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家族・親子

"私がしっかりしなきゃ"は、ずっと前に"名指し"されていた?

…母親たちに「いざというとき、どの子が見てくれる?」と聞いて、7年待った研究があるにゃ。

この研究を一枚で
問い
年をとった親の世話を、きょうだいのうちだれが引き受けるのか。それは前もってわかるのか
どこで
アメリカ・ボストン近郊の、65〜75歳だった母親139人と、その子ども537人(Pillemer & Suitor 2014)
どうやって
母親に「病気になったら、毎日の世話をいちばんしてくれそうな子」を聞き、7年後に、実際に世話をしてくれた子を聞いた。子どもごとの事情(娘か息子か・住まいの近さ・仲のよさ・それまでの手伝い・結婚・仕事・子ども)とくらべた
わかったこと
7年前に名指しされた子は、世話役になる見込みが約3倍だった。近くに住む子・娘もなりやすかった。結婚・仕事・子育て、仲のよさ、それまでの手伝いでは、はっきりした差がなかった
その後の研究
3か国の2万人あまりを調べた研究(2015年)では、生まれ順によって、まじめさなどの性格に差は出なかった

こんな一言、
言われたことないにゃ?

お母さんね、何かあったら、あんたに頼もうと思ってるの
姉ちゃんが近くにいるから、こっちは安心だよ
来週の検査の日、ついてきてもらえる?
(…まあ、私がしっかりしなきゃね)

まだだれも倒れていないのに、
いつのまにか「見る人」が
決まっている。

ネットでは「長女症候群」という言葉も
よく見かけるにゃ。
上の子だから、女の子だから、
しっかりするように生まれついた?

「しっかり者」は、
どこで決まるのかにゃ。

🧪 研究 「いざというとき」の、その後

139人の母親に、
7年あけて
2回聞いた

家族の研究をしているピレマーさんとスーターさん(2014年)は、ボストンの近くに住む65〜75歳の母親たちに、子ども一人ひとりのことを聞いたにゃ。1回目は2001〜03年。

そのなかに、こんな質問があったにゃ。「もしあなたが病気になったり、体が不自由になったりしたら、毎日の世話をいちばんしてくれそうなのは、どの子?」

ほかにも、娘か息子か、近くに住んでいるか、どのくらい仲がいいか、それまで家事や看病を手伝ってくれていたか。結婚や仕事、子どもがいるかも聞いたにゃ。

そして7年後(2008〜11年)。大きな病気やけがをしたり、日々の暮らしに助けが要るようになったりした母親たちに、実際に世話をしてくれたのはどの子かを聞いたにゃ。くらべたのは、139人の母親の子ども、537人にゃ。

予想してみるにゃ

7年後、実際に世話をした子を、よく言い当てていたのはどれだと思う?

📊 結果の読み方

「この子が見てくれる」は、
7年前から
当たっていた

📊 わかったこと

7年前に母親が名指しした子は、
ほかのきょうだいより、
世話役になる見込みが3倍ほど高かった。

近くに住む子、娘も、なりやすかった。

結婚・仕事・子育てがあっても、
見込みはほとんど変わらなかった。

名指しされたのは、まだ母親が元気なころにゃ。助けが要るようになる5〜7年も前の一言が、そのまま当たっていた。研究者たちも「おどろくほど正確」と書いているにゃ。

もうひとつ目をひくのは、忙しさが数に入っていなかったことにゃ。仕事があっても、子育て中でも、世話役になる見込みは変わらなかったにゃ。

世話役は、手が空いている子にまわってくるものじゃなかった。前から「この子」と思われていた子に、そのまま届いていたにゃ。

🤔 なぜ、名指しが当たるのか

話し合わなくても、
みんな知っている?

名指しが当たったわけは、この研究だけでは分けきれないにゃ。母親が、もともと頼りになる子を見抜いていたのかもしれない。名指しされたから、その子が引き受けたのかもしれない。たぶん、両方が混ざっているにゃ。

そのうえで、いくつかの見方があるにゃ。

説明①

口に出さない了解

研究者たちは、家族ではっきり話し合っていなくても、親と子は「だれが見るか」をなんとなく分かち合っている、と見ているにゃ。子どもの側も、親が自分に何を期待しているかを、たいてい知っている。言われていない約束ほど、断りにくいのかもしれないにゃ。

説明②

家族の中には「役」がある

家族療法の考え方(家族システム論)では、家族の一人ひとりに、しっかり者・なだめ役・お調子者のような役ができて、それで家全体のつり合いが保たれる、と見るにゃ。役を降りようとすると、本人も落ち着かないし、まわりも元の形に戻そうとする。臨床家たちが家族を見てきて組み立てた見立てで、人数を数えて確かめたものではないにゃ。

2007年には、この家族システム論と愛着の理論を合わせて、子どもが親の役まで引き受けてしまう「親子の役割逆転」を説明しようとした、理論の論文も出ているにゃ。

世話をしていないと、かえって落ち着かない。そんな姿は、愛着の研究で知られる精神科医ボウルビィも臨床の観察から書き残していて、研究所の別の記事でくわしく読めるにゃ。

