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自己理解・対人パターン

冗談を言ったあと、まず友だちの顔を見てしまう?

…確かめようと思うより先に、体のほうが身構えているのかもしれないにゃ。"ひとりぼっちの絵"とまばたきの実験の話にゃ。

この研究を一枚で
問い
拒まれることに敏感な人の体は、どんなものを見たときに、とっさに身構えるのか
どこで
アメリカ・ニューヨークのコロンビア大学で募った、18〜38歳の学生43人(分析は40人。Downey ほか 2004)
どうやって
拒まれることへの敏感さを質問紙で測り、4人の画家の絵を6秒ずつ見てもらう。そのあいだに大きな音を鳴らし、とっさのまばたきの強さを目の下のセンサーで測った
わかったこと
敏感さの高い人では、「拒まれている感じ」の強い絵(ホッパー)を見ているときだけ、まばたきが強くなった。いちばん暗いと評価された抽象画では、そうならなかった。受け入れられる場面の絵で、とくに落ち着くこともなかった
その後の研究
社交不安症の人の目の動きを調べた13の研究をまとめると、こわい表情にまず目が向き、すぐそらす形が多かった。ただ、どれも静止画で、VRのエレベーターの実験ではその形は出なかった(2019年のまとめ)

こんなこと、ないにゃ?

(冗談を言ったあと、まず友だちの顔を見る)
…笑ってる。よかった
あれ、いま一瞬、真顔にならなかった?
さっきの、言わなきゃよかったかな
(帰り道、あの一瞬の顔を何度も思い出す)

楽しかったはずの集まり。
なのに覚えているのは、
だれかの、ほんの一瞬の顔。

確かめたくて確かめているわけじゃない。
気づいたら、もう見ている。

「嫌われるのがこわい」人の体が、
なにに身構えているのか。
意外なものを使って調べた実験があるにゃ。

🧪 研究 絵を見ているあいだの、まばたき

暗い部屋で、
4人の画家の絵を見る

アメリカの心理学者ダウニーさんたち(2004年)は、ニューヨークのコロンビア大学で、学生43人に協力してもらったにゃ。18歳から38歳までの人たちにゃ。

まず質問紙で、拒まれることへの敏感さを測ったにゃ。このチームがその少し前に名づけたもので、「拒まれるのを不安な気持ちで予想し、すぐに気づき、強く反応する」かたむきのことにゃ。

質問の例

「友だちに、大きな頼みごとをする」

こんな場面が18個並んでいて、「相手は引き受けてくれるか、どのくらい心配か」「断られそうだと思うか」を答えるにゃ。

それから静かな部屋で、壁に映した絵を、1枚6秒ずつ見てもらったにゃ。絵は4人の画家から4枚ずつ。下調べで、別の40人に点をつけてもらって選んだものにゃ。

4人の画家

ホッパー/ルノワール/ロスコ/ミロ

ホッパーは、人がぽつんとひとりでいる場面をよく描いた画家。ルノワールは、人があたたかく寄りそう場面。ロスコとミロは、人の出てこない抽象画で、ロスコは暗い色、ミロは明るい色にゃ。

絵を見ているとき、ときどき「ザッ」と短く大きな雑音が鳴るにゃ。人は大きな音に、とっさにまばたきをする。すでに身構えているときほど、このまばたきが強くなることが知られているにゃ。目の下につけた小さなセンサーで、その強さを測ったにゃ。

予想してみるにゃ

拒まれることに敏感な人のまばたきが、ほかの絵より強くなったのは、どの絵を見ているときだったと思う?

📊 結果の読み方

体が反応したのは、
暗さじゃなく
ひとりぼっちのほう

📊 わかったこと

拒まれることに敏感な人では、
ホッパーの絵を見ているときだけ、
音へのまばたきが強くなった。
ほかの3人の、どの絵と比べても。

敏感さの低い人では、
この差は出なかった

暗いもの、いやなもの全部に敏感なわけじゃない。体が身構えたのは、人から離れている場面だったにゃ。

しかも、その絵の中のだれも、見ている本人を拒んでいないにゃ。壁に映ったただの絵に、体がとっさに反応していたにゃ。

もうひとつ、研究者たちが確かめたことがあるにゃ。別の86人に、好きなだけ絵を見てもらったら、敏感な人がホッパーの絵から早く目をそらす、ということはなかったにゃ。

身構えは、「見たくない」と考えるより手前で起きていたのかもしれないにゃ。

そして、ねこたちがいちばん気になったのは、ルノワールの絵のほうにゃ。受け入れられる場面の絵で、敏感な人の体がとくにほっとすることは、なかったにゃ。拒まれる気配には強く反応するのに、受け入れられる気配で同じだけ落ち着くわけではなかったにゃ。

🤔 なぜ、そうなるのか

体の非常ベルが、
拒まれる気配に
合わせてある

人の体には、危ないものを前にすると、考えるより先に身構える仕組みがある、と考えられているにゃ。この実験のまばたきは、その仕組みが動いているかをのぞくための窓だったにゃ。

研究者たちの説明

拒まれた痛みから、身を守るために

大切な人に、強く、長く拒まれた経験があると、自分を守るために、拒まれる気配にこの非常ベルが合わさっていく。研究チームはそう考えているにゃ。生い立ちまでは、この実験では調べていないにゃ。

ベルは、考えるひまのない場面では役に立つ。困るのは、危なさが小さいときや、落ち着いて考えたほうがいい場面で鳴るとき。身構えたふるまいが、こわかった結果をかえって呼び寄せてしまうことがある、とも研究者たちは書いているにゃ。

考え方

確かめるほど、確かめたくなる

不安な人が安心のためにする行動、たとえば相手の顔をのぞく、念を押す。それはその場を楽にするけれど、「確かめなくても大丈夫だった」を知る機会をなくしてしまう。だから不安が長続きする。

1990年代のはじめにイギリスの臨床心理学者が示した考え方で、いまも認知行動療法で広く使われているにゃ。

🔍 その後の研究

人は一日じゅう、
顔を確かめているの?

