買い物メモ
ふつう・4分

買い物メモ:結婚5年目、私たちは会話をやめた

匿名の妻・4分・ふつう

結婚5年目。夫と、会話をしなくなった。

喧嘩したわけじゃない。嫌いになったわけでもない。ただ、話すことがなくなった。

朝、夫が起きる。私も起きる。「おはよう」は言わない。夫はトイレに行って、着替えて、リビングに来る。私が作った朝食を黙って食べる。「いただきます」も「ごちそうさま」も言わない。

夫は仕事に行く。「行ってきます」は言わない。ドアが閉まる音だけが響く。

夜、夫が帰ってくる。「ただいま」は言わない。私も「おかえり」とは言わない。夫はシャワーを浴びて、夕飯を食べて、テレビを見て、寝る。

それだけ。毎日、それだけ。

最初からこうだったわけじゃない。

新婚の頃は、たくさん話した。仕事のこと、将来のこと、他愛のないこと。笑い合ったし、喧嘩もした。

でも、3年目くらいから、少しずつ減っていった。

仕事が忙しくなった。夫は帰りが遅くなった。私も疲れていた。話す余裕がなくなった。

そして、いつの間にか、話さなくなった。

寂しい?うん、寂しい。でも、それ以上に楽だった。

話さなくていい。気を遣わなくていい。嫌われないか心配しなくていい。期待されない。失望されない。

これは、冷めた関係なのかもしれない。でも、破綻してるわけじゃない。

夫は、ちゃんと働いてくれる。お金を入れてくれる。浮気もしてないと思う。暴力も振るわない。

私も、家事はする。ご飯は作る。洗濯もする。掃除もする。

それで、成り立ってる。

友達に、この話はできない。「夫と会話しないんだ」なんて言ったら、「離婚した方がいいよ」って言われる。

でも、離婚する理由がない。DVもない、浮気もない、お金の問題もない。ただ、会話がないだけ。

それだけで、離婚する?

先週、夫が珍しく私に話しかけた。

「醤油、切れてる」

それだけ。

「明日買う」って答えた。

それで、会話は終わった。

これが、私たちの夫婦の形。

愛してる?わからない。もう、よくわからない。

でも、嫌いじゃない。一緒にいることに、慣れた。

他の人と結婚してたら、違ったのかな。もっと会話のある、楽しい結婚生活だったのかな。

でも、それはわからない。今の夫と結婚したのは、私の選択だった。

結婚5年目。私たちは会話をやめた。

さっき、買い物メモに「醤油」と書いた。

明日は、夫の好きな銘柄の方を買うと思う。

そういうことは、まだ、なぜかわかる。

― 匿名の妻

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