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自己認識・自己評価

「私なんか」が口ぐせの私。これって、ただの自信のなさ?

…「大丈夫、あなたならできる」と言われると、かえって調子がくずれる人がいたにゃ。

この研究を一枚で
問い
「どうせうまくいかない」と低く見積もり、不安も強い人は、本番で力を出せないのか
どこで
アメリカの大学生。これまでの成績はよいのに、試験の前はいつも「今回はだめかも」と構える学生と、楽観的に構える学生(Norem & Cantor 1986)
どうやって
文字の並べかえなどの課題の前に、どのくらいできそうか・どのくらい不安かを聞き、出来を比べた。次の実験では、課題の前に半分の人だけを「この成績なら問題なくできるよ」と励ました
わかったこと
低く見積もる学生は、期待が低く不安も強かったが、出来は楽観的な学生と変わらなかった。ところが励まされると、励まされなかった同じタイプの学生より点が低かった
その後の研究
1996年の研究では、低く見積もる人は「失敗を立て直す自分」を思い描くと出来がよく、くつろぐ想像のあとでは悪かった。励ましの実験をまねた2009年の小さな研究では、同じ結果は出なかった

こんな会話、ないにゃ?

来週の試験、どう?
私なんか、どうせ落ちるよ〜
またそれ言ってる。前も受かったじゃん
今回はほんとにだめなんだって
(先に言っておかないと、落ち着かない)

「私なんか」「どうせ無理」。
気づいたら、口ぐせになっている。

「もっと自信持ちなよ」
「大丈夫だって」
と言われるほど、
なぜか胸がざわざわする。

この「私なんか」は、
ただの自信のなさなのかにゃ。

🧪 研究 「今回はだめかも」の学生たち

成績はいいのに、
いつも悪く見積もる人

アメリカの心理学者ノレムさんとカンターさん(1986年)は、大学生たちに前もって質問紙に答えてもらい、ふたつのタイプの学生を選び出したにゃ。

タイプ①

「今回はだめかも」と構える学生

これまでの成績はよい。それでも試験の前には、毎回「今度こそ失敗するかも」と考えて、不安になる。

タイプ②

「たぶん大丈夫」と構える学生

成績はよく、試験の前にも「いつもどおりやれば平気」と考える。

ノレムさんたちは、タイプ①のやり方を防衛的悲観と名づけたにゃ。

実験室で、文字を並べかえて言葉をつくる課題などに取り組んでもらう。その前に「どのくらいできそうか」「どのくらい不安か」を聞いて、実際の出来と比べたにゃ。

予想してみるにゃ

「今回はだめかも」と構えた学生の出来は、楽観的な学生と比べてどうだったと思う?

📊 結果の読み方

「どうせ落ちる」は、
当たらなかった

📊 わかったこと

「今回はだめかも」の学生は、
楽観的な学生より期待が低く、不安も強かった。
それでも、課題の出来に差はなかった

低い見積もりは、思ったとおりになる予言にはならなかった。強い不安も、出来を下げてはいなかったにゃ。

はじめの会話の「どうせ落ちるよ〜」も、口ではそう言いながら、ちゃんと受かってきた人の言葉なのかもしれないにゃ。

ノレムさんたちは、こう考えたにゃ。この人たちにとって、低い見積もりは弱気ではなく、不安とつきあうための作戦なのでは。

それなら、その作戦をじゃましたら、どうなるか。次の実験で、確かめたにゃ。

🧪 研究 その2 励ましてみたら

「この成績なら、
問題なくできるよ」

次の実験でも、同じふたつのタイプの学生に来てもらったにゃ。課題は、文字の並べかえとパズル。

始める前に、それぞれに大学での成績を聞く。そして半分の人にだけ、実験する人がこう声をかけたにゃ。

「この成績なら、問題なくできると思いますよ」

もう半分の人には、何も言わなかったにゃ。

予想してみるにゃ

励まされた「今回はだめかも」の学生は、励まされなかった同じタイプの学生と比べてどうだったと思う?

📊 わかったこと

「今回はだめかも」の学生は、
励まされると、励まされなかったときより点が低かった。
楽観的な学生には、同じことは起きなかった

同じ「大丈夫」の一言が、ある人には追い風、ある人には向かい風になる。

「大丈夫だって」と言われるほど落ち着かなくなるのは、あなたが気むずかしいからではないのかもしれないにゃ。

🤔 なぜ、そうなるのか

低い見積もりは、
クッションで、
エンジンでもある?

