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暮らしのふしぎ

朝のゴロゴロを、どうしても無視できないのはなぜ?

…ごはんをねだるゴロゴロには、赤ちゃんの泣き声に近い高さの音がまざっていたにゃ。

この研究を一枚で
問い
猫がごはんをねだるときのゴロゴロは、ふだんのゴロゴロとちがって聞こえるのか
どこで
イギリスで、飼い主が家で録った猫10匹のゴロゴロを、50人に聞いてもらった(McComb ほか 2009)
どうやって
ごはんをねだるときと、それ以外のときのゴロゴロを同じ音量にそろえて聞かせ、急いでいる感じと心地よさを答えてもらった。音の中身も分析した
わかったこと
ねだるときのゴロゴロは、より急いでいて、心地よくないと聞かれた。猫と暮らしたことがない人も同じだった。低いゴロゴロの中に赤ちゃんの泣き声に近い高さの音がまざっていて、それを消すと急いでいる感じは弱まった
その後の研究
2023年、取り出した猫ののどに空気を通すだけで、ゴロゴロの低さのふるえが出た。ゴロゴロは「ニャー」と近いしくみで出ているらしい

こんな朝、ないにゃ?

5:40
ゴロゴロゴロゴロ…(耳のすぐ横で)
まだ目覚まし鳴ってないよ…あと10分
ゴロゴロゴロ…(さっきより近い)
(…わかった。起きる。起きます)

夜、膝の上で聞くゴロゴロは、
いつまでも聞いていたくなる。

なのに朝のゴロゴロは、
なぜか気になって、もう眠れない。

同じゴロゴロのはずなのに、にゃ。

🧪 研究 ねだるゴロゴロ

毎朝起こされた研究者が、
ゴロゴロを録りはじめた

イギリスのサセックス大学のマコームさんは、ゾウやライオンの声を調べてきた研究者にゃ。

きっかけは、自分の猫のペポ。毎朝、しつこいゴロゴロで起こしにくるにゃ。ほかの飼い主に聞いてみると、同じ朝を送っている人がほかにもいたにゃ。

ただ、録るのがむずかしかったにゃ。猫は知らない人が来ると、だまるか、どこかへ行ってしまう。そこで飼い主に録音のしかたを教えて、家で録ってもらったにゃ。

集まったのは10匹の猫の、ごはんをねだるときのゴロゴロと、それ以外のとき(くつろいでいる・なでられている)のゴロゴロ。音量をそろえて、50人に聞いてもらったにゃ(2009年)。

予想してみるにゃ

ごはんをねだるときのゴロゴロを、人はどう聞いたと思う?

📊 結果の読み方

ゴロゴロの中に、
小さな泣き声が
まざっていた

猫と暮らしている人のほうが、聞き分けは少しだけうまかったにゃ。でも、ちがいはだれの耳にも届いていたにゃ。

音を調べると、ちがいのもとが見つかったにゃ。

ふだんのゴロゴロ

とても低い、ふるえの音

1秒に25回ほどふるえる、とても低い音にゃ。

ねだるゴロゴロ

低い音の上に、高い音がひとすじ

220〜520Hzあたりに、「ニャー」に近い高い音が重なっていたにゃ。これが強いゴロゴロほど、急いでいて心地よくないと聞かれたにゃ。

人の赤ちゃんの泣き声

ちょうど、同じくらいの高さ

研究者たちは、この高い音が、赤ちゃんの泣き声の高さと近いことに気づいたにゃ。

さいごに、録ったゴロゴロからその高い音だけを消して、ほかはそのままにして聞いてもらったにゃ。すると、急いでいる感じははっきり弱まったにゃ。

猫は鳴いていない。でもゴロゴロの中に、小さな泣き声をしのばせていた。朝のあなたが起きてしまうのは、それを聞きとる耳が、ちゃんと働いているからかもしれないにゃ。

🤔 なぜ、泣き声をまぜるのか

「ニャー」より、
追い出されにくい

研究者たちの見立てはこうにゃ。人もほかの多くのけものも、子どもの泣き声にはとても敏感にできている。ねだるゴロゴロは、その耳にそっと訴えかけている。

マコームさんは、こんなふうにも話しているにゃ。「はっきりニャーと鳴けば、寝室から追い出されかねない。ゴロゴロのおねだりのほうが、人には受け入れられやすいのだろう」。

高い音は、ふつうのゴロゴロにも少しだけ入っているらしいにゃ。それを、効いたときに大きくしていくことを、猫が覚えるのではないか、と研究者たちは考えているにゃ。

だから、ねだるゴロゴロを使わない猫もいるにゃ。よく使うのは、飼い主と一対一で暮らしている猫らしいにゃ。人の多い家では、ゴロゴロは聞きのがされやすいので、ふつうに鳴くほうが早いのだろう、と研究者は話しているにゃ。

そもそも、猫がなぜゴロゴロするのかは、まだ全部はわかっていないにゃ。うれしいときだけでなく、緊張しているときや、具合が悪いときにも鳴らすことがあると言われているにゃ。ゴロゴロは「しあわせ」の合図というより、近くにいる相手への合図に近いのかもしれないにゃ。

🤔 もうひとつの説

ゴロゴロで、
骨が治る?

「猫のゴロゴロは骨を治す周波数」という話を、聞いたことがあるかもしれないにゃ。

もとは、2001年にアメリカの音響の学会で出された、短い発表にゃ。イエネコやサーバル、オセロット、ピューマのゴロゴロを録って、どれも低い音だとたしかめた研究者が、問いを立てたにゃ。題には「?」がついていたにゃ。

💡 ゴロゴロ=からだのお手入れ説

ゴロゴロの低い音は、
骨や筋肉に振動をあてる研究で
使われてきた高さと重なる。

ゴロゴロは、猫が自分のからだを
いたわるためのものでもあるのでは?

