弟が、刑務所に入った。
罪状は、窃盗。執行猶予はつかなかった。実刑、2年。
ニュースで見るような話じゃない。私の弟の話だ。
弟は、昔から問題児だった。学校はサボる、喧嘩はする、家にはほとんど帰ってこない。
両親は、諦めていた。「もう、勝手にしろ」って。
私は、どうすればいいかわからなかった。注意しても聞かない。助けようとしても拒否される。
20歳を過ぎて、弟は家を出た。それから、たまに連絡が来る程度だった。
ある日、警察から電話があった。「弟さんが逮捕されました」って。
頭が真っ白になった。
裁判に行った。弟は、痩せていた。目が虚ろだった。
「ごめん」って、弟は言った。それだけ。
判決が出た日、傍聴席で泣いた。弟は振り返らなかった。
刑務所に面会に行くか、迷った。
親は行かないと言った。「自業自得だ」って。
でも、私は行った。
面会室。ガラス越しに、弟がいた。
「来ると思わなかった」って、弟は言った。
「馬鹿だね」って、私は言った。
弟は笑った。「馬鹿だよ、俺」
何を話せばいいかわからなかった。説教する気にもなれなかった。ただ、そこにいた。
「出たら、どうするの?」って聞いた。
「わかんない。でも、ちゃんと生きたい」
本当かどうか、わからない。でも、信じたいと思った。
月に一度、面会に行ってる。
周りには言ってない。友達にも、会社の人にも。「弟が刑務所にいる」なんて、恥ずかしくて言えない。
でも、弟は弟だ。犯罪者になっても、血の繋がりは消えない。
憎い?憎い。情けない?情けない。恥ずかしい?恥ずかしい。
でも、それでも。見捨てられない。
それが、家族なのかもしれない。いや、わからない。私も、よくわからない。
ただ、弟が出所したら、迎えに行こうと思ってる。
その後、どうなるかはわからない。また犯罪を犯すかもしれない。私を裏切るかもしれない。
でも、今は、それしか考えられない。
弟が刑務所に入った。
それは、私の人生にも影響を与えた。恥ずかしさ、罪悪感、葛藤。いろんな感情が、私を苦しめてる。
でも、弟を見捨てることは、できない。
それが正しいかどうか、わからない。でも、これが私の選択だ。
面会室で、弟が言った。
「姉ちゃん、ありがとう」
その言葉を聞いて、少しだけ救われた気がした。
---
*© 2025 匿名の姉*