大切な人が、苦しんでいる。
それは、見れば分かる。
顔色が悪い。笑わなくなった。連絡が減った。
「大丈夫?」
そう聞いても、「大丈夫」としか返ってこない。
大丈夫じゃないことは、分かってる。
でも、どうすればいいか分からない。
助けたい。力になりたい。何かしたい。
でも、何をすればいいんだろう。
話を聞こうとした。
「何かあったら、話してね」
「うん、ありがとう」
それきり、話してくれなかった。
もっと踏み込むべき?
でも、踏み込んだら、嫌がられるかもしれない。
「放っておいて」って言われるかもしれない。
そう思うと、怖くて踏み込めない。
友達に相談した。
「本人が話したくないなら、待つしかないんじゃない?」
「でも、待ってる間に、もっと悪くなったら?」
「それは、本人の問題だから」
本人の問題。
そうなのかもしれない。でも、大切な人なんだ。
他人事みたいに、放っておけない。
何かしたい。でも、何かしていいのか分からない。
このまま見てるだけでいいのか分からない。
ある夜、また連絡した。
「今度、ご飯行かない?」
既読がついた。返事が来ない。
1時間、2時間、3時間。
やっと返事が来た。
「ごめん、今はちょっと」
そっか。そうだよね。
無理に誘うのは、逆効果かもしれない。
でも、誘わなかったら、「誰も気にかけてくれない」って思うかもしれない。
正解が、分からない。
母に相談した。
「あんたが何かしたからって、その人が救われるとは限らないよ」
分かってる。
「でも、何もしなかったら、後悔するかもしれないでしょ」
それも分かってる。
「だったら、あんたができる範囲で、できることをすればいいんじゃない」
できる範囲で、できること。
それが何なのか、まだ分からない。
考えた。ずっと考えた。
助けるって、何だろう。
手を引っ張ること?
荷物を持ってあげること?
正解を教えてあげること?
たぶん、違う。
私にできるのは、「ここにいるよ」って伝えることだけかもしれない。
助けられなくても、いい。
解決できなくても、いい。
ただ、「あなたのことを気にかけてる人がいるよ」って、それだけ伝えること。
短いLINEを送った。
「無理に返事しなくていいよ。ただ、いつでも連絡してね。私はここにいるから」
既読がついた。返事は来なかった。
でも、それでいいと思った。
読んでくれた。それで十分。
次の日も、その次の日も、返事は来なかった。
でも、私は毎日少しだけ思った。「元気かな」って。
一週間後、LINEが来た。
「ありがとう」
それだけだった。
でも、泣きそうになった。
届いてた。私の気持ちが、届いてた。
まだ、何も解決してない。
あの人は、まだ苦しんでるかもしれない。
でも、一人じゃないって、分かってくれたかもしれない。
手を差し伸べることが、正しいのか分からない。
助けになってるのか、お節介なのか、分からない。
でも、一つだけ分かったことがある。
大切な人のために迷うこと。
それ自体が、もう愛なんだと思う。
正解がなくても、迷いながらそばにいること。
それしかできないなら、それでいい。
私は、迷いながら、ここにいる。
あなたが必要な時に、すぐ手を伸ばせる場所に。
それが、今の私にできる精一杯だから。
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