
…欲しい気持ちは、触れてからあとで湧くこともあるにゃ。
こんな気持ち、ないにゃ?
恋をしたら、
自然と「したい」と思うもの。
ドラマも漫画も、そう描いているにゃ。
だから、その気持ちが先に来ないと、
「愛が足りないのかな」
「私の体がおかしいのかな」
と思ってしまうにゃ。
ほんとうに、
欲しい気持ちはいつも先に来るものなのかにゃ。
リスボンの心理学者カルヴァレイラさんたち(2010年)は、ポルトガルの女性3,687人に、インターネットのアンケートで答えてもらったにゃ。
聞いたのは、性の触れ合いを始めるときに、欲しい気持ちがもうあるのか。体はどう反応するのか。空想はどのくらいするのか。
それを、いまの相手と長くつきあっている人と、つきあいがまだ短い人とで見比べたにゃ。
「欲しい気持ちがないまま始めることが多い」と答えた人が多かったのは、どちらだと思う?
長くつきあっている女性の4割あまりが、
欲しい気持ちがないまま
始めることが多い、と答えていた
長くつきあっている女性
恋のはじめのころは、会うだけで胸がさわいだのに、いまはそうでもない。それは、あなたひとりに起きていることじゃなさそうにゃ。
もうひとつ、気になる数字があるにゃ。体が反応しやすいと答えた女性たちのなかでも、「欲しい気持ちがあるときだけする」は15.5%。「たいてい、体が反応してから欲しくなる」は30.7%で、2倍ほどいたにゃ。
つまり、あとから欲しくなるのは、体の反応が鈍い人だけの話ではなかったにゃ。
研究者たちは、「欲が少ない」を不調と見るかどうか決めるときには、つきあいの長さや、相手の触れ方が足りているかどうかも考えに入れてほしい、と書いているにゃ。欲しい気持ちは、あなたひとりの中だけで決まるものではなさそうにゃ。
これを説明するのによく使われるのが、2000年に、カナダの性の医学の医師が示した考え方の図にゃ。人を集めて調べた研究ではなく、長い関係にある女性の反応を、こう描いてはどうかと示した論文にゃ。
でも、くっついていたい、相手を大事にしたい、ふたりの時間がほしい。そんな気持ちはあるにゃ。
安心できる場所で、ゆっくり触れていると、体が少しずつ反応してくるにゃ。
体の反応に気づいたところで、はじめて欲しい気持ちが追いついてくるにゃ。
長い関係では、胸のさわぎより、そばにいたい気持ちのほうが入り口になりやすい、という見方にゃ。研究の女性たちで、長くつきあっている人ほど「まだ欲しくない」から始めていたのとも、よく合うにゃ。
この考え方を一般の人に広めた本に、アメリカの性教育者エミリー・ナゴスキーさんの『Come As You Are』があるにゃ。
ナゴスキーさんは、先に「したい」が来る女性は15%ほど、あとから湧く女性は30%ほどで、残りの多くは、時と場合で両方がまざる、と見積もっているにゃ。人を集めて測った数字ではなく、本の書き手の見立てにゃ。
それでもこの本が多くの人をほっとさせたのは、どれかを正しい形にせず、どれもふつうの形として並べたからだと思うにゃ。
この研究より少し前、2007年の別の調査では、女性の看護師133人に、性の反応の流れを描いた3つの考え方を短い文で見せて、自分にいちばん近いものを選んでもらったにゃ。これまで教科書にあった2つと、「あとから湧く」考え方にゃ。
どの考え方を選んだ人も、ほぼ同じくらいずつ。
「あとから湧く」を選んだ人は、
欲求や興奮、満足などの点数が
ほかの人より低めだった
「女性はみんな、あとから湧く」とまでは言えなかったにゃ。先に「したい」が来る人も、ちゃんといるにゃ。
そして、あとから湧く型は、悩みをかかえている人の姿により近いのかもしれない、と研究者たちは見ているにゃ。
前は自分から欲しくなっていたのに、急に変わった。触れられること自体がつらい。そんなときは、気分の落ちこみや、産後・閉経の前後のホルモンの変化、飲んでいる薬などが関わっていることもあるにゃ。
女性の性の健康の専門家たちがまとめた手引きでも、まず体と気分のことを一緒に確かめるところから始めるにゃ。ひとりで決めつけずに、信頼できる専門家に話してみてにゃ。
研究の女性たちは、2010年ごろのポルトガルで、名前の出ないアンケートだから「欲しくないまま始めることが多い」と答えられたのかもしれないにゃ。
いまの日本の暮らしでは、そのことをだれにも、相手にも言わないまま、ふたりのすれ違いだけが起きていることがありそうにゃ。
洗い物の途中や、寝る前に聞かれたとき。あとから湧く人にとっては、その時点ではまだ何も始まっていないにゃ。「うーん…」は正直な答えで、相手を拒んでいる合図とはかぎらないにゃ。でも相手には「断られた」と聞こえやすいにゃ。
「その気になったら私から言うね」。やさしい約束のようで、ふと「したい」が来にくい人にとっては、その日はなかなか来ないにゃ。来なかったことを、あなたの愛情の量だと思わなくていいにゃ。
くっついて話す、肩をもむ。その先に進まなくていい触れ合いから入ると、気持ちがついてくる日もあるにゃ。ついてこない日は、そこでやめていいにゃ。「あとから湧くこともある」は、無理をする理由にはならないにゃ。
ふたりの触れ合いのはじまりについて、いまのあなたにいちばん近いのは?

「私、どこかおかしいのかな」。
そう思ったとき、さがす先は
たいてい自分の中にゃ。
愛情の量か、体のどこかか。
研究者たちのさがし先は、
もう少し広かったにゃ。
「欲が少ない」と決める前に、
つきあいの長さと、
相手の触れ方が足りているかも
考えに入れてほしい。
そう書いていたにゃ。
長くいっしょにいる人ほど
「まだ欲しくない」から始めていたのも、
気持ちが減ったというより、
入り口が変わったと読めるにゃ。
ただ、2007年の看護師たちの答えは、
3つの考え方に
ほぼ同じくらいずつ分かれていたにゃ。
先に「したい」が来る人も、ちゃんといた。
「あとから湧く」は、
いくつもある形のうちのひとつで、
みんなの正解ではないにゃ。
カナダの医師の図の、
いちばん上の箱にゃ。
「したい」は、まだない。
でも、
くっついていたい。
「したい?」と聞かれると、
この箱にいる人は答えにつまるにゃ。
そこには、まだ何もないから。
それが「くっついていたい?」なら、
「うん」と言える夜もある。
洗い物の途中でこぼれた「うーん…」にも、
ほんとうは「うん」がひとつ、
まざっていたのかもしれないにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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