
…その敏感さは、曇った空気を見張るためだけの力じゃないかもしれないにゃ。
こんなこと、ないにゃ?
部屋に入っただけで、空気がわかる。
友だちのうれしい知らせには、
自分のことみたいに胸が熱くなる。
そのぶん、一日の終わりには、
なんだかぐったりしている。
「気にしすぎ」「敏感すぎ」と
言われてきた人の脳の中を、
のぞいた研究があるにゃ。
アメリカの心理学者アセヴェドさんたち(2014年)は、カリフォルニア州サンタバーバラで、結婚したばかりの人や婚約中の人、18人に協力してもらったにゃ。20代から30代はじめの人たちにゃ。
まず、質問紙で「敏感さ」を測ったにゃ。「ひといちばい敏感な人(HSP)」の尺度と呼ばれるもので、こんな質問が入っているにゃ。
答えからは、不安になりやすさの影響を計算で取りのぞいてあるにゃ。敏感さと心配性を、分けて見るためにゃ。
それから MRI の中で、写真を見てもらったにゃ。自分のパートナーの顔と、知らない人の顔。それぞれ、うれしそうな顔と、悲しそうな顔。
写真の前には「この人は、とてもうれしいことがあって幸せな気持ちです」のような説明が出て、写真は12秒ずつ映ったにゃ。1年後には、そのうち13人に、もう一度同じことをしてもらったにゃ。
敏感な人ほど脳がよく動く、という結びつきがいちばんはっきり出たのは、どの写真だったと思う?
敏感な人ほど、どの写真でも、
注意を向けて、動く準備をする場所が
よく動いていた。
パートナーの顔では、
相手の気持ちを自分に重ねる場所も。
パートナーのうれしそうな顔では、
ごほうびに関わる場所も動いていた
研究者たちの読みは、こうにゃ。敏感な人の脳は、相手の表情に気づき、気持ちを受けとって、応える準備まで進めている。
「気にしすぎ」に見えるとき、体のほうはもう、相手のために半歩動いているのかもしれないにゃ。
おもしろいのは、知らない人の悲しそうな顔では、気持ちを重ねる場所の反応が目立たなかったことにゃ。なんにでも全力で反応しているわけじゃない。近い人と、うれしい気持ちに、とくによく動いていたにゃ。
そして、不安になりやすさを取りのぞいても、この結果は出ていたにゃ。敏感さは、心配性とは別のものとして見えていたにゃ。
この研究の土台には、ひとつの理論があるにゃ。
1990年代に、この研究チームにもいる心理学者のアーロンさんが示した考え方にゃ。生まれ持った気質のひとつで、新しい場面ではまず立ち止まって確かめ、受けとったものを深く味わう。
似た気質は、魚や鳥、サルなど、100を超える種類の生きもので見つかっているにゃ。すばやく動くやり方と、よく確かめるやり方。どちらも生きのびる作戦として受けつがれてきた、という説にゃ。
敏感な人は、つらい環境の影響を受けやすい。でもそのぶん、あたたかい家庭や、よい学びや、カウンセリングのようなよいことからも、人より多くを受けとる。そう考えて、研究を集めている研究者たちもいるにゃ。
「空気が読めるのは、意識より先に、体が安全かどうかを感じ取っているから」という説明も、よく見かけるにゃ。ポリヴェーガル理論という説から来たもので、感覚としてうなずける人も多いと思う。ただ、その土台にある神経の仕組みには、専門家から強い異論が出ているにゃ。
それに、この実験で見えた敏感さは、危険の見張りというより、うれしい顔にもよく動く、相手のほうへ向かっていく動きに近かったにゃ。
つらい場所で長く過ごしたあとに、まわりを見張るくせが残る人もいるにゃ。それは、生まれ持った敏感さとは分けて考えたい話にゃ。敏感な人がみんな傷ついてきたわけでも、見張るくせのある人がみんな生まれつき敏感なわけでもないにゃ。
アセヴェドさんたちの研究は18人で、結婚の前後という、気持ちの動きやすい時期の人たちだったにゃ。研究者たち自身も、もっといろいろな人で確かめたい、と書いているにゃ。
敏感な人は「5人に1人」とよく言われるにゃ。2018年に、アメリカの大学生906人の答えを、似た人どうしのまとまりに分けてみた研究があるにゃ。
敏感さが「高め」のまとまりに入ったのは、どのくらいだったと思う?
