そうだね
ふつう・4分

そうだね:嫌いじゃない、でも好きでもない

匿名の煮えきらない人・4分・ふつう

彼のことが嫌いなわけじゃない。

でも、好きかって聞かれると、分からない。

付き合って4年。同棲して2年。

喧嘩もしない。浮気もされてない。暴力も暴言もない。

普通に優しい。普通に穏やか。普通に、一緒にいる。

何も問題がない。

なのに、何かが足りない。

その「何か」が分からないまま、ずっと一緒にいる。

友達に言ったことがある。

「なんか、彼と一緒にいても、何も感じないんだよね」

「え、やばくない?別れなよ」

「でも、別れる理由もないんだよね」

これが、一番困る。

嫌いなら、別れられる。喧嘩が絶えないなら、別れられる。浮気されたら、別れられる。

でも、何もない。

ただ、何も感じない。

一緒にご飯を食べても、美味しいとか楽しいとか、思わない。一緒にテレビを見ても、笑いのツボが合ってるのか合ってないのか、もう分からない。

隣にいるのに、一人でいるみたい。

寂しくはない。でも、満たされてもいない。

これって、なんだろう。

27歳。周りは結婚ラッシュ。

「そろそろ結婚しないの?」

親にも、友達にも、聞かれる。

彼も、たまに言う。

「そろそろ、ちゃんと考えようか」

その度に、私は曖昧に笑う。

「そうだね」

そうだね、じゃないんだよ。分かってる。

でも、「結婚しよう」とも「別れたい」とも言えない。

どっちも、エネルギーがいる。

今のままが、一番楽。

変わらなくていい。決断しなくていい。このまま流れていけばいい。

そう思って、また一日が過ぎる。

ある日、買い物に行った。

彼が「これ、いいね」と言った服を、私は「そうだね」と言った。

本当は、全然いいと思ってなかった。

でも、言わなかった。

言っても、面倒だから。

その瞬間、気づいた。

私、もう何年も本音を言ってない。

「そうだね」「いいね」「なんでもいいよ」

全部、面倒を避けるための言葉。

彼と向き合うのが、面倒になってる。

それって、もう終わってるんじゃないか。

帰り道、彼が言った。

「最近、楽しい?」

「え?」

「なんか、笑わなくなったなと思って」

彼も、気づいてたんだ。

「ごめん、疲れてるのかも」

また、嘘をついた。

疲れてるんじゃない。何も感じなくなってるだけ。

その夜、一人で考えた。

このまま結婚したら、どうなるんだろう。

たぶん、生活はできる。子どもができたら、それなりにやっていける。

「それなりに」

その言葉が、引っかかった。

私の人生、「それなりに」でいいのかな。

問題がないから続ける。変えるのが面倒だから続ける。

それって、一緒にいたいから一緒にいるのと、全然違う。

違和感を、ずっと無視してきた。

「大したことじゃない」「みんなこんなもの」「贅沢言ってる」

そう言い聞かせてきた。

でも、違和感は消えなかった。むしろ、どんどん大きくなってる。

まだ、答えは出てない。

別れるのか、続けるのか。

でも、一つだけ決めた。

この違和感を、もう無視しない。

「何も問題がない」は、「一緒にいる理由がある」とは違う。

それに気づいただけでも、何かが変わった気がする。

彼と話さなきゃいけない。本音で。

怖いけど。面倒だけど。

「それなりに」で終わる人生は、嫌だから。

― 匿名の煮えきらない人

同じ棚から、もう一冊

研究所道具屋猫の国の地図