← 研究所RESEARCH No.98あと10分
恋愛・パートナーシップ

「運命の人」なら、はじめから合うはず?

…そう思う人ほど、はじめの手ごたえしだいで、恋は長くも短くもなっていたにゃ。

この研究を一枚で
問い
「運命の人」を信じるかどうかで、恋の続き方は変わるのか
どこで
アメリカの大学生たち(Knee 1998)
どうやって
「ふたりは結ばれる運命にあるか、ないか」「関係は育てていくものか」というふたつの考え方の強さを質問紙で測り、付き合っている人のはじめの満足と、その後も恋が続いているかを調べた
わかったこと
運命を信じる人ほど、はじめの満足が恋の長さを左右した。満ち足りていれば長く続き、しっくりこなければ早く終わりやすかった。育つと信じる人は、問題が起きたとき関係を保とうとする対処を多くとった
その後の研究
ドイツ語圏の904組を2年追った研究では、運命を信じる人ほどいまの満足が高く、育つと信じる人ほど満足が下がりにくかった。差はどれも小さかった(2025年)

こんな話、したことないにゃ?

付き合って3か月。もう、合わないところが見えてきた
たとえば?
休みの日の過ごし方とか、お金の使い方とか。小さいことなんだけど
運命の人だったら、こういうの、はじめから合うんじゃないのかなって
(それとも、ここからなのかな)

ずれを見つけたとき、
「この人じゃなかったのかも」と思うか。
「ここから合わせていくのかも」と思うか。

その分かれ道を、
恋の長さで確かめた研究があるにゃ。

🧪 研究 恋についての、ふたつの考え方

「運命の人」か、
「育てていく関係」か

心理学者のニーさん(1998年)は、アメリカの大学生たちに、恋についての考え方をたずねる質問紙をつくったにゃ。測ったのは、ふたつの考え方の強さにゃ。

①

🔮 運命を信じる気持ち

ふたりは、結ばれる運命にあるか、ないか。合う相手とは、はじめからうまくいく。

②

🌱 育つと信じる気持ち

うまくいく関係は、ふたりで育てていくもの。ぶつかって乗りこえるほど、近くなれる。

このふたつは、一本のものさしの両はしではなかったにゃ。両方強い人も、両方弱い人もいたにゃ。

それから、付き合っている学生たちに、いまの恋にどれだけ満足しているかを聞いて、しばらくあとで、その恋が続いているかを確かめたにゃ。

予想してみるにゃ

運命を信じる気持ちが強い人の恋は、どうなっていたと思う?

📊 結果の読み方

運命を信じる恋は、
はじめの手ごたえに
左右されやすかった

📊 わかったこと

運命を信じる気持ちが強い人ほど、
はじめの満足と、恋の長さの結びつきが強かった。

はじめに満ち足りていた恋は、とくに長く続き、
はじめにしっくりこなかった恋は、早く終わりやすかった

運命を信じる人にとって、はじめの満足は「答え」に見えるのかもしれないにゃ。しっくりきたら「やっぱりこの人」。しっくりこなかったら「この人じゃなかった」。

だから、ぴったりだと思える相手に出会えた人には、運命を信じる気持ちは強い味方になるにゃ。

育つと信じる気持ちが強い人は、同じ人と長く付き合う傾向があったにゃ。関係に問題が起きたとき、話し合ったり直そうとしたりと、関係を保つほうの対処を多く選んでいたにゃ。

運命を信じる人は、そういうとき、距離をとる・避けるほうに向きやすかったにゃ。

🤔 なぜ、はじめのつまずきがこたえるのか

「見きわめる目」と
「育てる目」

この研究のもとになったのは、子どもの勉強についての考え方にゃ。頭のよさは生まれつき決まっていると思う子と、やれば伸びると思う子では、つまずいたときの動き方がちがう。のちに一般向けの本で「マインドセット」と呼ばれて、広く知られるようになった考え方にゃ。

その後、この研究の流れをふり返ってまとめた論文で、研究者たちは恋の場合をこう整理しているにゃ。

運命を信じる目

この関係は、本物かどうか

関係を見きわめることに気持ちが向く。出来事のひとつひとつが、「合うか、合わないか」の手がかりに見えやすい。

育つと信じる目

この関係を、どうよくしていくか

関係を育てることに気持ちが向く。ぶつかることは、ふたりが近くなる途中の出来事に見えやすい。

これは研究者たちが示した説にゃ。でも、こう読むと見えてくるものがあるにゃ。

相手が疲れていて、そっけなかった日。見きわめる目だと「やっぱり合わないのかも」。育てる目だと「疲れてるのかな、あとで聞いてみよう」。

同じ出来事が、片方では「答えが出た」に、もう片方では「この先どうする?」に見えるのかもしれないにゃ。

🔍 その後の研究

904組のカップルを、
2年追いかけると

2025年に、ドイツ・スイス・オーストリアのカップル904組を、2年にわたって追いかけた研究がまとめられたにゃ。18歳から81歳まで。付き合いはじめのふたりも、結婚して何十年のふたりもいたにゃ。

