街中で、半袖の人が増えてきた。
電車で隣に座った人の肘が、私の長袖のニットに当たった。冷たかった。たぶん、冷房に晒されてた腕。
私は、まだ、長袖を着てる。
家を出る時、薄手のシャツを取ろうとして、結局やめた。クローゼットの奥の方にしまってあって、引っ張り出すのが、なんとなく億劫だった。
長袖のほうが、手前にあるから、取りやすい。それだけの理由で、今日もこれを着てる。
電車の中で、背中がじっとり汗ばんできた。
そういえば、家から駅まで歩いてくる時、もう日差しが強かった。
それを毎日感じてるのに、毎朝、同じ服を取る。
クローゼットを開けるのが、なんとなく、億劫だ。
---
日曜日。
ようやくクローゼットを開けた。
午前中はずっとベッドにいて、お昼を食べてから、やっと、立ち上がった。
冬物のセーター、まだ圧縮袋にも入ってない。夏物の置き場所も、決まってない。
全部、出して、洗って、しまって、収納する。
それが、扉を開けた瞬間に、頭の中で全部見えた。
しまった、と思いながら、扉を閉じた。
冷蔵庫を開けて、何もなくて、また閉じた。
お湯を沸かそうとして、ケトルが空っぽで、水を入れるのが面倒で、やめた。
何もしてないのに、もう疲れてた。
---
夜のコンビニで、冷たいレモンウォーターを買った。
レジで「あたためますか」と聞かれて、首を振った。
帰り道、汗が背中を伝った。
家に着いて、ニットを脱いだ。
明日もたぶん、これを着る。
衣替えできない一日は、たぶん、明日に持ち越される。
そして、明後日にも。
ある日、たぶん、6月の真ん中くらいに、もう限界、と思って、一気に全部やる気がする。
今までもそうだった。だから、今年もそうする。
季節は私を待ってくれないけど、
私の部屋は、私のペースで進めばいい、と思う。
そう思うことにする。
たぶん、それでも、生きていける。
---
*© 2026 匿名の衣替え遅刻者*