ノレムさんたちの説明はこうにゃ。

先に低く見積もっておけば、うまくいかなくても落ち方がやわらぐ。クッションにゃ。そのうえで「何がまずくなりうるか」を頭の中で一つずつなぞり、不安を準備に変えていく。

では、なぜ励ましでくずれるのか。説明の候補はふたつあるにゃ。

ひとつは、「大丈夫」で不安がしぼんで、準備に向かう力まで止まってしまう、という説明。もうひとつは、「できるはず」と期待を上げられて、クッションがなくなり、不安が手に負えなくなる、という説明。どちらなのかは、まだはっきりしていないにゃ。

「先に自分を下げておく」を、心の守りとして見る考え方もあるにゃ。人から下げられる前に自分で下げておけば、痛みが少なくてすむ。臨床の世界で昔から語られてきた見立てで、数えて確かめた結果というより、ひとつの見方にゃ。

ノレムさんはのちに一般向けの本も書いて、不安の強い人に「前向きに」とすすめるより、不安の使い道を見つけるほうが合う人もいる、と書いているにゃ。

🔍 その後の研究

うまくいく想像より、
立て直す想像

1996年の研究では、ふたつのタイプの学生を3つのグループに分けて、課題の前に、それぞれちがう想像をしてもらったにゃ。

失敗して、それを立て直す自分。何もかも完璧にこなす自分。力をぬいてくつろぐ場面。

予想してみるにゃ

「今回はだめかも」の学生の出来がいちばんよかったのは、どの想像のあと?

そして「完璧にこなす自分」の想像は、どちらのタイプにとってもいちばん出来が悪かったにゃ。

合う準備のしかたは、人によってちがう。「くつろいで」が合う人もいれば、「心配を全部並べて」が合う人もいるにゃ。

ただ、励ましで点が下がる結果は、2009年にアメリカの大学で同じような実験をした小さな研究では、出てこなかったにゃ。1986年の研究も、大学生が実験室で課題を解く場面のもの。大人の暮らしの「私なんか」を、まるごと調べたわけではないにゃ。

🧺 今に置き換えて考える

試験のない毎日にも、
「本番」はある

研究で調べたのは、大学生が試験や課題に向かう場面だったにゃ。

大人になると、点数の出る試験は減る。でも「私なんか」が口から出る場面は、むしろ増えるのかもしれないにゃ。

出す前に

「お口に合うかわからないけど」のあとで

手料理を出すとき、作った資料を見せるとき、先にひとこと自分を下げておく。研究の低い見積もりと同じ形にゃ。研究の学生とつながるのは、そのあとのほう。前置きしながら、もう一度味見をしている人は、不安を準備に回しているのかもしれないにゃ。

そばにいる人

「大丈夫だって」の代わりに

家族や友だちが「私なんか無理」と言うと、つい「大丈夫、あなたならできる」と返したくなるにゃ。日本では「がんばって」も、別れぎわのあいさつのように交わされる。でも研究の学生には、その一言がじゃまになることがあった。「どこがいちばん心配?」と聞いて、心配をいっしょに並べるほうが、合う人もいるかもしれないにゃ。

自分の中で

「私なんか」のあとに、何が続く?

「私なんか無理。だから、ここを確かめておこう」と続くなら、研究の学生のやり方に近いにゃ。「私なんか無理。だから、やめておこう」と続くことが多いなら、それは研究で調べたのとは別の道。調査はそこまで聞いていないけれど、口ぐせは同じでも、そのあとの一歩で行き先が分かれるのかもしれないにゃ。

あなたならどれ?

大事なことの前、いまのあなたに近いのはどれ?

🐱 猫の国の研究所より

ここからは、
研究所の考察にゃ。

「この成績なら、
問題なくできると思いますよ」。

たったそれだけの声かけで、
点が下がった学生たちがいたにゃ。

「大丈夫」は、ふつうはやさしい言葉にゃ。
でも、心配を全部並べてから
本番に向かう人にとっては、
並べている途中で
片づけられてしまう言葉にもなる。

だとすると、「私なんか」は、
自信のなさの告白というより、
「これから心配を並べるところ」の
合図なのかもしれないにゃ。

もちろん、そう読めない日もある。
不安が大きすぎて、
並べる前に手が止まる日もある。
そういう日の「私なんか」は、
合図というより、
ため息に近いのかもしれないにゃ。

「私なんか」の次に、
「…で、何がいちばん心配?」と
ひとことつづけてみる。

研究所でいちばん心配性のねこは、
出かける前に、
しっぽの先まで三回たしかめるにゃ。

それで、いちばん遠くまで
散歩に行けるのも、そのねこにゃ。

📚 参考文献

この記事で紹介した研究

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Norem, J. K., & Cantor, N. (1986). Defensive pessimism: Harnessing anxiety as motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 51(6), 1208-1217. リンク
Spencer, S. M., & Norem, J. K. (1996). Reflection and distraction: Defensive pessimism, strategic optimism, and performance. Personality and Social Psychology Bulletin, 22(4), 354-365. リンク
Parra, E. L. (2009). The effect of encouragement on defensive pessimism as an anxiety amplifier (Honors thesis). Vanderbilt University. リンク
Norem, J. K. (2001). The Positive Power of Negative Thinking: Using Defensive Pessimism to Manage Anxiety and Perform at Your Peak. Basic Books.
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com