シャンプー
ふつう・4分

シャンプー:3年前のわたしへ

匿名の手紙書き・4分・ふつう

3年前のわたしへ。

届くかな。届かないよね。でも書くね。

今のわたしは、まあ、生きてるよ。
それだけ聞いたら安心する? しないか。あの頃のわたしは、生きてることがいちばんしんどかったもんね。

あのとき、毎朝起きるたびに思ってたよね。

「また今日が始まる」って。

嬉しいとかじゃなくて。がっかりしてた。目が覚めたことに。

布団の中で天井を見て、身体が重くて、何もかもが面倒で。

お風呂に入れなかった日が続いてた。3日、5日。シャンプーする気力がないの。髪がべたべたしてるのは分かってるのに、どうでもいい。自分のことがどうでもいい。

鏡を見るのが嫌だった。目の下のクマ。荒れた肌。「こんなの私じゃない」って思ってた。でも本当は、「これが私だ」ってことのほうが怖かった。

あのね、言いたいことがあるの。

「頑張らなくていいよ」とか、そういうんじゃないの。あの頃のわたしがいちばん嫌いだった言葉でしょ、それ。頑張ってないわけじゃないのに、って。

わたしが言いたいのは、

あなたが自分のことを「ダメだ」って思ってるその感覚、間違ってないよってこと。

——え、って思うよね。

違う違う、あなたが本当にダメだって意味じゃないの。

「ダメだと感じている」こと自体は、おかしくないってこと。だって、それだけしんどい状況にいるんだもん。しんどかったら「ダメだ」って思うのは、普通の反応だよ。壊れてるんじゃない。反応してるだけ。

3年後のわたしがそれに気づくまで、だいぶかかった。

正直に言うね。

3年経っても、全部は治ってない。

たまに「自分なんか」って思う夜はある。お風呂に入れない日もたまにある。人と比べて落ち込むこともある。

でもね。

「たまに」になったの。

「毎日」だったのが、「たまに」になった。

それってたぶん、すごいことなんだと思う。あの頃のわたしには信じられないだろうけど。

最後にひとつだけ。

あなたはこれから、自分に「えらいえらい」って言えるようになるよ。

嘘でしょって思うよね。あの頃のわたしがいちばんバカにしそうな言葉だよね。

でも本当。お風呂に入っただけで「えらい」。ご飯食べただけで「えらい」。布団から出ただけで「えらい」。

最初はバカみたいだった。でも続けてたら、ちょっとだけ、自分のことが嫌いじゃなくなった。

だからあなたも、いつか言えるようになるよ。

急がなくていいから。

3年後のわたしより。

― 匿名の手紙書き

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