
…顔のよさは見えているのに、なぜか粗が先に浮かぶ。そのわけを、のぞいてみたにゃ。
友だちから、
こんなLINEが来たことないにゃ?
顔がいいのは、わかっている。
なのに、なぜか先に粗が見えてくる。
恋人がいるときほど、
ほかの人がこう見えること、
ないにゃ?
心理学者のジョンソンさんとラスバルトさん(1989年)は、アメリカのケンタッキー大学で、恋人がいる学生278人に協力してもらったにゃ。
「大学で出会いのサービスを始めるかもしれないので、意見を聞きたい」という設定にゃ。
見せたのは、異性の「早めの申込者」の写真と申込書。申込書の性格や趣味は全員同じで、写真だけを変えたにゃ。とても魅力的な人、ふつうの人、あまり魅力的でない人の3通りにゃ。
申込者は、本当はいない、作られた人だったにゃ。
答え方も2通りにしたにゃ。
・「あなた自身の気持ちで。サービスに参加したら、相手選びに使います」
・「ふつうの学生ならどう思うかで」
それから、いまの恋人と「この先も」と思う気持ちの強さも聞いたにゃ。ここでは、本気度と呼ぶにゃ。
本気度がいちばん高い人たちは、とても魅力的な申込者を自分の目で見て、「この人とつき合ったら満足できそう」をどのくらいにつけたと思う?
本気度が高い人ほど、とても魅力的な申込者を
自分の目で見たときに、低くつけた。
下がったのは「満足できそう」だけでなく、
「誠実そう」「浮気しなさそう」「支えてくれそう」まで
参加した人たちがつけた「見た目」の点は、写真どおりにちゃんと分かれていたにゃ。きれいな人は、きれいに見えている。
それでも、「この人と過ごしたら楽しそう」「ほかの人にちょっかいを出さなさそう」と、会ったこともない人の中身のほうが、低く見積もられていたにゃ。冒頭の「なんか遊んでそう」は、まさにこの形にゃ。
もうひとつ、研究者たちが調べたことがあるにゃ。下げ方とつながっていたのは、いまの恋人への「満足」より、「この先も」の本気度のほうだったにゃ。
好きかどうか、満ち足りているかどうかより、「この人とやっていく」と決めている気持ち。そちらのほうが、ほかの人の見え方を動かしていたようにゃ。
同じ論文には、つき合いはじめて間もない大学生34人を、7か月ほど追いかけた調査もあったにゃ。くり返し、「恋人のほかに、つき合えそうな人たちはどれくらい魅力的?」とたずねたにゃ。
はじめは、どちらも真ん中の5くらいだったにゃ。続いた人は下がり、別れた人は少し上がっていったにゃ。
ただ、どちらが先なのかは、この調査ではわからないにゃ。ほかの人がよく見えてきたから離れたのか。気持ちが離れてきたから、ほかの人がよく見えたのか。研究者たち自身も、逆の順番はありうると書いているにゃ。
「この人を大事にしている私」と「あの人に惹かれている私」。ふたつが心の中でぶつかると、居心地が悪いにゃ。
いちばん手早くおさめるのは、あの人のほうを下げること。「きっと浮気するタイプ」と思えば、ぶつからなくなるにゃ。
満ち足りた関係にいると、それがものさしになって、ほかの人がふつうに見える。見え方そのものが変わる、という説明にゃ。
研究者たちは、①のほうがよく合うと考えたにゃ。ものさしの話だけなら、どの申込者も同じだけ下がるはず。でも実際は、魅力的な人ほど大きく下がっていたにゃ。ぶつかりが大きい相手ほど、強く下げていた、ということにゃ。
ただ、研究者たちは別の読み方も正直に挙げていたにゃ。サービスで本当に紹介されないように、わざと低くつけた人もいたかもしれない。会わないのは、誘惑のいちばん確かな避け方だから、にゃ。
心が勝手に下げたのか、自分で選んで下げたのか。この実験では、そこまでは分けられていないにゃ。
この研究には、残った疑問があったにゃ。本気度の高い人が下げたのか。それとも、本気度の低い人が上げたのか。点の差だけでは、どちらとも読めるにゃ。
2003年に、カナダの研究者たちがこれを確かめたにゃ。恋人のいない人と、恋人がいる人に、魅力的で、いま相手のいない異性を見せて、恋の相手としての魅力を「自分の目で」か「友だちの目で」つけてもらったにゃ。
