
…前の恋に似た人には、前と同じ気持ちまで連れてきてしまうのかもしれないにゃ。
こんな話、したことないにゃ?
毎回ちがう人を選んでいるつもりなのに、
終わり方がいつも似ている。
そのたびに「見る目がない」って、
自分を責めてきたかもしれないにゃ。
でも、ほんとうに「目」の問題なのかにゃ。
心理学者のブランボーさんとフレイリーさん(2006年)は、アメリカの大学で、前に付き合った人がいて、いまは恋人がいない学生たちに協力してもらったにゃ。分析に使えたのは371人にゃ。
1回目の調査では、いちばん大事だった前の恋人がどんな人だったかを、14の文で書いてもらったにゃ。その人と付き合っていたころ、どんな気持ちでいたかも聞いたにゃ。
1〜2週間後。別の部屋で、別の担当者が「学生向けの出会いサイトの広告を見てほしい」と頼んだにゃ。
広告は2つ。片方には、本人が書いた前の恋人の特徴を、言いかえてこっそり混ぜてあったにゃ。もう片方は、ほかの参加者の前の恋人をもとにした広告にゃ。2つの調査がつながっていると勘づいた人は、結果から外してあったにゃ。
前の恋人に似た広告の相手を、学生たちはどう感じたと思う?
前の恋人に似た相手のほうを
「付き合えそう」と感じ、
同時に「見捨てられないか」という不安も
強く感じていた
胸がざわざわして、目が離せない。それを「恋だ」と感じるのは、自然なことにゃ。
でもそのざわざわの一部は、前の恋から持ってきた気持ちなのかもしれないにゃ。
前の恋で不安が強かった人は、似ていないほうの相手にも、同じような不安を持ちこんでいたにゃ。似ている相手だと、それがもっと強くなったにゃ。
思い浮かべた前の恋人が初恋の人だったとき、似た相手に不安を持ちこむ傾向が、とくにはっきり出ていたにゃ。
「ダメな人ばかり」と感じるとき、毎回の相手がそっくりなんじゃなくて、こちらが連れてくる気持ちがいつも同じ、ということもありそうにゃ。
研究者たち自身は、こう考えたにゃ。前の人に似ていると、知っている人のように感じて近づきやすい。でも同時に、前の別れも思い出して、不安になるのかもしれない、って。
なぜ「知っている感じ」に惹かれるのかには、昔からいくつかの答えがあるにゃ。
精神分析をはじめたフロイトは、1905年の本で「相手を見つけることは、じつは見つけ直すこと」と書いたにゃ。子どものころに親とのあいだで覚えた愛され方が、大人の恋の型になる、という見立てにゃ。診察室での観察から組み立てた理論で、数えて確かめたものではなかったにゃ。
2019年に、両親のルーツがちがう大人4,600人あまりを調べた研究があるにゃ。親のどちらかと同じルーツの人と付き合い、惹かれやすい傾向は見られたにゃ。でも、フロイトの言うように異性の親のほうが強く効く、ということはなかったにゃ。親の性別より、見慣れていること自体が効いているのかもしれないにゃ。
人は、自分についての見方を確かめてくれる相手を選びやすい、という説もあるにゃ。この研究の著者たちも、手がかりのひとつに挙げているにゃ。そのほうが先が読めて落ち着くから、と説明されてきたにゃ。「どうせ大事にされない」という見方が身についていると、そう扱う相手のそばが、苦しいのに離れにくいのかもしれないにゃ。
「ダメな人」のなかでも、いちばん気をつけたいのは、相手を傷つける人にゃ。
2007年に、アメリカの女子大学生を調べた研究があるにゃ。実在の男性が書いたプロフィールを何人分も読んで、それぞれどのくらい会ってみたいかを答えてもらったにゃ。
プロフィールのなかには、ほかの人が読むと「この人は相手を傷つけるかもしれない」と感じるもの、たとえば独占欲ややきもちの強さがにじむものが混ざっていたにゃ。
これまでの恋愛で、
心を傷つけられる経験が多かった女性ほど、
そういう特徴のにじむ男性に
惹かれやすかった
そしてこれは、自分への評価の高い低いでは説明できなかったにゃ。結びついていたのは「私なんか」という気持ちより、これまでに何をされてきたかのほうだったにゃ。
同じ研究では反対側も調べていて、相手を傷つけたことの多い男性ほど、見捨てられる不安の強い女性に惹かれていたにゃ。どちらか片方の見る目だけで起きていることじゃ、なさそうにゃ。
2006年の学生たちは、別れてからだいたい半年。研究者は、広告に数行の特徴を混ぜて、前の恋人を呼び起こしたにゃ。
いまの私たちのまわりには、呼び起こすきっかけが、もっとたくさんあるにゃ。
写真アプリが「〇年前の今日」と、前の人と写った日を出してくる。SNS では近況が流れてくる。前の恋の気持ちが呼び起こされる回数は、2006年の学生たちよりずっと多いのかもしれないにゃ。新しく気になる人ができたら、その人のどこに惹かれたのか、前の人と重ねていないか、一度ゆっくり見てみてもいいにゃ。
日本では2000年に週刊誌で始まった漫画から、「だめんず」という言葉が広まったにゃ。笑える名前がついて話しやすくなった一方で、「だめんずばかり選ぶ私」という札にもなりやすいにゃ。でもさっきの研究で、惹かれ方を分けていたのは「私なんか」じゃなかったにゃ。その札は、はがしていいにゃ。
2007年の研究で、ほかの人には危ないしるしに見えた特徴が、本人には魅力に映っていたにゃ。いまはプロフィールやメッセージを、そのまま信頼できる友だちに見せられるにゃ。「この人かも」と決める前に、もうひとつの目を借りるのは、ずるいことじゃないにゃ。
新しく気になる人ができたとき、いまのあなたに近いのはどれ?

研究者が広告に混ぜたのは、
前の恋人の特徴を言いかえた、
ほんの数行だったにゃ。
しかも結果に残ったのは、
2つの調査のつながりに
勘づかなかった人たちだけ。
「似てる」と思わないまま、
会ってみたい気持ちと不安が
そろって上がっていたにゃ。
見覚えは、自分の目には
見覚えとしては映らない
らしいにゃ。
胸のざわざわとして、
「この人かも」として届く。
2007年の研究でも、
ほかの人には危ないしるしに見えた特徴が、
本人には魅力に映っていたにゃ。
そこを分けていたのは、目のよしあしより、
これまでに何をされてきたかだったにゃ。
だから、いまの相手といて
こわいと感じることがあるなら、
それは惹かれ方の話より先に、
あなたの身の安全の話にゃ。
外から見える目を、
信頼できる人やニャンタル、専門家から
借りてほしいにゃ。
371人が、広告を1分ずつ読んだ。
そのつくられた場面から、
ねこたちが拾ってきた読みにゃ。
研究者たち自身も、
この持ちこみがずっと続くとは
考えていなかったにゃ。
安心できる相手と付き合ううちに、
不安の強い人も落ち着いていける、
と書き添えているにゃ。
「ときめき」と「見覚え」は、
ときどき
同じ顔をしてやってくる。
見覚えがいちばん強く働くのは、
出会ったばかりのころ。
付き合ううちに、相手の顔は、
その人が毎日じっさいにすることで
描きなおされていく。
研究者たちは、そう見ていたにゃ。
見る目の出番は、
たぶん、そこからにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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