
…そう思う人ほど、はじめの手ごたえしだいで、恋は長くも短くもなっていたにゃ。
こんな話、したことないにゃ?
ずれを見つけたとき、
「この人じゃなかったのかも」と思うか。
「ここから合わせていくのかも」と思うか。
その分かれ道を、
恋の長さで確かめた研究があるにゃ。
心理学者のニーさん(1998年)は、アメリカの大学生たちに、恋についての考え方をたずねる質問紙をつくったにゃ。測ったのは、ふたつの考え方の強さにゃ。
ふたりは、結ばれる運命にあるか、ないか。合う相手とは、はじめからうまくいく。
うまくいく関係は、ふたりで育てていくもの。ぶつかって乗りこえるほど、近くなれる。
このふたつは、一本のものさしの両はしではなかったにゃ。両方強い人も、両方弱い人もいたにゃ。
それから、付き合っている学生たちに、いまの恋にどれだけ満足しているかを聞いて、しばらくあとで、その恋が続いているかを確かめたにゃ。
運命を信じる気持ちが強い人の恋は、どうなっていたと思う?
運命を信じる気持ちが強い人ほど、
はじめの満足と、恋の長さの結びつきが強かった。
はじめに満ち足りていた恋は、とくに長く続き、
はじめにしっくりこなかった恋は、早く終わりやすかった
運命を信じる人にとって、はじめの満足は「答え」に見えるのかもしれないにゃ。しっくりきたら「やっぱりこの人」。しっくりこなかったら「この人じゃなかった」。
だから、ぴったりだと思える相手に出会えた人には、運命を信じる気持ちは強い味方になるにゃ。
育つと信じる気持ちが強い人は、同じ人と長く付き合う傾向があったにゃ。関係に問題が起きたとき、話し合ったり直そうとしたりと、関係を保つほうの対処を多く選んでいたにゃ。
運命を信じる人は、そういうとき、距離をとる・避けるほうに向きやすかったにゃ。
この研究のもとになったのは、子どもの勉強についての考え方にゃ。頭のよさは生まれつき決まっていると思う子と、やれば伸びると思う子では、つまずいたときの動き方がちがう。のちに一般向けの本で「マインドセット」と呼ばれて、広く知られるようになった考え方にゃ。
その後、この研究の流れをふり返ってまとめた論文で、研究者たちは恋の場合をこう整理しているにゃ。
関係を見きわめることに気持ちが向く。出来事のひとつひとつが、「合うか、合わないか」の手がかりに見えやすい。
関係を育てることに気持ちが向く。ぶつかることは、ふたりが近くなる途中の出来事に見えやすい。
これは研究者たちが示した説にゃ。でも、こう読むと見えてくるものがあるにゃ。
相手が疲れていて、そっけなかった日。見きわめる目だと「やっぱり合わないのかも」。育てる目だと「疲れてるのかな、あとで聞いてみよう」。
同じ出来事が、片方では「答えが出た」に、もう片方では「この先どうする?」に見えるのかもしれないにゃ。
2025年に、ドイツ・スイス・オーストリアのカップル904組を、2年にわたって追いかけた研究がまとめられたにゃ。18歳から81歳まで。付き合いはじめのふたりも、結婚して何十年のふたりもいたにゃ。
運命を信じる気持ちが強い人ほど、調べはじめの時点での満足が高かったにゃ。
関係の満足は、年月とともにゆっくり下がっていきやすいもの。育つと信じる気持ちが強い人ほど、その下がり方がゆるやかだったにゃ。
逆向きの流れもあったにゃ。満足しているふたりほど、2年のあいだに「育てていける」と思う気持ちが強くなっていたにゃ。考え方が関係を変えるだけじゃなく、関係が考え方を変えてもいたにゃ。
どの差も小さかったにゃ。別の研究でも、ぴったりだと思える相手といる「運命派」は、満足が高く長続きしていたにゃ。運命を信じる気持ちにも、ちゃんと出番があるにゃ。
研究の学生たちは、1990年代のアメリカで、「ソウルメイト」ということばのそばで恋をしていたにゃ。
いまの日本の私たちには、もっと身近なことばがあるにゃ。「ご縁」。
別れた友だちに、そう声をかけることがあるにゃ。あなたのせいでも、相手のせいでもなかった、と言ってくれることば。運命の見方は、終わった関係を手放すときには、やさしく働くのかもしれないにゃ。自分を責めすぎずにすむからにゃ。
紹介やお見合いのあと、続けないことを伝える決まり文句にもなっているにゃ。角が立たない、いいことばにゃ。ただ、数回会っただけのしっくりこなさに、このことばで早めに答えを出していないか。研究の「はじめの満足しだい」を思い出すと、少しだけ気になるにゃ。
日本語では、縁は「ある・ない」だけじゃなく、「結ぶ」「つなぐ」とも言うにゃ。めぐり合わせと、そのあと自分たちで結んでいくこと。研究で、ふたつの考え方が一本のものさしの両はしではなかったように、「ご縁」ということばも、両方をいっしょに抱えているのかもしれないにゃ。
好きな人と、しっくりこないところが見えてきたとき。いまのあなたに近いのはどれ?

「運命の人なら、はじめから合うはず」。
そう思っていると、
小さなずれのひとつひとつが、
答えのように見えてくることがあるにゃ。
かといって、
「育てる目を持とう」と言われて
切りかえられるほど、
考え方はかんたんじゃないにゃ。
ねこたちが目をとめたのは、
904組を2年追いかけた研究の、
逆向きの流れのほうにゃ。
満足しているふたりほど、
あとから「育てていける」と
思うようになっていた。
育てる目は、はじめから
持っているものというより、
関係の中で、あとから
育つものなのかもしれないにゃ。
差はどれも小さかったから、
これは、ねこたちの
欲ばった読み方にゃ。
それでも、そう読めるなら、
付き合いはじめの手ごたえは、
結果というより、
途中で書いたメモに
近いのかもしれないにゃ。
結び目は、
ひもの片はしだけでは
つくれないにゃ。
縁が「ある」かどうかは、めぐり合わせ。
縁を「結ぶ」のは、
ふたりがそれぞれの端を
持ち寄ってからのことにゃ。
休みの日の過ごし方。お金の使い方。
3か月目に見えてきたずれは、
相手が自分の端を
持ってきてくれる人かどうかを、
はじめて見られる場所でもあるにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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