昨日、湯船にお湯を張った。
たぶん、半年ぶりくらいだと思う。
ずっとシャワーだけだった。湯船に浸かる元気がなかった、と言うと大げさに聞こえるかもしれない。でも本当にそうだった。
お湯を張るには、栓をして、蛇口をひねって、溜まるのを待って、あとで浴槽を洗う必要がある。文字にすると四工程。しんどい時期の四工程は、山登りだ。
シャワーは、立ってお湯を浴びるだけでいい。だからずっと、そっちだった。
昨日、なんとなく栓をした。
理由は、思い出せない。涼しい夜だったからかもしれないし、たまたま早く帰れたからかもしれない。
お湯が溜まるまでの十五分、洗面所の床に座って待った。ゴーッという音を聞きながら、スマホも見ずに、ただ待っていた。あの時間も、悪くなかった。
浸かった瞬間、変な声が出た。
「あ〜」という、おじさんみたいな声。一人なのに。
肩までお湯に入ると、体の輪郭が分かる。ここまでが私、という線が、お湯の温かさでなぞられていく。半年間、自分の体の輪郭のことなんて、考えたこともなかった。
十分くらいで出た。長風呂はもともと得意じゃない。
でも、布団に入った時、体の芯がまだ温かかった。その温かさを抱えたまま、いつもより早く眠りに落ちた。
今日も張るかは、わからない。
シャワーの日に戻っても、それはそれでいい。
ただ、「湯船に浸かれる日もある」ということを、昨日の私が証明してくれた。
それを覚えておこうと思う。
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