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同じメニューに、手が伸びた

📅 2025-11-03⏱️ 4分✍️ 匿名の夫
恋愛結婚運命日常気づき
「あ、それ私も頼もうと思ってた」 彼女がそう言った瞬間、なぜか心臓が跳ねた。 付き合って3ヶ月。初めて一緒に行ったイタリアンレストラン。 メニューを開いて、すぐに決まった。ボンゴレビアンコ。 「決まった?」 「うん。ボンゴレ」 彼女が笑った。 「嘘、私もボンゴレにしようとしてた」 それだけのこと。 でも、その瞬間、頭に浮かんだ。 「ああ、この人と結婚するんだろうな」 自分でも驚いた。まだ付き合って3ヶ月なのに。 なんでそう思ったのか、最初は分からなかった。 ただメニューが被っただけ。偶然かもしれない。 でも、違った。 思い返すと、他にもあった。 映画を選ぶ時、同じのを指差した。カフェで、同じタイミングで「ここ静かでいいね」と言った。スーパーで、同じお菓子をカゴに入れようとした。 好みが似てる。 それが、こんなに心強いとは思わなかった。 前に付き合ってた人とは、何を食べるかで揉めた。 「ラーメン食べたい」「えー、私パスタがいい」 毎回、どちらかが譲る。小さなことだけど、積み重なると疲れた。 「なんで合わせてくれないの?」 そんな喧嘩もした。 でも、彼女とは違った。 「何食べたい?」「うーん、中華かな」「あ、俺も」 こんな会話ばかり。 最初は気づかなかった。でも、あのレストランで気づいた。 この人とは、無理しなくていい。 合わせなくても、合ってる。 その夜、彼女を家まで送った。 「今日、楽しかった」 「うん、俺も」 彼女が笑った。その笑顔を見て、また思った。 この人だ。 プロポーズしたのは、それから1年後。 レストランで、同じメニューを頼んだ。あの日と同じ、ボンゴレビアンコ。 「覚えてる?初めてここ来た時」 「うん。同じの頼もうとしたんだよね」 「あの時さ、思ったんだ。この人と結婚するんだろうなって」 彼女が驚いた顔をした。 「え、あの時?」 「うん」 「私も、実は思ってた」 今度は、僕が驚いた。 「嘘」 「本当。同じの頼もうとしてるの見て、この人だって思った」 二人で笑った。 結婚して、5年が経った。 今でも、外食する時は好みが合う。たまに被らないこともあるけど、それはそれで楽しい。 「今日は別々にして、シェアしよう」 そう言って、お互いのを分け合う。 劇的な出会いじゃなかった。ドラマみたいなプロポーズでもなかった。 でも、同じメニューに手が伸びた、あの瞬間。 あれが、僕たちの始まりだった。 小さなことで分かることがある。 この人と一緒にいたい。この人とご飯を食べたい。この人と生きていきたい。 そういう気持ちは、案外、普通の日常の中で見つかるものなのかもしれない。 --- *© 2025 匿名の夫*