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対人関係・境界線

「断ったら悪いかな」で、行きたくない誘いにも「いいよ」と言ってしまう?

…誘った人は、あなたが思うほど「断られたこと」を見ていないのかもにゃ。

この研究を一枚で
問い
誘いを断ったとき、相手がどう受け取るかを、断る側は正しく見積もれているのか
どこで
アメリカで、5つの実験に2,000人あまり。友だちどうしの場面を想像してもらうものと、実際のカップルどうしのもの(Givi & Kirk 2024)
どうやって
誘う側と断る側に分かれ、断る側は「相手はどう感じるか」を予想し、断られた側は自分の気持ちを答えた。その予想と実際を比べた
わかったこと
断る側は、相手の怒りやがっかり、「もう誘わない」と思われることを、実際より大きく見積もっていた。断られた側は、断られたことそのものより、相手の事情のほうを考えていた
その後の研究
頼む側は反対に、断る気まずさを小さく見積もり、「いいよ」と言ってもらえる見込みを最大で半分ほど低く見ていた(2008年の研究)

こんなこと、ないにゃ?

土曜、みんなでごはん行かない? いいお店見つけたの
(今週はずっと残業だった。土曜は、家でごろごろしていたい)
(でも、断ったら次から誘われなくなるかも)
行く行く! 楽しみ〜

行ってみたら、楽しかった日もある。
でも、金曜の夜から
ずっと気が重い日もある。

断れなかったのは、
相手がこわい人だからじゃない。
「がっかりさせるかも」が、
先に口を動かしていた。

その「がっかり」は、
ほんとうはどのくらいの大きさなのかにゃ。

🧪 研究 誘いを断ったら

断る人の予想と、
断られた人の気持ちを
並べてみた

アメリカの研究者ギヴィさんとカークさん(2024年)は、まず、人がどのくらい「断れずに」誘いを受けているのかを聞いてみたにゃ。

予想してみるにゃ

「断ったあとのことが心配で、行きたくない誘いを受けたことがある」と答えた人は、どのくらいいたと思う?

そこでふたりは、5つの実験で、あわせて2,000人あまりに協力してもらったにゃ。

たとえば、ある実験では、友だちから「土曜の夜、有名なシェフのお店に行かない?」と誘われる場面を読んでもらったにゃ。半分の人は、断る側。「昼に予定があるし、夜は家でゆっくりしたいから」と断ったつもりで、友だちがどう感じるかを予想する。もう半分の人は、誘った側。同じ理由で断られたつもりで、自分の気持ちを答えるにゃ。

別の実験では、本物のカップルに来てもらったにゃ。ひとりが、映画やごはんやハイキングなど、行きたいところへの誘いを書く。もうひとりがそれを読んで、「家でゆっくりしたいから」と断りの返事を書く。そのあと、ふたりが別々に、自分の気持ちと、相手の気持ちの予想を答えたにゃ。

予想してみるにゃ

断る側の予想と、断られた側のほんとうの気持ち。比べると、どうだったと思う?

📊 結果の読み方

断る人の頭の中で、
「がっかり」は
大きくなっていた

📊 わかったこと

断る側が思うより、断られた側は
・怒っていなかった
・がっかりしていなかった
・「私のことを大事に思っていない」と
 受け取っていなかった
・「もう誘わない」とも思っていなかった

カップルの多くは、5年以上いっしょにいるふたりだったにゃ。相手のことをよく知っていても、断ったあとの相手の顔は、実際よりけわしく思い浮かべていたことになるにゃ。

もうひとつ、目をとめたいのは断る理由にゃ。実験の理由は、「家でゆっくりしたい」だけ。どうしても外せない用事ではなかったにゃ。

それでも、断られた側は、断る側が心配するほどには気にしていなかったにゃ。

🤔 なぜ、見積もりがずれるのか

断られた人が見ていたのは、
「どうしたのかな」

研究者たちが確かめた説明は、こうにゃ。

断る側は、相手が「断られた」という出来事そのものに目を向けると思っている。けれど断られた側は、「疲れてるのかな」「今週忙しかったのかな」と、断る前に相手の頭に浮かんだことのほうを考えていたにゃ。

断る側は、自分の「行けない」だけが相手の前に置かれる気がしている。誘った側には、そのうしろにある事情まで、思っているより見えていたにゃ。

断れないことには、ほかにもいろいろな説明があるにゃ。研究で確かめられたものと、そうでないものがまじっているので、分けて置いておくにゃ。

脳の説

「拒まれる痛みは、体の痛みと同じ」

仲間はずれにされたときの脳の反応が、体の痛みと似ていたという2003年の研究から広まった説にゃ。のちに、脳の反応の形はちがうという研究も出て、議論が続いているにゃ。

一般書の言い方

頭が真っ白になって、「いいよ」が先に出る

感情の警報が考える力を乗っ取る、という「扁桃体ハイジャック」は、1990年代の一般向けの本で広まった言い方にゃ。あの瞬間の感じをうまく言い当てているけれど、脳の仕組みとして確かめられたものではないにゃ。

臨床家の見立て

「いいよ」は、昔の身の守り方かもしれない

アメリカのセラピスト、ピート・ウォーカーさんは、こわい相手の機嫌をとって自分を守る反応を「なだめる(fawn)」と名づけたにゃ。断ると本当に怒る人のそばで育つと、断る前に体が「いいよ」と言うようになる、という見立てにゃ。