運命を信じる人

いまの満足が高かった

運命を信じる気持ちが強い人ほど、調べはじめの時点での満足が高かったにゃ。

育つと信じる人

満足が下がりにくかった

関係の満足は、年月とともにゆっくり下がっていきやすいもの。育つと信じる気持ちが強い人ほど、その下がり方がゆるやかだったにゃ。

逆向きの流れもあったにゃ。満足しているふたりほど、2年のあいだに「育てていける」と思う気持ちが強くなっていたにゃ。考え方が関係を変えるだけじゃなく、関係が考え方を変えてもいたにゃ。

どの差も小さかったにゃ。別の研究でも、ぴったりだと思える相手といる「運命派」は、満足が高く長続きしていたにゃ。運命を信じる気持ちにも、ちゃんと出番があるにゃ。

🔖 今に置き換えて考える

「ご縁」ということばは、
ふたつの見方を
いっしょに持っている

研究の学生たちは、1990年代のアメリカで、「ソウルメイト」ということばのそばで恋をしていたにゃ。

いまの日本の私たちには、もっと身近なことばがあるにゃ。「ご縁」。

恋が終わったあとに

「縁がなかったんだよ」

別れた友だちに、そう声をかけることがあるにゃ。あなたのせいでも、相手のせいでもなかった、と言ってくれることば。運命の見方は、終わった関係を手放すときには、やさしく働くのかもしれないにゃ。自分を責めすぎずにすむからにゃ。

はじまりのころに

「ご縁がなかったということで」

紹介やお見合いのあと、続けないことを伝える決まり文句にもなっているにゃ。角が立たない、いいことばにゃ。ただ、数回会っただけのしっくりこなさに、このことばで早めに答えを出していないか。研究の「はじめの満足しだい」を思い出すと、少しだけ気になるにゃ。

もうひとつの言い方

縁は、「結ぶ」もの

日本語では、縁は「ある・ない」だけじゃなく、「結ぶ」「つなぐ」とも言うにゃ。めぐり合わせと、そのあと自分たちで結んでいくこと。研究で、ふたつの考え方が一本のものさしの両はしではなかったように、「ご縁」ということばも、両方をいっしょに抱えているのかもしれないにゃ。

あなたならどれ?

好きな人と、しっくりこないところが見えてきたとき。いまのあなたに近いのはどれ?

🐱 猫の国の研究所より

「育てていける」は、
どこから来るのか

「運命の人なら、はじめから合うはず」。
そう思っていると、
小さなずれのひとつひとつが、
答えのように見えてくることがあるにゃ。

かといって、
「育てる目を持とう」と言われて
切りかえられるほど、
考え方はかんたんじゃないにゃ。

ねこたちが目をとめたのは、
904組を2年追いかけた研究の、
逆向きの流れのほうにゃ。

満足しているふたりほど、
あとから「育てていける」と
思うようになっていた。
育てる目は、はじめから
持っているものというより、
関係の中で、あとから
育つものなのかもしれないにゃ。

差はどれも小さかったから、
これは、ねこたちの
欲ばった読み方にゃ。

それでも、そう読めるなら、
付き合いはじめの手ごたえは、
結果というより、
途中で書いたメモに
近いのかもしれないにゃ。

🪢

結び目は、
ひもの片はしだけでは
つくれないにゃ。

縁が「ある」かどうかは、めぐり合わせ。
縁を「結ぶ」のは、
ふたりがそれぞれの端を
持ち寄ってからのことにゃ。

休みの日の過ごし方。お金の使い方。
3か月目に見えてきたずれは、
相手が自分の端を
持ってきてくれる人かどうかを、
はじめて見られる場所でもあるにゃ。

📚 参考文献

この記事で紹介した研究

📋 研究所のほかのレポートにゃ

📍
RESEARCH No.97

世界にこんなに人がいるのに、縁があるのは近くの人ばかり?

…「縁」と呼んできたものを、部屋割りで数えた人たちがいるにゃ。

📱
RESEARCH No.96

プロフィールはぴったりだったのに、会ったら何かちがう?

…100以上の質問でも、「この二人だから」は会う前には見えなかったにゃ。

⚡
RESEARCH No.95

はじめて会ったときのなんとなくは、当たるの?

…にぎやかさは早く見えて、やさしさは時間がかかったにゃ。

Knee, C. R. (1998). Implicit theories of relationships: Assessment and prediction of romantic relationship initiation, coping, and longevity. Journal of Personality and Social Psychology, 74(2), 360-370. リンク
Knee, C. R., Patrick, H., & Lonsbary, C. (2003). Implicit theories of relationships: Orientations toward evaluation and cultivation. Personality and Social Psychology Review, 7(1), 41-55. リンク
Gander, F., Uhlich, M., Traut, A. C., Saameli, M. A., Bühler, J. L., Weidmann, R., & Grob, A. (2025). The role of relationship beliefs in predicting levels and changes of relationship satisfaction. European Journal of Personality, 39(1), 105-121. リンク
Franiuk, R., Cohen, D., & Pomerantz, E. M. (2002). Implicit theories of relationships: Implications for relationship satisfaction and longevity. Personal Relationships, 9(4), 345-367. リンク
Dweck, C. S. (2006). Mindset: The New Psychology of Success. Random House.(邦訳『マインドセット「やればできる!」の研究』草思社)
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com