イギリスの大学生で確かめた続きの調べでは、高めの人たちは、楽しい動画を見たあと、ほかの人たちより気分が大きく上がっていたにゃ。
不安になりやすさも高めだったけれど、よいことへの反応も大きかったにゃ。受けとるものが多いぶん、ゆれも、よろこびも大きい。そんな姿が見えてくるにゃ。
実験の人たちが見たのは、MRI の中で12秒ずつ映る、動かない写真だったにゃ。
暮らしの中の顔は、動くし、声もついてくる。朝から夜まで、次から次へとやってくるにゃ。日本では「空気を読む」ことが、できてあたりまえのように求められる場面も多いにゃ。
実験で敏感さがはっきり出たのは、知らない人よりパートナーの顔だったにゃ。近い人の顔ほど、よく届くのかもしれないにゃ。「ただいま」の声がいつもより低いだけで、相手の一日がわかってしまう。わかるのは力にゃ。でも、わかったことを全部、自分が何とかする宿題にしなくていいにゃ。「なにかあった?」と一度だけ聞いて、あとは相手にまかせる手もあるにゃ。
うれしい顔によく動くのも、この実験で見えた敏感さの、もうひとつの面にゃ。友だちの誕生日に、何軒もお店を回ってプレゼントを選ぶ。「この人なら、これが好きそう」がふっと浮かぶ。「よく気がつくね」と言われてきたなら、それは敏感さの、表の顔なのかもしれないにゃ。
論文の研究者たちは、敏感な人が、刺激の強いものにふれたあとに回復の時間がいると話すことにもふれているにゃ。うれしい顔にもよく動くなら、楽しかった集まりのあとに疲れが出るのも、ふしぎじゃないにゃ。ねこたちが思うに、次の日の予定を少し空けておくのは、楽しさの後片づけのようなものにゃ。
あなたの敏感さが、いちばん顔を出すのはどんなとき?

グラフの下の花の名前を、
ねこたちはしばらく眺めていたにゃ。
このたとえは、研究者たちが
もとからあった言い方を借りたものにゃ。
タンポポは、道ばたのすき間でも、
だいたい同じように咲く。
ランは、合う場所ではとびきりよく咲いて、
合わない場所では、ひどくしおれる。
イギリスの大学生たちの中のランは、
楽しい動画のあと、
ほかの人たちより気分が上がったにゃ。
よいことも、多めに受けとる花にゃ。
だからランがしおれて見えるときは、
ランの弱さより、
置かれた場所のほうを
映しているのかもしれないにゃ。
ここから先は、
花のたとえを、ねこたちが
少し先まで延ばしてみた話にゃ。
人は花ほど、
置き場所を選べないことも多いにゃ。
それでも、「気にしすぎ」と言われて
しおれた日のことを思い出すと、
ひとつ聞いてみたくなるにゃ。
曇っていたのは、
あなたの感じ方だったのか。
それとも、部屋の空気だったのか。
「気にしすぎ」は、
よく聞く言葉だけれど。
「喜びすぎ」と
言われる人は、
あまりいないにゃ。
だれかの機嫌が曇ったのに気づくのも、
友だちの知らせに胸が熱くなるのも、
同じ敏感さが受けとっているにゃ。
なのに名前がつくのは、
いつも曇ったほうだけ。
実験の脳がいちばんよく動いたのは、
近い人の、うれしそうな顔だったにゃ。
あなたの敏感さには、
まだ晴れの日の呼び名が
ついていないだけなのかもしれないにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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