🔍 その後の研究

「長女だからしっかり」は、
数えると出なかった

「長女症候群」は、ここ数年SNSで広まった言葉にゃ。上の娘が家族の世話を背負いこむ、という話で、うなずく人も多いにゃ。ただ、研究でつけられた名前ではないにゃ。

生まれ順と性格については、2015年に大きな調べものがあるにゃ。アメリカ・イギリス・ドイツの3つの大きな調査、あわせて2万人あまりの答えを使って、同じ家のきょうだいどうしもくらべたにゃ。

📊 わかったこと

きちんと・まじめに取り組む性格(誠実性)に、
生まれ順による差は出なかった。

外向性、気持ちの安定、人あたりのよさも同じ。
差が出たのは、「自分は頭がいい」と思う度合いが、
上の子ほどほんの少し高いことだけだった。

長女に限って調べたものではないけれど、上の子が生まれつき「しっかり」しているわけではなさそうにゃ。

さっきの研究で効いていたのは、娘であること、近くに住んでいること、名指しされていること。しっかり者を作っていたのは、生まれ順より、まわりの期待とその家の事情のほうかもしれないにゃ。

ただ、さっきの研究は母親の答えだけで、子どもの側には聞いていないにゃ。母親たちには、平均4人の子がいた。研究者たち自身も、きょうだいが少なく、娘も外で働くのがふつうの世代では、形が変わるかもしれないと書いているにゃ。

🏠 今に置き換えて考える

「何かあったら頼むね」は、
元気なうちに言われる

研究の母親たちは、4人きょうだいを育てた世代だったにゃ。名指しされても、ほかにきょうだいが3人いた。

いまの日本では、2人きょうだいや、ひとりっ子もめずらしくないにゃ。

きょうだいが少ないと

名指しが、ひとりに集まる

研究では、きょうだいが多い家ほど、一人ひとりが世話役になる見込みは下がっていたにゃ。裏を返すと、少ない家では、名指しがひとりに集まりやすいのかもしれないにゃ。ひとりっ子なら、言われる前から決まっていると感じている人もいそうにゃ。

名指しは

冗談の顔をしてやってくる

「あんたは近くにいるから」「お姉ちゃんがいれば安心」。お正月の集まりや、電話の切りぎわの一言。研究の母親たちも、子どもにはっきり頼んだとは限らないにゃ。調査はそこまで聞いていないけれど、言われた側だけが覚えていて、ほかのきょうだいは聞き流している、ということもありそうにゃ。

ためせること

元気なうちに、当番表を書いてみる

研究者たちは、親の期待を家族で口に出して話すことをすすめていたにゃ。「全部」ではなく、「病院の日はわたし、書類は弟、週1の電話は妹」と分けてみる。

仕事や子育てで手いっぱいなことも、表に書いておけば、家族の目に入りやすくなるにゃ。

あなたならどれ?

「何かあったら、あなたに頼むね」。そう言われたら、いまのあなたはどう感じそう?

🐱 猫の国の研究所より

ここからは、
研究所の考察にゃ。

母親が「この子」と答えたとき、
まだだれも倒れていなかったにゃ。

そのあと、名指しされた子が
仕事をはじめても、子どもを持っても、
見込みはほとんど動かなかった。
一言のほうが、暮らしの事情より
長持ちしていたにゃ。

生まれ順でくらべると、
まじめさの差は出なかった。
名指しでくらべると、
3倍の差が出た。

「しっかり者」は、性格の名前というより、
ずっと前に貼られた
当番の札に近いのかもしれないにゃ。

見えたのは、母親たちの答えからだけ。
札を貼られた側の声は、
この研究では数えられていないにゃ。

札なら、書きかえられるにゃ。

自分で選んで引き受ける人もいるし、
それもひとつの立派な答えにゃ。
ただ、札を貼られたことに
気づかないまま背負うのと、
気づいたうえで持つのとでは、
同じ荷物でも、重さがちがう気がするにゃ。

当番は、
回すためにあるにゃ。

小学校の給食当番も、日直も、
同じ子がずっとやることは
なかったにゃ。
黒板のすみの日直の名前は、
毎朝だれかが書きかえていた。

あなたの家の黒板には、
いつから同じ名前が
書いてあるのかにゃ。

📚 参考文献

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Pillemer, K., & Suitor, J. J. (2014). Who provides care? A prospective study of caregiving among adult siblings. The Gerontologist, 54(4), 589-598. リンク
Rohrer, J. M., Egloff, B., & Schmukle, S. C. (2015). Examining the effects of birth order on personality. Proceedings of the National Academy of Sciences, 112(46), 14224-14229. リンク
Hooper, L. M. (2007). The application of attachment theory and family systems theory to the phenomena of parentification. The Family Journal, 15(3), 217-223. リンク
Bowlby, J. (1980). Attachment and Loss: Vol. 3. Loss: Sadness and Depression. Basic Books.
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com