卵焼き
ふつう・3分

卵焼き:同じベッドの距離

匿名の既婚者・3分・ふつう

付き合いたての頃、夜中にどっちかが起きると、もう片方も目を覚ました。

「どうした?」「トイレ」「おやすみ」

それだけで、安心した。

今も、夜中に目が覚める。隣で夫が寝ている。寝息が聞こえる。

でも、声はかけない。向こうも、かけてこない。

休みの日の朝ごはんを、一緒に作ってた。

「卵焼き甘い派?しょっぱい派?」なんて聞いて、「じゃあ半分ずつ作ろう」って笑ってた。

今は、起きる時間がずれた。先に起きたほうが勝手に食べる。テーブルに残された食器で、「あ、起きたんだ」と知る。

一緒にいるのが当たり前だったあの頃と、一緒にいるのが当たり前になった今。

同じ言葉なのに、全然違う。

嫌いになったわけじゃない。たぶん向こうも。

ただ、「好き」の形が変わったのか、「好き」が減ったのか、それすら分からない。

聞けばいいのかもしれない。「最近、どう思ってる?」って。

でも聞いて、答えが返ってくるのが怖い。聞かないまま過ぎていく日々のほうが、まだ安全な気がする。

同じベッドで寝ている。背中合わせで。

あの頃は、くっついて寝てた。今は、ちゃんと自分のスペースがある。

大人になったのかな。

それとも、遠くなっただけかな。

― 匿名の既婚者

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