
…浮気した本人たちに理由を聞くと、「自分」と「その場」の話がたくさん出てきたにゃ。
こんな話、聞いたことないにゃ?
浮気の話になると、
答えはだいたい2つに分かれるにゃ。
「ふたりの関係に何かあった」か、
「あの人の性格」か。
ほんとうに、そのどちらかなのかにゃ。
浮気の研究は、どんな人がしやすいかを外から数えるものが多かったにゃ。
アメリカの心理学者セルターマンさんたち(2019年)は、本人の口から聞いてみたにゃ。恋人がいるのに浮気をしたことのある495人に、「なぜだったのか」をたずねたにゃ。
集まったのは、大学生と、インターネットで呼びかけた人たち。平均20歳で、ほとんどが結婚していない若い大人だったにゃ。何を浮気とするかは本人にまかせたけれど、ほぼ全員が、体の関係のある浮気だったと答えたにゃ。
理由になりそうなことを77項目並べて、それぞれが自分にどのくらい当てはまったかを答えてもらったにゃ。いくつ選んでもいいやり方にゃ。
495人のうち、半分を超える人があげていた理由は、どれだと思う?
浮気の理由は、8つのまとまりに分かれた。
ふたりの関係の不満だけでなく、
本人の気持ちや、その場の状況の理由も
たくさんあげられていた
気持ちが冷めていた。かまってもらえなかった。相手への怒り。もともと本気じゃなかった。性生活への不満。「関係がうまくいっていないから浮気する」という、よく言われる形にゃ。
自分の価値を確かめたい。いろいろな人と関係を持ってみたい。それから、お酒が入っていた、旅先だった、ひどくストレスがたまっていた、というその場の状況。相手が誰であっても起きたかもしれない理由にゃ。
それぞれの理由がどのくらい強かったかを聞くと、本人とその場の理由のほうが、関係の理由より強く効いていたことも多かったにゃ。
男女で見ると、男性は「性」「いろいろな相手」「その場の状況」を、女性は「放っておかれた」を、あげやすかったにゃ。
暮らしの言葉にすると、浮気は、ふたりの関係の通知表とはかぎらない、ということにゃ。
ただ、これは本人が自分で語った理由にゃ。人は自分のしたことの理由を、いつも正しく言えるわけじゃないし、言い訳が混ざることもあるにゃ。そこは割り引いて読む必要があるにゃ。
手がかりのひとつは、心理学の「愛着」という考え方にゃ。大事な人との近さに、人それぞれの構えがある、という理論にゃ。見捨てられるのが怖くて近さを求めすぎる人もいれば、近づかれすぎると息苦しくなる人もいるにゃ。
この研究でも、そうした構えが揺れやすい人ほど、怒り・冷めた・放っておかれた・自信がほしい、を理由にあげやすかったにゃ。別の研究でも、見捨てられる不安が強い人は「近さ」を、近づくのが苦手な人は「自由」を、浮気の理由にしやすかったにゃ。
もうひとつは、たくさんの夫婦の相談を受けてきたカップルセラピストが、本(2017年)で示した見立てにゃ。
浮気で探しているのは、別の相手というより、毎日の中で見えなくなった別の自分なのかもしれない、というものにゃ。数えて確かめた研究ではないけれど、「自信がほしかった」をあげた人が半分を超えていたことと、重なって見えるにゃ。
「疲れると意志の力が尽きて、誘惑に負ける」という説も、一時はよく知られていたにゃ。でも、23の研究室で2,000人あまりを調べた大きな追試では、確かめられなかった説にゃ。
だから「意志が尽きたせい」とまでは言えないにゃ。言えるのは、お酒や強いストレスを、本人たちが「その場の理由」としてあげていた、というところまでにゃ。
それでも「やっぱり性格でしょ」と思う人もいるにゃ。
2017年に発表されたアメリカの研究は、18〜35歳の結婚していない大人484人を何年も追いかけて、ひとつ目の恋愛と、その次の恋愛を比べたにゃ。
年齢などのちがいを考えに入れても、前にした人のほうが、次もしやすかったにゃ。男女でも、結婚したかどうかでも、変わらなかったにゃ。
くり返しやすさは、たしかにあったにゃ。その人の構えや考え方も、効いているということにゃ。
でも裏返すと、前にした人の半分以上は、次の恋人のときにはしていなかったにゃ。性格か状況か、どちらか片方で決まるわけではなさそうにゃ。
研究の495人は、2017年ごろのアメリカの、20歳前後の若い人たちだったにゃ。
いまの日本で、結婚して何年もたった人の暮らしに置き換えると、どう見えるかにゃ。
日本ではよく聞く言葉にゃ。札を貼ると話が早く終わって、傷ついた心を守ってくれることもあるにゃ。
ただ、札だけで終わらせると、「自信がほしかった」「あの夜は飲みすぎていた」といった中身が見えなくなるにゃ。くり返しやすさはあっても、半分以上はくり返さなかった。札は、ひとりの人を言い当てるには大きすぎるのかもしれないにゃ。
研究の「その場の理由」は、お酒・旅先・強いストレスだったにゃ。日本の暮らしなら、年度末の飲み会の帰りや、ひとりで行く遠出の夜が近いかもしれないにゃ。
調査は日本のことまでは聞いていないけれど、自分が流されやすい夜を知っておいて、「二次会は行かない」「ふたりきりにならない」と先に決めておく人もいるにゃ。意志の強さより、状況の側を変えるやり方にゃ。
役割で呼ばれる日が続くと、自分そのものを見てもらえる場面は減っていくにゃ。そんなとき、誰かの「素敵ですね」が、思った以上に深くしみることがあるにゃ。
自信がほしい気持ちは、悪いものじゃないにゃ。それに気づいておくと、友だちや趣味、ふたりの会話など、ほかの場所で満たす道も選べるかもしれないにゃ。
浮気の話を聞いたとき、あなたの頭にまず浮かぶのはどれ?

「なぜ浮気したの?」と聞かれて、
いちばん言いやすい答えは、
たぶん「冷めていたから」にゃ。
関係のせいにすれば、
自分の話をしなくてすむ。
された側の「私が足りなかった」も、
同じ答えのほうへ手をのばしているにゃ。
ねこたちが意外だったのは、
本人の口から聞いても、
答えがそこに落ちつかなかったことにゃ。
半分を超える人があげたのは、
「自分に自信をつけたかった」。
もっと魅力的だと感じたい、認められたい。
人に話すには、ずいぶん
かっこうのつかない理由にゃ。
本人の語った理由には、
言い訳も混ざるにゃ。
ただ、言い訳が混ざるなら、
答えは言いやすいほうへ
寄りそうなものにゃ。
それでも「自信」が半分を超えたのは、
言いにくくても、本人には
そこに手ざわりがあったから
なのかもしれない。
数字が言っていることではなく、
495人の答えの並びを見た、
ねこたちの当て推量にゃ。
「もっと魅力的だと
感じたかった」。
その人が聞きたかったのは、
となりの人の声より、
だれかの拍手だったにゃ。
浮気の相手は、
その拍手の役を
していたのかもしれないにゃ。
ぜんぶの浮気がそうではないにゃ。
ただ、拍手がほしくなる理由は、
となりの人が何をしたかとは
べつのところで、
生まれていることも多かったにゃ。
「私じゃ、だめだったの?」の答えも、
たぶん、あなたの声のほうではなく、
向こうがほしがっていた拍手のほうにあるにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
📋 研究所のほかのレポートにゃ