三回目のコール
ずっしり・5分

三回目のコール:母と、10年ぶりに連絡を取った

匿名の娘・5分・ずっしり

母の電話番号を、10年ぶりに押した。

コール音が鳴る。心臓がバクバクする。切ろうかと思った。でも、3回目のコールで、母が出た。

「もしもし」

その声を聞いた瞬間、色々な感情が溢れてきた。

母と連絡を絶ったのは、10年前。私が25歳の時だった。

母は、いわゆる毒親だった。過干渉で、支配的で、私のすべてをコントロールしようとした。進路も、友達も、恋愛も、すべて母の意見が優先だった。

反論すると、怒鳴られた。「あなたのためを思って言ってるのに」と言われた。でも、本当に私のためだったのか。今でも分からない。

大学を卒業して、就職した。一人暮らしを始めた。でも、母は毎日電話してきた。「ちゃんと食べてるの?」「仕事はどう?」「週末は帰ってきなさい」。

息が詰まりそうだった。

ある日、彼氏ができた。母に紹介したら、こき下ろされた。「あんな男、やめなさい。あなたには合わない」。でも、私は彼が好きだった。

「もう、干渉しないで」

そう言ったら、母は泣いた。「私を捨てるの?」と言われた。罪悪感が襲ってきた。でも同時に、怒りも湧いた。

結局、連絡を絶った。電話も出ない。メールも返さない。完全に、音信不通にした。

最初は罪悪感でいっぱいだった。「親不孝なんじゃないか」「母は悲しんでいるんじゃないか」。でも、友達に話したら、こう言われた。

「あなたは、自分を守っただけだよ」

その言葉に、救われた。

それから10年。私は結婚して、子どもができた。娘が生まれた。

娘を抱いた時、ふと思った。「母も、私をこうやって抱いたのかな」。

そして、少しだけ母の気持ちが分かった気がした。子どもを心配する気持ち。でも同時に、思った。「私は、娘を縛らない」。

娘が3歳になった頃、夫が言った。

「お母さんに、孫を見せてあげたら?」

最初は嫌だった。でも、考えた。もし母が死んだら、後悔するんじゃないか。このまま、一生会わないままでいいのか。

そして、電話をかけた。

「もしもし」
「…お母さん?私」

母は、一瞬黙った。そして、震える声で言った。

「…久しぶりね」

その後、色々話した。10年間のこと。結婚したこと。子どもができたこと。母も、近況を話してくれた。

「会える?」と聞いたら、母は泣きながら「会いたい」と言った。

数週間後、母に会った。10年で、母は老けていた。白髪が増えて、背中が少し丸くなっていた。

娘を連れて行った。母は、娘を見て涙を流した。

「可愛いわね」

母は優しく笑った。あの支配的な母とは、少し違って見えた。

話をした。過去のことも、少しだけ話した。母は、謝らなかった。でも、「あなたが苦しんでいたこと、気づかなかった」と言った。

完全に許せたわけじゃない。でも、少しだけ、気持ちが楽になった。

今、母とは月に1回会っている。娘は、母に懐いている。母も、娘には優しい。

過去は変えられない。でも、これからは変えられる。母との関係も、ゆっくりと再構築していけるかもしれない。

距離を置いた10年は、間違いじゃなかった。自分を守ることが、あの頃の私には最優先だった。

そして、会いたいと思った日に会ったことも、間違いじゃなかった。どちらも、私の選択だった。

私は、再会して良かったと思っている。完全に元通りにはならないけど、新しい関係を作れるかもしれない。

それだけで、十分だと思う。

― 匿名の娘

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