私は、人といると疲れる。
誰かと一緒にいる時、常に考えている。「何か話さなきゃ」「沈黙になったらどうしよう」「つまらないと思われてないかな」。
友達といても、そう。家族といても、そう。
会話が途切れると、焦る。何か話題を探す。天気の話、最近のニュース、相手の持ち物を褒める。
とにかく、沈黙を埋めようとする。
だから、人と会った後はいつもぐったりしていた。
「楽しかったね」と言いながら、心の中では「疲れた」と思っている。
そんな自分が、嫌だった。
彼とは、職場の飲み会で知り合った。
隣の部署の人。特に話したこともなかった。
飲み会の後、たまたま帰る方向が同じだった。
「ご飯、食べていきません?」
なんでそう言ったのか、今でも分からない。お酒の勢いだったのかもしれない。
近くのファミレスに入った。
最初は普通に話していた。仕事のこと、職場の人のこと、当たり障りのない話。
でも、料理が来て、食べ始めて、会話が途切れた。
「やばい」
いつもの焦りが来た。何か話さなきゃ。
でも、彼は気にしていないようだった。
黙って、ハンバーグを食べている。窓の外をちらっと見て、また食べる。
私も、黙って食べた。
5分くらい、無言だったと思う。
不思議だった。
焦りが、なかった。
「何か話さなきゃ」と思わなかった。沈黙が、怖くなかった。
ただ、一緒にご飯を食べている。それだけで、良かった。
彼が言った。
「ここのハンバーグ、美味しいですね」
「うん、美味しい」
それだけ。
でも、その「それだけ」が、私には衝撃だった。
会話を続けなきゃとか、盛り上げなきゃとか、そういうのがない。
ただ、一緒にいる。
こんなの、初めてだった。
帰り道、また少し無言の時間があった。でも、全然平気だった。
「今日、ありがとうございました」
「こちらこそ」
それだけの別れ際。
家に帰って、気づいた。
疲れてない。
誰かと会った後なのに、ぐったりしてない。
「この人だ」
そう思った。結婚とか、付き合うとか、そういう具体的なことじゃなくて。
この人とは、無理しなくていい。
それが分かった。
その後、何度かご飯に行った。
やっぱり、沈黙が怖くなかった。話したい時は話す。話さなくていい時は、黙っている。
「私、人といると気疲れするんだよね」
ある日、思い切って言ってみた。
「俺も」
彼が言った。
「だから、あなたといると楽なのかも」
同じだったんだ。
付き合って、3年が経った。
今でも、沈黙は多い。
一緒にテレビを見て、黙っている。一緒にご飯を食べて、黙っている。
でも、寂しくない。
たまに友達に言われる。
「二人、あんまり喋らないよね」
そうかもしれない。でも、それでいい。
言葉がなくても、一緒にいられる。
それが、私たちには合っている。
あの夜、ファミレスで沈黙が怖くなかった瞬間。
あれが、始まりだった。
もしあなたも、人といると疲れるタイプなら。
沈黙が怖くない人に出会えたら、大事にしてほしい。
それは、きっと特別な人だから。
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*© 2025 匿名の気疲れする人*