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自己認知・自責

褒め言葉はすぐ消えるのに、一言の批判は何日も残るのはなぜ?

…届きにくいのは褒め言葉で、刺さるのは「当てはまらない」一言のほうだったにゃ。

この研究を一枚で
問い
自己肯定感の高さによって、褒め言葉と批判の受けとめ方はどうちがうのか
どこで
オランダで、18〜54歳の女性46人。うち14人は自己肯定感がとても低い範囲(van Schie ほか 2018)
どうやって
面接の録音を聞いた「別の参加者」からの評価として、褒める言葉・けなす言葉・どちらでもない言葉を45語、MRIの中で一語ずつ見せ、そのたびに気分を答えてもらった。あとで、それぞれの言葉が自分に当てはまるかも聞いた
わかったこと
自己肯定感が低い人ほど、批判で気分が下がり、とくに自分に当てはまらない批判で下がった。褒め言葉は高い人と同じように「当てはまる」と答えていたが、脳では「自分のこと」として受けとめるときに働く場所の反応が小さかった
その後の研究
46人・女性だけの研究で、研究者自身がもっと多くの人で確かめる必要があるとしている。2007年の研究では、恋人の褒め言葉を「なぜそう言ってくれたのか」と書くと、自己肯定感が低い人も、うれしさや安心が高い人と同じくらいになった

こんなこと、ないにゃ?

この前の資料、すごくわかりやすかったです!
いえいえ、全然です…!
(時間をかけすぎただけ。たまたまだし)

うれしいはずなのに、
その日の夜に思い出すのは、
別の人に言われた
「ちょっと細かすぎない?」のほう。

褒め言葉はすぐ消えて、
一言の批判は何日も残る。

褒め言葉を受け取れないのは、
自分がひねくれているからなのかにゃ。

🧪 研究 褒め言葉と批判は、どう届くか

46人の女性が、
MRIの中で受け取った
45の言葉

オランダのライデン大学で、心理学者のファン・スヒーさんたち(2018年)が、18歳から54歳の女性46人に協力してもらったにゃ。

自己肯定感の高い人から低い人まで幅広く集めていて、うち14人は、とても低い範囲だったにゃ。

まず、ひとりずつ面接で自分のことを話してもらう。その録音を「別の参加者の女性」が聞いて、あなたの印象を言葉で返してくれる、と伝えたにゃ。

ほんとうは、その女性は研究の協力者で、返ってくる言葉は前もって決まっていたにゃ。

MRIの中で、言葉が一つずつ届く。褒める言葉が15、けなす言葉が15、どちらでもない言葉が15。「明るい」「傲慢」「控えめ」のような、人柄を表す言葉にゃ。

一語ごとに、いまの気分を4段階で答えてもらったにゃ。終わってから、それぞれの言葉が自分に当てはまるかどうかも聞いたにゃ。

予想してみるにゃ

自己肯定感が低い人ほど、気分が下がったのは、とくにどの言葉のときだったと思う?

📊 結果の読み方 ① 刺さるほう

「それは私じゃない」を、
脇に置けない

📊 わかったこと

自己肯定感が低い人ほど、
批判やどちらでもない言葉のあとで気分が下がった。
とくに、自分には当てはまらない批判のあとで

自己肯定感が高い人の脳では、当てはまる批判と当てはまらない批判で、反応が分かれていたにゃ。当てはまる批判では、自分のことを思い返すときに働く場所がよく動き、当てはまらない批判では、あまり動かない。

研究者たちはこれを、合わない一言を「私のことじゃない」と仕分けている姿ではないか、と読んでいるにゃ。

低い人の脳では、この分かれ方がはっきりしなかったにゃ。当てはまっても、当てはまらなくても、批判は同じように受けとめられていた。

はじめの場面の「ちょっと細かすぎない?」も、自分では「ていねいにやっただけ」とわかっている。それなのに、夜まで頭から離れない。あの感じに近いのかもしれないにゃ。

📊 結果の読み方 ② 届きにくいほう

褒め言葉は、
頭では
受け取っていた

では、褒め言葉のほうはどうだったのかにゃ。

予想してみるにゃ

自己肯定感が低い人は、褒め言葉を「自分に当てはまる」と思っていた?

ちがっていたのは、脳の反応のほうにゃ。褒め言葉を受けたとき、自己肯定感が低い人ほど、「自分のこと」として考えるときに働く場所の反応が小さかったにゃ。

当てはまる褒め言葉のときには、「相手が何を思っているか」を考えるときに働く場所の反応も小さかったにゃ。

論文の題は「褒め言葉は当たらず、批判は当たるとき」。

相手を「お世辞だ」と疑っていた様子も見えなかったにゃ。むしろ低い人ほど、評価をくれた相手のことを好意的に見ていたにゃ。

頭では「そうかも」と思い、相手のことも悪く思っていない。それでも、褒め言葉が自分の中にしまわれにくい。そんな姿が見えてきたにゃ。

🤔 なぜ、そうなるのか

「自分はこういう人」の
地図が、
まだらだから?