振動と骨の研究は、たしかにあるにゃ。羊の後ろ脚に、1日20分、1秒に30回ほどのごく弱い振動を1年あてると、太ももの骨の中のスポンジのような部分が、あてなかった羊より密になっていたにゃ。これは羊の研究にゃ。

でも、猫が自分のゴロゴロで骨を治しているかを確かめた研究は、まだないにゃ。「骨を治すのにいちばん効く周波数」も見つかっていないにゃ。

それに、病院で骨折に使う超音波の機械は、1秒に150万回ふるえる音。1秒に25回ほどのゴロゴロとは、まるで別のものにゃ。

ゴロゴロのお手入れ説は、いまも確かめられていない、楽しい問いのままにゃ。

🔍 その後の研究

ゴロゴロは、
「ニャー」のおとなりだった

ゴロゴロがどうやって鳴っているのかも、長いあいだの謎だったにゃ。

よく言われてきたのは、脳が1秒に20〜30回の合図を出して、のどの筋肉をぴくぴく動かしている、という説明。ふつうの鳴き声とはまったく別のしくみだと考えられてきたにゃ。

2023年、ウィーンの研究者たちが、重い病気で亡くなった猫8匹の、のどの声を出す部分を取り出して、空気を通してみたにゃ。脳からの合図は、もう届かないにゃ。

それでも、8匹ぶんのどれもが、ゴロゴロと同じ1秒に25〜30回ほどでふるえたにゃ。声を出すひだの中に、直径4ミリほどまでのやわらかいかたまりがあって、それが低い音を出しやすくしているらしいにゃ。

筋肉の動きが手伝っている可能性は、まだ残っているにゃ。それでもゴロゴロは、「ニャー」と同じのどの、同じようなしくみで鳴っているらしい。

ゴロゴロに「ニャー」が重なるのも、ふしぎではないのかもしれないにゃ。

🏠 今に置き換えて考える

研究者が苦労して録った音を、
いまは枕もとで録れる

2009年のイギリスでは、猫のゴロゴロを集めるだけで、飼い主に録音機の使い方を教えるところから始めなければならなかったにゃ。

いまの日本の暮らしに置き換えると、こんなことが見えてくるにゃ。

ひとりと一匹

ゴロゴロは、まっすぐあなたに向かう

ねだるゴロゴロをよく使うのは、一対一で暮らす猫だったにゃ。ひとり暮らしで猫と住む人なら、朝ごはんを出せるのはあなただけ。家族と住む家では、いちばん先に起きそうな人の枕もとを、猫はちゃんと選んでいるのかもしれないにゃ。

スマホがある

朝と夜のゴロゴロを、録って聞き比べる

研究と同じことが、いまは手もとでできるにゃ。朝のねだるゴロゴロと、夜になでているときのゴロゴロを録って、並べて聞いてみる。高い音がひとすじ聞こえるかは、猫によってちがうはずにゃ。

動画のゴロゴロ

猫がいなくても、ゴロゴロを聞く

猫と暮らしていない人が、眠る前にゴロゴロの動画を流すこともあるにゃ。研究では、猫と暮らしたことがない人も、ねだる音を聞き分けていたにゃ。ほっとしたい夜には、ごはん前ではない、のんびりしたゴロゴロのほうが向いているかもしれないにゃ。

あなたならどれ?

朝5時40分、耳もとでゴロゴロがはじまった。あなたなら?

🐱 猫の国の研究所より

ここからは、
研究所の考察にゃ。

録ったゴロゴロから、
高いひとすじだけを消す。
それだけで、急いでいる感じは
はっきり弱まったにゃ。

朝の、気になって眠れないあの感じは、
ゴロゴロ全部ではなく、
その細いひとすじに
乗っていたのかもしれないにゃ。

朝のゴロゴロは「おなかがすいた」。
そこに、小さな泣き声がまぜてある。

だとしたら、夜、膝の上で
高い音のまざらないゴロゴロが
続いているときは、
「いまは、なにもいらない」
と言っているのかもしれないにゃ。

膝の上のゴロゴロにほっとするのは、
なにも頼まれていないから。
そんなふうに聞いてみるのも、
ひとつの楽しみ方にゃ。

今夜なでるときは、
低い音の上に、高いひとすじが
入っていないか、
耳をすませてみてにゃ。

毎朝起こされた研究者が、
たどりついた答えにゃ。

朝のゴロゴロは、
泣き声入りの
おねがいだったにゃ。

この論文のおしまいには、
録音に協力した猫たちの名前が
並んでいるにゃ。

アーチー、クライド、マーブルズ、
モジョ、ソックス。
それから、ペポ。

そのあとに、もうひと言。
「…と、がまん強い
その飼い主たちに感謝します」。

ねだられながら録音ボタンを押した人たちにも、
ちゃんとお礼が書いてあったにゃ。⏰

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McComb, K., Taylor, A. M., Wilson, C., & Charlton, B. D. (2009). The cry embedded within the purr. Current Biology, 19(13), R507-R508. リンク
Herbst, C. T., Prigge, T., Garcia, M., Hampala, V., Hofer, R., Weissengruber, G. E., Svec, J. G., & Fitch, W. T. (2023). Domestic cat larynges can produce purring frequencies without neural input. Current Biology, 33(21), 4727-4732. リンク
von Muggenthaler, E. (2001). The felid purr: A healing mechanism? Journal of the Acoustical Society of America, 110(5_Supplement), 2666.(学会発表の抄録) リンク
Rubin, C., Turner, A. S., Bain, S., Mallinckrodt, C., & McLeod, K. (2001). Anabolism: Low mechanical signals strengthen long bones. Nature, 412(6847), 603-604. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com