🔬 猫の国 研究所
つらかったことを
紙に書くだけで、
病院に行く回数が減っていた
…誰にも見せない文章に、
そんな力があったのかにゃ?
つらいことがあったとき、
「誰かに話した方がいいよ」って
よく言われるにゃ。
でもにゃ。
話せる相手がいない夜がある。
話せる内容じゃないことがある。
言葉にしたら壊れそうで、
胸の奥にしまったままのものがある。
そういう「誰にも話せないもの」を
ずっと抱えて生きている人は、
少なくないと思うにゃ。
それなら——
誰にも見せずに書くのは
どうなんだろうにゃ?
心理学者 James Pennebaker と Sandra Beall は、大学生を集めて、こんな実験をしたにゃ。
人生でもっともつらかった出来事について、事実と気持ちの両方を、1日15分、4日間書き続けるにゃ。誰にも見せない前提にゃ。
「自分の部屋の間取り」みたいな、感情と関係ない話題を同じ時間書くにゃ。
そして書き終わったあと、その後半年間の健康記録を追いかけたにゃ。
つらい経験を「事実と感情の両方」で書いたグループは、その後6ヶ月間で
間取りを書いたグループと比べて、体調を崩して病院にかかる回数が少なかったにゃ。
その後、この「筆記開示(expressive writing)」の研究は世界中で追試されて、免疫機能の指標や気分、大学生の成績まで、いろんな面での効果が報告されたにゃ。
ただし、大事な注意もあるにゃ。
2006年の大規模なメタ分析(146研究)では、効果は確かにあるが小さいことも示されたにゃ。魔法じゃないにゃ。
紙とペンだけで、
小さいけれど本物の効果
この研究でおもしろいのは、書いた直後の反応にゃ。
つらい経験を書いたグループは、書き終わった直後、間取りを書いたグループより気分が落ち込んでいたにゃ。血圧が上がった研究もあるにゃ。
つまり、書いている最中は、ぜんぜん「癒し」っぽくないにゃ。むしろしんどいにゃ。
それでも数週間〜数ヶ月のスパンで見ると、書いたグループの方が心身の調子が良くなっていく——という時間差のパターンだったにゃ。
その場で楽になるためじゃなく、
あとから効いてくる
筋肉痛と似た順番かもしれないにゃ。
なぜ書くだけで効果があるのか。有力な説明はいくつかあるにゃ。
秘密を「隠し続ける」こと自体が、心と体の資源をずっと消費しているにゃ。書くことでその見張り番を解雇できる、という説にゃ。
頭の中でぐるぐる回っていた断片が、文章にすると「始まり・中間・終わり」のある物語になる。物語になった記憶は、暴れにくくなるにゃ。
実際、回を重ねるごとに「原因がわかった」「今にして思えば」みたいな整理の言葉が増えていった人ほど、効果が大きかったという分析もあるにゃ。
ここでちょっと、
立ち止まってみるにゃ。
頭の中で
何度も再生されるのに、
一度も言葉にしたことがない
出来事は、ないかにゃ?
…それはまだ、
物語になっていない記憶
かもしれないにゃ。
話さなくてもいい。
見せなくてもいい。
それでも、書くことはできるにゃ。
ここで大事な注意書きを置きたいにゃ。
筆記開示は
治療の代わりではないし、
全員に向くわけでもない
効果量は平均すると小さめで、書くことでかえって反芻(ぐるぐる考え続けること)が強くなってしまう人もいるにゃ。
それに、起きたばかりの深い傷を無理にほじくり返すことは、研究者たちも勧めていないにゃ。書くのがつらすぎるときは、書かないのも正しい判断にゃ。
深い傷については、一人で抱えず、信頼できる専門家と一緒に扱うのが安全にゃ。
ここまでのデータを並べて、
研究所が思ったことにゃ。
この研究がいちばん優しいのは、
聞き手を必要としないところだと
思うにゃ。
「誰かに話そう」というアドバイスは、
話せる誰かがいる人にしか
使えないにゃ。
でも紙は、
深夜2時でも空いていて、
予約もいらなくて、
何を書いても驚かないにゃ。
「誰にも言えない」と
「言葉にできない」は、
別のことだったにゃ。
誰にも言えなくても、
言葉にすることはできる。
それだけで、少しだけ
荷物の持ち方が変わるかもしれないにゃ。
「ちゃんとした文章」を書く
必要はまったくないにゃ。
実験で使われたのは、
誰にも見せない、
文法も誤字も気にしない、
ぐちゃぐちゃの15分にゃ。
上手に書けたかどうかは、
効果と関係なかったにゃ。
もちろん、研究が示しているのは
統計的な傾向であって、
すべての人に同じように
当てはまるわけじゃないにゃ。
書いてみて、しんどさが増すなら
すぐやめていいにゃ。
心の扉は、
自分のペースで開けるのが
いちばんにゃ。
誰にも見せない15分の文章が、
数ヶ月後の心と体を
少しだけ守っていた。
…研究が教えてくれるのは、
そんな静かな話だったにゃ。
抱えているものを、
今日ぜんぶ書く必要はないにゃ。
ただ、紙とペンが
いつでもそこにあることだけ、
覚えておいてほしいにゃ。
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