけでもだいたいわかる。でも、あなたが困ったときにやさしくしてくれる人かどうかは、5秒ではほとんどわからない。5分見ても、にぎやかさほどには当たらなかったにゃ。
全体としても、長く見るほど当たっていたにゃ。研究者たちは、長さと当たり具合の釣り合いがいちばんいいのは1分くらいだと見ているにゃ。
おもしろいのは頭のよさで、5秒でも5分でも、当たり具合はほとんど変わらなかったにゃ。
研究者たちのまとめは「第一印象は、いつも正しいわけでも、いつもまちがっているわけでもない。何を判断するかと、どれだけ見たかによる」だったにゃ。
ひとつの説明はこうにゃ。にぎやかさは、声の大きさ、よく笑う、よくしゃべる、といった目に見えるふるまいに出やすい。だから短い時間でも、手がかりがたくさんあるにゃ。
やさしさや気分の揺れは、ふだんの場面より、困ったときや疲れたときに出やすい。そして初対面の5分は、たいていの人が感じよくふるまう時間にゃ。
そこでは、みんな同じくらいやさしそうに見えてしまうのかもしれないにゃ。
2006年の別の研究では、知らない人の顔写真を0.1秒・0.5秒・1秒だけ見せて、「信頼できそう?」「感じがいい?」などを答えてもらったにゃ。
0.1秒で答えた印象は、別の人たちが時間をかけて答えた印象と、よく重なっていた。
見る時間をのばしても、重なり方は大きくは変わらなかった。
増えたのは、答えへの自信のほうだった
ここで比べた相手は、ほかの人の印象にゃ。その人が本当に信頼できる人かどうかは、この研究では調べていないにゃ。
だから、わかったのは「印象は一瞬でほぼできあがる」ということ。「一瞬で人を見抜ける」ではないにゃ。
研究者たちは、あとで会うたびに最初の印象を裏づけているだけなのかもしれない、とも考えたにゃ。これは見立てで、確かめた結果ではないにゃ。
研究の人たちが見たのは、同じ部屋で動いて話す人の映像だったにゃ。
いまの私たちの「はじめまして」は、アプリのプロフィール写真や、LINEの最初のひと言や、オンライン会議の小さな四角の中で起きることが多いにゃ。
プロフィール写真一枚で、「やさしそう」はすぐにできあがるにゃ。でも顔写真の研究で一瞬でそろったのは、ほかの人の印象までだったにゃ。それに写真には、5秒の映像でも当たった「よくしゃべる・よく笑う」といったふるまいが、ほとんど写らないにゃ。
LINEやメッセージの最初のやりとりには、声も表情も身ぶりもないにゃ。文字だけで人を見た場合は、この研究では調べていないにゃ。文字の感じでできた印象は、仮の札くらいにしておいていいと、ねこたちは思うにゃ。
職場の新しい人も、子どもの園で会う人も、義実家との初顔合わせも、最初はだれでも感じよくふるまう場にゃ。研究でいちばん時間がかかったのは、人あたりのやさしさだったにゃ。予定が急に変わったとき、だれかが失敗したとき、その人がどうするか。そこで見えてくるものがあるにゃ。
何度も会う関係でどう変わるかは、研究のその先の話にゃ。
だから最初の感じは捨てずにメモしておいて、会うたびに答え合わせするくらいが、ちょうどいいと思うにゃ。
初めて会った人のことを考えるとき、いまのあなたがいちばん頼りにしているのは?

「なんとなく合わない」。
理由を聞かれても、
うまく言えない感じにゃ。
5秒の映像でもそこそこ当たったのは、
にぎやかさ、まじめさ、頭のよさ。
人あたりのやさしさは、
5秒ではほとんど当たらなかったにゃ。
ねこたちが表をながめていて思ったのは、
最初の「なんとなく」は、
でたらめではないけれど、
見ている場所がかたよっている、
ということにゃ。
「合わない」と感じたのは、
にぎやかさや、話すテンポの
ずれだったのかもしれない。
その人がやさしいかどうかは、
まだ、ほとんど見えていなかった。
そう読むと、
最初ピンとこなかった人と
いまはいちばん仲よし、という話も、
ふしぎではなくなるにゃ。
とはいえ、「合わない」の正体が
テンポのずれかどうかは、
だれも確かめていないにゃ。
30人の大学生の、5分のおしゃべりの表を、
ねこたちが横から読んだ話にゃ。
ふたりの恋がこの先どうなるかも、
この映像には映っていないにゃ。
30人の映像を、
334人が見て。
にぎやかさは、
5秒で写ったにゃ。
やさしさは、
5分たっても、
うすくしか写らなかったにゃ。
初対面の5分は、
だれもが感じよくいられる時間にゃ。
やさしさが写るのは、たぶん、そのあと。
待ち合わせに遅れた日。
お茶をこぼした日。
お店が、思ったより混んでいた日。
予定どおりにいかない日は、
そばにいる人のやさしさが
はじめて写る日でもあるにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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