夫が、皿を洗わない。
夕飯が終わっても、皿はシンクに放置。
私が洗う。毎日。
イライラしてた。
「なんで手伝ってくれないの?」
心の中で、何度も思った。でも、言わなかった。
言ったら喧嘩になる。それが嫌だった。
でも、ある日、限界が来た。
「ねぇ、皿くらい洗ってよ」
言った。声が、少し尖ってた。
夫は、リビングでテレビを見ていた。振り向かずに、「あぁ、ごめん」って言った。
でも、洗わなかった。
次の日も、その次の日も、同じ。
私は、もう我慢できなかった。
「なんで洗わないの?疲れてるのは私だけじゃないよ」
夫は、黙った。それから、こう言った。
「洗い方、わからないんだ」
「え?」
「どれから洗えばいいのか、どの洗剤使えばいいのか、わからない。だから、やらなかった」
驚いた。
洗い方がわからない?そんなの、誰でもできることだと思ってた。
でも、夫は本気だった。
「実家では、母がやってた。一人暮らしもしたことないから、やったことなくて」
そうだった。夫は、実家から結婚で出てきた。料理も、洗濯も、全部母がやっていた。
私は、それを知っていたはずなのに、気づいていなかった。
「じゃあ、教えるよ」
その日から、夫に皿洗いを教えた。
「まず、油物は後回し。スポンジに洗剤をつけて、こうやって洗う」
夫は、真剣に聞いていた。そして、やってみた。
最初は、ぎこちなかった。洗い残しもあった。でも、やってくれた。
「こんな感じ?」って夫が聞いた。
「うん、いいよ」
夫は、嬉しそうに笑った。
それから、夫は週に3回くらい、皿を洗ってくれるようになった。
毎日じゃない。でも、それでいい。
私は、夫に期待しすぎていたのかもしれない。「できて当たり前」と思っていた。
でも、できないこともある。知らないこともある。
それを、聞いてみないとわからない。
イライラする前に、聞けばよかった。
「なんでやらないの?」じゃなくて、「どうしたらできる?」って。
今、夫婦関係は少し良くなった。
喧嘩も減った。会話も増えた。
皿洗いがきっかけだった。
小さなことだけど、大きな変化だった。
コミュニケーションって、大事なんだな。
当たり前のことだけど、忘れていた。
夫が皿を洗わない理由を、聞かなかった。
それが、私の間違いだった。
でも、今は聞けるようになった。
それだけで、人生が少し楽になった。
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