研究者たちが手がかりにしているのは、「自分はこういう人」という、心の中の地図にゃ。

自己肯定感が高い人の地図は、輪郭がはっきりしていて、いいところがたくさん書きこまれている。だから合わない批判が来ても、「それはこの地図には載っていない」と言い返しやすいにゃ。

低い人の地図には、いいところと苦手なところが、まだらに、ぶつかり合うように書かれていることがある、と考えられているにゃ。そうすると、合わない批判も「もしかしたら、どこかに載っているかも」と、はねのけにくい。

褒め言葉のほうには、こんな説明が考えられているにゃ。高い人にとって、当てはまる褒め言葉は「この人はわかってくれている」という、つながりの合図にもなる。低い人には、その合図が届きにくいのかもしれない。

どちらも、まだ説の段階にゃ。

🔍 ほかの研究では

届きにくい褒め言葉を、
届かせるには

この研究は46人で、女性だけ。褒め言葉の脳の結果などは、研究者たち自身が「もっと多くの人で確かめる必要がある」と書いているにゃ。

一方で、届きにくい褒め言葉をどうしたら受け取れるのか、試した研究があるにゃ。

2007年、カナダで、恋人のいる大学生たちに、恋人に褒められたときのことを思い出してもらったにゃ。

半分の人には、何と言われたか、どこにいて、何を着ていたかを、くわしく書いてもらう。もう半分の人には、「相手はなぜ、あなたをすてきだと思ったのか。それはあなたにとって、ふたりにとって、どんな意味があるのか」を書いてもらったにゃ。

📊 わかったこと

「なぜ・どんな意味」を書いたあとは、
自己肯定感が低い人も、褒め言葉をうれしく感じ、
自分のこと、ふたりの関係のことも
高い人と同じくらい前向きに感じていた。
2週間後にも、その差は残っていた

褒め言葉を「言われた一場面」のままにせず、「相手は自分のどこを見てくれたのか」まで広げる。それだけで、受け取り方が変わったにゃ。

🎐 今に置き換えて考える

「いえいえ」が、
先に口から出る国で

2018年の研究はオランダ、2007年の研究はカナダだったにゃ。

2007年の研究では、アジア系の学生は分析から外されていたにゃ。自己肯定感の点が低めに出ていて、それが本当に自分を低く見ているからなのか、質問の受けとり方がちがうからなのか、わからなかったからにゃ。入れて分析しても、向きは同じで、少し弱めだったにゃ。

私たちの暮らしにいちばん近いところは、まだよく調べられていないにゃ。

その場で

「いえいえ、全然です」は、礼儀でもある

日本では、褒められたらいったん打ち消すのが、ていねいな返し方として身についている人が多いにゃ。研究では、自己肯定感の低い人も、褒め言葉を「当てはまる」と答えていたにゃ。口で打ち消すことと、心に届かないことは、別のことにゃ。ただ、毎回打ち消していると、どこまでが礼儀で、どこからが本音なのか、自分でもわからなくなるかもしれないにゃ。

その夜

持ち帰るのは、「当てはまらない一言」のほう

職場でも、家でも、保護者の集まりでも、私たちは一日に何度も、人から小さな評価を受け取るにゃ。研究で低い人にとくに重かったのは、自分では「違う」と思う批判だったにゃ。夜に思い出す一言があったら、「これは、私に当てはまる?」と一度だけ聞いてみる。高い人の脳がしていたらしい仕分けを、言葉でやってみる形にゃ。

残っている褒め言葉

引き出しの寄せ書きを、一枚だけ

異動や退職のときの寄せ書き、子どもや友だちからの手紙。日本の暮らしには、褒め言葉が紙で残る習慣があるにゃ。でも照れくさくて、しまったまま読み返さない人もいるかもしれないにゃ。2007年の研究のやり方を借りるなら、一枚だけ取り出して、「この人は、私のどこを見て、これを書いたんだろう」と考えてみる。何と書いてあるかより、なぜのほうにゃ。

あなたならどれ?

褒められたとき、いまのあなたの返し方に近いのはどれ?

🐱 猫の国の研究所より

研究所のねこたちが
二つの研究を並べてみたら

褒め言葉を受け取れない自分を、
ひねくれていると思ったことが
あるかもしれないにゃ。

研究の人たちは、
相手を「お世辞だ」と
疑ってはいなかった。
むしろ、届きにくい人ほど、
評価をくれた相手を
好意的に見ていたにゃ。

そのかわり、当てはまる褒め言葉のあとで
反応が小さかった場所のひとつは、
「相手が何を思っているか」を
考えるときに働く場所だったにゃ。

そして2007年の研究で
褒め言葉が届くようになったのは、
「相手はなぜ、そう思ったのか」を
書いたあとだったにゃ。

国も年もちがう二つの研究を
並べたのは、ねこたちの読みにゃ。
研究者たちが確かめたことじゃない。

それでも、こう見えたにゃ。
褒め言葉に足りなかったのは、
「私に、そんなところある?」の答えより、
「この人には、私がそう見えている」
のほうだったのかもしれない。

「すごくわかりやすかった」は、
あなたの採点じゃなくて、
あの人が読んだときの話にゃ。

「時間をかけすぎただけ」も
「たまたまだし」も、
打ち消しているのは、自分の点数のほう。

あの人が資料を開いて、
迷わずに読めたことは、
もう起きたことにゃ。

「いえいえ」と言ってしまった日も、
寄せ書きをしまったままの日も。

「なぜ、あの人はそう言ったんだろう」と
思い出したときが、
受け取るときにゃ。

…研究所のねこは、
「かわいいね」と言われると、
いつも「どこが?」という顔で
じっと見返してくるにゃ。🐾

📚 参考文献

この記事で紹介した研究

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van Schie, C. C., Chiu, C.-D., Rombouts, S. A. R. B., Heiser, W. J., & Elzinga, B. M. (2018). When compliments do not hit but critiques do: an fMRI study into self-esteem and self-knowledge in processing social feedback. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 13(4), 404-417. リンク
Marigold, D. C., Holmes, J. G., & Ross, M. (2007). More than words: Reframing compliments from romantic partners fosters security in low self-esteem individuals. Journal of Personality and Social Psychology, 92(2), 232-248. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com