
…責める先が自分に向いたとき、つらさは暮らしにまでしみ出してくるみたいにゃ。
裏切られたのは自分なのに、
気づくと、自分を責めている。
ごはんが喉を通らない。
寝る前のお酒が増える。
それは、心が弱いからなのかにゃ。
アメリカ・ネバダ大学リノ校の心理学者シュラウトさんとワイゲルさん(2018年)は、3か月以内に恋人に浮気された大学生232人に、アンケートに答えてもらったにゃ。
平均20歳。付きあっていた期間は平均で1年9か月ほどで、多くが真剣な関係だったにゃ。
たずねたのは、大きく3つにゃ。
浮気を、だれのせいだと感じているか。相手か、それとも自分か。
いま、どのくらい落ちこんで、不安で、つらいか。
それから、最近の暮らし。食べられない、お酒の量が増えた、運動をやりすぎてしまう、といったことがあるか。
食べない・飲みすぎるなど、体をすり減らすような行動が多かったのは、どんな人だったと思う?
落ちこみや不安が強い人ほど、
食べない・飲みすぎる・運動しすぎるなど、
体をすり減らすような行動が多かった。
自分を責めている人ほど、その流れが強く、
とくに女性ではっきりしていた
相手を責める気持ちのほうは、それだけでは、こうした行動と直接にはつながっていなかったにゃ。
暮らしにまで響いていたのは、自分を責める気持ちのほうだったにゃ。
ごはんが喉を通らない。寝る前の一杯が、二杯になる。
それは、だらしなさじゃないにゃ。あふれたつらさが、暮らしのほうへ流れ出した跡なのかもしれないにゃ。
ただ、これは一度きりのアンケートにゃ。自分を責めるからつらくなるのか、つらいから自分を責めてしまうのか、順番まではわからないにゃ。どちらが先とも言えないまま、ぐるぐる回っているのかもしれないにゃ。
女性で結果がはっきりしていた理由を、研究者たちはこう考えているにゃ。
恋人との関係を、「自分がどんな人か」の大事な一部にしていることが多いから。裏切られると、相手への信頼だけじゃなく、自分への見方まで揺らいでしまう。「愛されなかった私」「見抜けなかった私」と。
もうひとつ、手がかりになる考え方があるにゃ。
1990年代に、子どもの虐待を研究していた心理学者が「裏切りトラウマ」という考え方を出したにゃ。信頼して頼っている相手から受けた傷は、ほかの怖い出来事とは、ちがう重さを持つ、という考え方にゃ。
つらいとき、人はふつう、頼れる人のところへ行くにゃ。でも、その人が傷つけた本人だったら。
そばにいたい気持ちと、この人に傷つけられたという気持ちが、同じひとりに向かう。相手をまるごと悪者にしきれないとき、責める先が、自分のほうへ曲がってしまうのかもしれないにゃ。
232人は、付きあっている大学生だったにゃ。結婚して、暮らしをいっしょにしている人ではどうなのかにゃ。
2000年に発表されたアメリカの研究では、結婚している女性を2つのグループに分けて比べたにゃ。
最近、夫の浮気がわかったり、「別れる」と言われたりした25人。そうしたことのなかった25人。ふだんの夫婦仲のこじれ具合は、2つのグループで同じくらいだったにゃ。
それでも、出来事があった人たちのほうが、気分が深く沈んだまま抜けられない状態にある人が、ずっと多かったにゃ。もともと落ちこみやすかったかどうかを考えに入れても、変わらなかったにゃ。
別の研究でも、浮気された若い人たちの半分近くに、あの場面が何度も浮かぶ、いつも身構えてしまう、といった強い反応が出ていたにゃ。
けんかの延長でも、気にしすぎでもない。出来事そのものが重い、ということにゃ。
研究の大学生たちは、アンケートに答えながら、自分の気持ちをふり返ったにゃ。
いまの日本の暮らしでは、「私のせい」は、もっといろんな入口から入ってくるのかもしれないにゃ。
やっとの思いで打ち明けた相手に、そう聞かれることがあるにゃ。言った人に悪気はなくても、知りたかったのは「なぜ」なのに、返ってくるのは「あなたのここが」。
自分を責める気持ちを、外から足されてしまうのかもしれないにゃ。
研究の大学生は、「食べない」「お酒が増える」と答えていたにゃ。家族と暮らしていると、それはもっと目立たない形になるかもしれないにゃ。
子どもの夕飯は作るけれど、自分は台所で立ったまま少しつまむだけ。寝る前の一缶が増える。調査はそこまで聞いていないけれど、まわりも本人も気づきにくい形にゃ。
結婚していれば、子どもやお金や住まいがからんで、すぐには選べないにゃ。決められない自分を、また責めてしまうこともあるかもしれないにゃ。
でも研究では、別れた人と続けた人で、つらさの出方はほとんど変わらなかったにゃ。決めることより先に、いまのつらさを手当てしていいにゃ。
いまのあなたに、いちばん近いのはどれ?

浮気されたのに、
気づくと自分を責めている。
それは、あなたが弱いからでも、
悪かったからでもなくて、
それだけ深く
その人を信じていたから
かもしれないにゃ。
相手への怒りは、相手のほうを向いている。
「私が悪かった」は、
向く先が自分しかない。
それが、抜いた夕飯や、
寝る前に増えた一杯の形で
出てきていたのかもしれないにゃ。
その夕飯や一杯が何週間も戻らないなら、
もう体の手当ての話にゃ。
「食べられていない」「飲む量が増えた」と、
そのままお医者さんに話してほしいにゃ。
どうして責める先が
自分へ曲がるのかは、
アンケートからはわからないにゃ。
ねこたちの読みは、
いちばん話を聞いてほしい相手が、
いちばん話せない相手に
なってしまったから、というものにゃ。
あの夜の11時48分、
「彼、浮気してた」が届いた先も、
彼ではなく、友だちだったにゃ。
あの夜の、最初の一通にゃ。
「彼、浮気してた」。
主語は、彼だったにゃ。
次の一通で、それは
「私が忙しくて」に入れかわった。
ごはんやお酒にまで
しみ出していたのは、
この入れかわったほうの文だったにゃ。
「私のせい?」がまた浮かんだら、
文の頭をたしかめる。
友だちが「それはちがうでしょ」と
返したのも、
たぶん、その一語のところにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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