ダウニーさんたちの実験は、40人の学生で、見せたのは顔ではなく絵だったにゃ。研究者たち自身も、ほかの絵で確かめることや、暮らしの中のふるまいとつなげることが、これからの課題だと書いているにゃ。

顔のほうは、どうかにゃ。2019年に、ブラジルの研究者たちが、社交不安症の人の目の動きを調べた13の研究をまとめているにゃ。社交不安症は、人から否定的に見られることへのおそれが強く続く状態で、拒まれることへの敏感さとは測り方がちがうけれど、近いところにある心の動きにゃ。

📊 まとめでわかったこと

こわい表情に、はじめはすばやく目が向き、
そのあと目をそらす。
とくに、相手の目のあたりから

ただ、13の研究はどれも、動かない顔を見せたものだったにゃ。その中で、VRのエレベーターに乗って、扉が開くたびに人の顔が見える、という暮らしに近い実験では、すばやく目が向く形は出なかった。はじめから顔をよけていたにゃ。

「一日に何回、顔を確かめているか」を数えた研究は、まだないにゃ。実験室の顔と、暮らしの中の顔は、まだ同じものとは言えないにゃ。

😷 今に置き換えて考える

顔の半分が見えない日と、
顔のない写真が届く日

実験の人たちが見たのは、2000年代はじめの大学の、静かな部屋の壁に映る絵だったにゃ。

いまの私たちが「嫌われたかな」と身構える材料は、もっと形を変えて、毎日の中にまぎれこんでいるにゃ。

マスク越しに

手がかりは、目元だけ

花粉の季節や冬には、マスク越しに人と話す日も、まだあるにゃ。口元が見えないぶん、目元だけで「怒ってる?」を読もうとする。でも、まとめの研究では、こわい表情のとき、いちばんそらされやすかったのが目のあたりだったにゃ。手がかりは少ないのに、その手がかりはいちばん見づらい場所。マスクの下の口が笑っているかは、だれにもわからない。わからないぶんを、悪いほうの想像で埋めているのかもしれないにゃ。

画面の向こうで

自分のいない集まりの写真

友だちどうしの楽しそうな写真が、SNSに流れてくる。そこに自分はいない。ホッパーの絵と同じで、写真の中のだれも、あなたを拒んではいないにゃ。日程が合わなかったのかもしれないし、別のつながりの集まりかもしれない。それでも体は、理由を知る前に、ひやっと身構える。実験で見えたのは、まさにその順番だったにゃ。

確かめたあとで

一度だけ、確かめずに過ごしてみる

冗談を言ったあと、すぐに顔を見ずに、次の話を続けてみる。帰り道に「さっきの、どうだった?」と思い返すと、たいていは、なにも起きていないにゃ。「確かめなくても大丈夫だった」を、ひとつずつ集めていくやり方にゃ。こわさが強い場面で、いきなり試すことはないにゃ。気楽な相手との、小さな場面からでじゅうぶんにゃ。

あなたならどれ?

相手の顔が、一瞬くもったように見えたとき。あなたが、まずしてしまうのはどれ?

🐱 猫の国の研究所より

ここからは、
研究所の考察にゃ。

ルノワールの絵の前で、
敏感な人の体は、
とくにほっとしなかったにゃ。

拒まれる気配には
すぐにベルが鳴るのに、
寄りそう人たちの絵では、
ベルが静かになるわけではなかった。

それなら、安心を
相手の顔から集めようとしても、
なかなか貯まらないのかもしれないにゃ。
笑顔をひとつ見ても、
また次の顔を見たくなる。
確かめる回数が多いのは、
疑い深いからじゃなくて、
集め方が合っていないから、
なのかもしれないにゃ。

実験が見たのは、
絵の前の6秒と、まばたきだけにゃ。
顔を確かめる回数までは、
だれも数えていない。
だからここは、ねこたちの推しはかりにゃ。

安心は、顔の外にも置いてあるにゃ。
先月も笑って帰ったこと。
困ったとき、あの人が来てくれたこと。
一瞬の顔より、
覚えている出来事のほうが、
長く手元に残るにゃ。

🔔

体は、
壁に映った絵にも
身構える。

実験の人たちのベルは、
だれにも拒まれていないのに、
ただの絵で鳴っていたにゃ。

友だちの顔が一瞬くもって見えて、
胸がひやっとしたら。
それは、ベルが鳴った音。
嫌われた音とは、
まだ決まっていないにゃ。

📚 参考文献

この記事で紹介した研究

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Downey, G., Mougios, V., Ayduk, O., London, B. E., & Shoda, Y. (2004). Rejection sensitivity and the defensive motivational system: Insights from the startle response to rejection cues. Psychological Science, 15(10), 668-673. リンク
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Salkovskis, P. M. (1991). The importance of behaviour in the maintenance of anxiety and panic: A cognitive account. Behavioural Psychotherapy, 19(1), 6-19. リンク
Claudino, R. G. E., de Lima, L. K. S., de Assis, E. D. B., & Torro, N. (2019). Facial expressions and eye tracking in individuals with social anxiety disorder: A systematic review. Psicologia: Reflexão e Crítica, 32(1), 9. リンク
Mühlberger, A., Wieser, M. J., & Pauli, P. (2008). Visual attention during virtual social situations depends on social anxiety. CyberPsychology & Behavior, 11(4), 425-430. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
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