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沈黙が、怖くなかった

📅 2025-11-03⏱️ 4分✍️ 匿名の気疲れする人
恋愛沈黙気疲れ安心自然体
私は、人といると疲れる。 誰かと一緒にいる時、常に考えている。「何か話さなきゃ」「沈黙になったらどうしよう」「つまらないと思われてないかな」。 友達といても、そう。家族といても、そう。 会話が途切れると、焦る。何か話題を探す。天気の話、最近のニュース、相手の持ち物を褒める。 とにかく、沈黙を埋めようとする。 だから、人と会った後はいつもぐったりしていた。 「楽しかったね」と言いながら、心の中では「疲れた」と思っている。 そんな自分が、嫌だった。 彼とは、職場の飲み会で知り合った。 隣の部署の人。特に話したこともなかった。 飲み会の後、たまたま帰る方向が同じだった。 「ご飯、食べていきません?」 なんでそう言ったのか、今でも分からない。お酒の勢いだったのかもしれない。 近くのファミレスに入った。 最初は普通に話していた。仕事のこと、職場の人のこと、当たり障りのない話。 でも、料理が来て、食べ始めて、会話が途切れた。 「やばい」 いつもの焦りが来た。何か話さなきゃ。 でも、彼は気にしていないようだった。 黙って、ハンバーグを食べている。窓の外をちらっと見て、また食べる。 私も、黙って食べた。 5分くらい、無言だったと思う。 不思議だった。 焦りが、なかった。 「何か話さなきゃ」と思わなかった。沈黙が、怖くなかった。 ただ、一緒にご飯を食べている。それだけで、良かった。 彼が言った。 「ここのハンバーグ、美味しいですね」 「うん、美味しい」 それだけ。 でも、その「それだけ」が、私には衝撃だった。 会話を続けなきゃとか、盛り上げなきゃとか、そういうのがない。 ただ、一緒にいる。 こんなの、初めてだった。 帰り道、また少し無言の時間があった。でも、全然平気だった。 「今日、ありがとうございました」 「こちらこそ」 それだけの別れ際。 家に帰って、気づいた。 疲れてない。 誰かと会った後なのに、ぐったりしてない。 「この人だ」 そう思った。結婚とか、付き合うとか、そういう具体的なことじゃなくて。 この人とは、無理しなくていい。 それが分かった。 その後、何度かご飯に行った。 やっぱり、沈黙が怖くなかった。話したい時は話す。話さなくていい時は、黙っている。 「私、人といると気疲れするんだよね」 ある日、思い切って言ってみた。 「俺も」 彼が言った。 「だから、あなたといると楽なのかも」 同じだったんだ。 付き合って、3年が経った。 今でも、沈黙は多い。 一緒にテレビを見て、黙っている。一緒にご飯を食べて、黙っている。 でも、寂しくない。 たまに友達に言われる。 「二人、あんまり喋らないよね」 そうかもしれない。でも、それでいい。 言葉がなくても、一緒にいられる。 それが、私たちには合っている。 あの夜、ファミレスで沈黙が怖くなかった瞬間。 あれが、始まりだった。 もしあなたも、人といると疲れるタイプなら。 沈黙が怖くない人に出会えたら、大事にしてほしい。 それは、きっと特別な人だから。 --- *© 2025 匿名の気疲れする人*