この見立ては、人を集めて確かめた研究ではなく、カウンセリングの現場から出てきたものにゃ。

そして、実験の「心配しすぎ」とは、ちがう場所の話でもあるにゃ。断ると本当に怒る相手がいるなら、その心配は見積もりちがいではなく、経験から学んだことにゃ。

🔍 反対側から見た研究

頼む人は、
断る気まずさを
小さく見ていた

同じずれを、反対側から見た研究もあるにゃ。2008年のアメリカの研究では、学生に、キャンパスで知らない人に頼みごとをしてもらったにゃ。携帯電話を貸してもらう、アンケートに答えてもらう、ジムまで数ブロック案内してもらう。

📊 わかったこと

頼む前の学生は、「いいよ」と言ってもらえる見込みを、
最大で半分ほど低く見積もっていた

研究者たちが見つけた理由は、頼む側が「引き受ける手間」ばかり考えて、「面と向かって断る気まずさ」を見落としていたことだったにゃ。

つまり、頼む人は断るのをかんたんなことだと思っていて、断る人は断るのを大ごとだと思っている。「NO」の重さは、言う側にだけ、ずっしりとかかっていたにゃ。

ただ、どちらの研究もアメリカで、ごはんや小さな頼みごとのような、気軽な場面のものにゃ。結婚式のような大きな誘いや、上下関係のある相手、日本の人づきあいで同じになるかは、まだ確かめられていないにゃ。

🗓️ 今に置き換えて考える

私たちの
「断りにくさ」の形

実験の人たちは、「家でゆっくりしたいから」と、まっすぐ断っていたにゃ。

いまの私たちの断り方は、もう少しまわり道をしているかもしれないにゃ。

つくる理由

「その日、先約があって」

ほんとうは何もない土曜なのに、予定をひとつこしらえる。「ゆっくりしたい」では失礼な気がして、理由を立派にしたくなるにゃ。実験の断る理由は、その「ゆっくりしたい」そのものだったにゃ。理由をこしらえなくても、断りの返事として、ちゃんと通じていたにゃ。

のばす返事

「行けたら行く」

断りきれずに、返事を当日まで持ち越す。断る側の頭の中で「NO」が大ごとになっているほど、はっきり言うのを先のばしにしたくなるのかもしれないにゃ。そのあいだ、気が重いのは自分のほうにゃ。あいまいな返事が相手にどう届くかは、研究はそこまで調べていないにゃ。

誘う側だった日

幹事をして、「今回はパスで」が来たとき

実験の最後では、先に「誘う側」をやってから「断る側」になった人は、見積もりのずれがなくなっていたにゃ。飲み会の出欠をとったとき、欠席の返事を見て、何を思ったか。「忙しいのかな」「また今度だな」くらいだったなら、あなたの「いいえ」も、たぶん同じくらいの重さで届くにゃ。

あなたならどれ?

行きたくない誘いが来たとき、いまのあなたに近いのはどれ?

🐱 猫の国の研究所より

ここからは、
研究所の考察にゃ。

同じ「いいえ」が、
頼む側に立つと、軽く見える。
断る側に立つと、重く見える。
ふたつの研究は、それを
両側から見ていたにゃ。

人が変わったわけじゃなく、
立つ場所が変わっただけにゃ。
先に誘う側をやった人は、
ずれがなくなっていたくらいにゃ。

断れなかった自分を
「気が弱い」と責める前に、
その重さが、どこで量られたものかを
思い出してみるのはどうかにゃ。
たいていは、自分の頭の中の
はかりで量っている気がするにゃ。

ただし、はかりがまちがっていない相手もいるにゃ。
断るたびに不機嫌になる人、
断ったことをあとまで持ち出す人。
そういう相手の前で「いいよ」が出るのは、
心配しすぎではなく、身を守る知恵にゃ。

断ったら怒鳴られる、
あとで仕返しをされる。
そこまでの相手なら、
見直すのはあなたのはかりではなく、
その関係のほうにゃ。
それは、外にいる信頼できる人やニャンタル、
専門家といっしょに考えることにゃ。

2,000人あまりの答えから、
ひとつだけにゃ。

断られた人が考えていたのは、
「断られた」より
「どうしたのかな」だったにゃ。

あなたが誘って、
断られた日のことを覚えてる?

そのとき思ったことが、
いちばん近い答えかもしれないにゃ。

📚 参考文献

この記事で紹介した研究

📋 研究所のほかのレポートにゃ

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RESEARCH No.7

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Givi, J., & Kirk, C. P. (2024). Saying no: The negative ramifications from invitation declines are less severe than we think. Journal of Personality and Social Psychology, 126(6), 1103-1115. リンク
Flynn, F. J., & Lake, V. K. (2008). If you need help, just ask: Underestimating compliance with direct requests for help. Journal of Personality and Social Psychology, 95(1), 128-143. リンク
Eisenberger, N. I., Lieberman, M. D., & Williams, K. D. (2003). Does rejection hurt? An fMRI study of social exclusion. Science, 302(5643), 290-292.
Woo, C.-W., Koban, L., Kross, E., Lindquist, M. A., Banich, M. T., Ruzic, L., Andrews-Hanna, J. R., & Wager, T. D. (2014). Separate neural representations for physical pain and social rejection. Nature Communications, 5, 5380.
Goleman, D. (1995). Emotional Intelligence: Why It Can Matter More Than IQ. Bantam Books.
Walker, P. (2013). Complex PTSD: From Surviving to Thriving. Azure Coyote.
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com