冬は、窓を開けなかった。
寒くて、開けたら冷気が入る。
家事も億劫で、換気のことも忘れる。
ベッドの中で半日を過ごす日もあった。空気の入れ替えなんて、思いつきもしなかった。
カーテンも、夕方まで閉めてた。
昼の光を浴びるのが、なんとなく、まぶしすぎた。
明るい部屋を見ると、自分の暗さが目立つ気がして。
だから、薄暗いまま、布団の中で、スマホだけ光らせてた。
ホコリが舞ってるのは、たぶん、見えてた。換気扇も回ってなかった。
それでも、何もしなかった。
部屋は、私の状態と同じ温度で、同じ空気のままだった。
そこにいると、私もずっと、同じ場所にいる気がした。
止まってる、と思いながら、止まり続けた。
いま、窓を開けている。
朝、起きて、無意識にカーテンを開けた。
ベッドから立ち上がって、当たり前のように、サッシに手をかけた。
窓を開けた。風が入った。
新緑の匂いがした。湿った草の匂いと、どこかから運ばれてきた花の匂い。
ベランダに干したシャツが揺れて、近所の子どもの声が、遠くで聞こえた。
何かを決意したわけじゃない。
ただ、なんとなく、開けてもいい気がした。
冬の自分には、これができなかった。
冬の自分は、悪くない。
閉めることが必要だった。寒くて、暗くて、誰にも会いたくない時期だった。
ただ、いま、開けられるなら、開けていい。
季節は、たぶん、心の伴走者みたいなものです。
私の心が、開けていい、と言うまで、ずっと外で待っててくれた。
そして、いま、私は、勝手に開けた。
許可をもらったわけでもなく、誰に教わったわけでもなく、ただ、開けた。
明日、また閉めるかもしれない。
雨の日もあるし、しんどい日もある。
それでも、たぶん、いい。
今日、開けたことだけは、覚えておく。
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