恋人のいない人や、本気度の低い人は、
自分の目で見ても、とくに高くはつけなかった。
本気度の高い人だけが、
自分の目で見たときに、低くつけた
上げていたのではなく、下げていた。「友だちから見ればいい人」と「私から見れば、ない」は、同じ心の中で並んでいられるみたいにゃ。
「恋人がいるのに、ほかの人をほめにくいだけでは?」という疑問もあったにゃ。
別の研究では、魅力的な人の写真を選んでもらい、「その人のことは考えないで」と頼んでから、恋人のことを書いてもらったにゃ。恋人を愛しく思った時のことを書いた人は、恋人に体ごと惹かれた時のことを書いた人より、その人が頭に浮かぶ回数が少なく、見た目の細かいところも思い出しにくかったにゃ。口で言うことだけでなく、頭の中でも、少し遠ざかっていたようにゃ。
1989年の「出会いのサービス」は、研究のための作り話だったにゃ。ほかの人と出会うのは、教室や、パーティーの向こう側だったにゃ。
いまは、素敵な人がスマホの中に、毎日たくさん流れてくるにゃ。
「顔はいいけど、タイプじゃない」「客観的にはイケメン」。こういう言い方、恋人がいるときほど口から出やすい気がするにゃ。
研究の「ふつうの学生なら」「友だちの目で」と「自分の目で」の分け方に、そっくりにゃ。みんなの目では認めて、自分の目では外す。調査はこの言い回しまでは聞いていないけれど、心の使い分けが、そのまま言葉になっているのかもしれないにゃ。
研究者たちは、手の届かない人なら、魅力を認めても心はぶつからない、と考えていたにゃ。ぶつかるのは、本当に近づけそうな相手のときだけ。
恋人がいても推しには素直に「かっこいい!」と言えて、粗探しがあまりまじらない。それは、推しが画面の向こうにいるからかもしれないにゃ。
研究で本気度の差がいちばん大きく出たのは、とびきり魅力的な人に、自分の目で向き合ったときだったにゃ。
いまは、昔の同級生の「いいね」や、知らない人からのDMが、夜中に向こうからやって来るにゃ。そのとき「なんか違う」と思えたら、冷たいからじゃなく、ふたりを大事にしている心の動きかもしれない。通知を切るのも、研究者たちが挙げた「会わない」という避け方の、いまの形なのかもしれないにゃ。
恋人やパートナーがいるとき、とびきり素敵な人と出会ったら、あなたの心に近いのはどれ?

ねこたちがいちばん意外だったのは、
下げ方とつながっていたのが、
好きの強さではなかったことにゃ。
いまの恋人に満ち足りているか、より、
「この人とやっていく」と
決めている気持ちのほう。
ときめきでまわりが見えなくなる、
という話ではなさそうにゃ。
顔のよさは、ちゃんと見えている。
決めたことのほうへ、
「この人との先」の見え方が
ついていっていたにゃ。
7か月の調査では、
はじめはどちらも5くらいだった「ほかの人」が、
続いた人では2.6へ、
別れた人では5.7へ分かれていったにゃ。
まぶしく見えだしたのが先か、
「この先も」がゆるんだのが先か。
その順番は、研究者たちにも
わからないままにゃ。
だから、ほかの人のまぶしさは、
心変わりの判決ではなく、
いまの「この先も」の濃さを
うっすら映すもの、くらい。
34人の7か月から言えるのは、
たぶんそこまでにゃ。
写真の下の、申込書のことにゃ。
性格の11項目も、
趣味の12項目も、
申込書はみんな同じ
だったにゃ。
ちがっていたのは、写真だけ。
それでも本気度の高い人たちは、
いちばん素敵な写真の人の
「浮気しなさそう」を、
低くつけていたにゃ。
紙のどこにも書いていない
「浮気しそう」は、
読んだ人の心のほうから
出てきた言葉。
その言葉に写っていたのは、
写真の人のことより、
書いた人が「この先も」と
決めている相手のほう
だったのかもしれないにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
📋 研究所のほかのレポートにゃ