
…「気持ちの問題」だけで片づくEDは、思われているより少なかったにゃ。
こんな夜、ないにゃ?
彼の体のことなのに、
自分のせいとして
抱え込んでしまう。
よく「EDは心の問題」って言われるにゃ。
だとしたら、その心を追いつめたのは私?
ほんとうに、そうなのかにゃ。
ED(勃起障害)は、満足できる性行為に足りる勃起が、続けて得られない状態のことにゃ。
めずらしいことじゃないにゃ。日本の調査でも、中くらい以上のEDがある人は、50代で5人に1人、60代では4割ほどだったにゃ。
イタリアの研究者、ポッツィさんたち(2022年)は、病院にはじめてEDの相談に来た男性2,009人を調べたにゃ。年齢の真ん中は50歳だったにゃ。
ヨーロッパの泌尿器科の指針にある、体の側の危険因子(年齢・高血圧・たばこ・お酒など)を一人ずつ確かめたにゃ。
1つでもある人は「体が主」、ひとつもない人は「心が主」。そうして分けた2つのグループの、EDの重さも比べたにゃ。
危険因子がひとつもない「心が主」のEDは、どのくらいだったと思う?
危険因子がひとつもない「心が主」のED
EDの重さは「体が主」の人と変わらなかった
相談に来た人の多くに、体の側の要因がひとつはあったにゃ。ただ、年齢も危険因子に数えているので、「体の病気が見つかった」という意味ではないにゃ。
言えるのは、「気持ちの問題だけ」で片づく人は思われているより少ない、ということにゃ。
そして「心が主」の人のEDも、同じくらい重かったにゃ。心が主だから軽い、「気の持ちよう」で治る、という話でもなかったにゃ。
「私のせいで彼の心が…」という一本の線は、このデータとは合わないにゃ。
EDは、体のほかの所の変化が先にあらわれることもあるにゃ。薬がきっかけのこともあるにゃ(そのときは自分の判断でやめずに、出してくれたお医者さんに)。
だから体のことも、一度ふたりで専門家に聞いてみていいにゃ。
性の反応には「アクセル」と「ブレーキ」があって、人によって効きやすさがちがう、という考え方があるにゃ。
ブレーキのひとつは「うまくいかなかったらどうしよう」という失敗への不安と結びついている、と考えられているにゃ。もうひとつは、関係の中の気がかりなど、外からの心配と結びついているとされるにゃ。
一度うまくいかないと、次のときに「また起きたら」と自分の体を見張ってしまうにゃ。不安が強いと、ブレーキ側に傾きやすいにゃ。重なると、その場面そのものを避けたくなることもあるにゃ。
ひとつの説明はこうにゃ。はじまりは体の側の小さな変化でも、そこに不安があとから重なる。だから、きれいに「心」と「体」に分けにくいのかもしれないにゃ。
彼が距離をとり始めているなら、気持ちが冷めたからとは限らないにゃ。「また同じことになるのが怖い」のかもしれないにゃ。
昔は、とくに40歳より若い人のEDは、ほとんどが心の問題だと考えられていたにゃ。
2014年に、40歳より若い人のEDを調べた研究をまとめた人たちがいるにゃ。体の原因が見つかった割合は、研究によって15〜72%と大きな幅があったにゃ。
若い人では心の比重が大きいとされるけれど、体の原因がないとは言い切れないにゃ。「まだ若いから、気持ちの問題」とは決めつけられないにゃ。
EDは「心因性・器質性(体)・混合性」に分けられてきたけれど、多くは混ざっているので、この分け方は慎重に使うように、と書かれているにゃ。手当ても、薬などの体の手当てと心の支え(ふたりで受けるものもふくめて)を合わせるのがよいとされているにゃ。
研究に出てきたのは、自分で病院に相談に来た人たちにゃ。
でも、悩んでいる人の多くは、まだその手前にいるのかもしれないにゃ。そこで起きていることを、研究の先まで考えてみるにゃ。
排卵日をアプリで調べて、日を合わせる夫婦はめずらしくないにゃ。「今日じゃなきゃ」は、失敗への不安とよく似た形をしているにゃ。だれのせいでもなく、予定そのものがブレーキを踏みやすくするのかもしれないにゃ。
男どうしで、この話をする場はほとんどないにゃ。友だちにも、職場の先輩にも聞けない。彼も、だれにも言えずにいるのかもしれないにゃ。EDのある男性約2,900人を調べた別の調査では、妻や家族、お医者さんが支えてくれると感じている人ほど、治療を受けていたにゃ。
その場で「どうしたの?」と聞くと、いちばん不安なときに答えを求めることになるにゃ。顔を見て言いにくいなら、LINEで「こんど、ゆっくり話したいな」とだけ送っておくのもひとつにゃ。
もし、このことを彼と話すとしたら、いまのあなたはどれに近い?

「私から誘うのも、
こわくなってきた」。
これも、ブレーキの話
なのかもしれないにゃ。
一度うまくいかなかった夜のあと、
次をこわがって、自分から少し離れる。
彼の「また失敗したら」と、
あなたの「また断られたら」は、
よく似た形をしているにゃ。
ふたりとも、相手より先に
自分のほうを疑いながら、
同じくり返しの中に
いるのかもしれないにゃ。
ここまでは、2,009人の数字と
ブレーキの説明を
あの夜に重ねてみた、
ねこたちの読みにゃ。
彼の胸の中までは、
どの研究ものぞいていないにゃ。
途中で聞こえた「ごめん」にゃ。
あれは、あなたに
がっかりしたという意味より、
「また、だめだった」の
ひとりごとに近いのかもしれないにゃ。
同じ夜、あなたの胸にも
「私のせい?」という
ひとりごとがあったにゃ。
背中あわせの、ふたつのひとりごと。
どちらもまだ、
相手に届いていない言葉にゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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