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ふたりの科学

言い合いが多いうちは、もうだめなの?

…あとで別れた夫婦にあったのは、けんかの激しさより、笑いの少なさだったにゃ。

この研究を一枚で
問い
離婚した夫婦の、最初の会話には何が出ていたのか。早く別れた夫婦と、あとで別れた夫婦でちがうのか
どこで
アメリカ・インディアナ州で、新聞広告で集めた79組の夫婦(Gottman & Levenson 2000)
どうやって
8時間以上離れて過ごした日に、「今日あったこと」と「ずっともめていること」を15分ずつ話してもらって録画。その後14年、離婚したかどうかを追った
わかったこと
早く別れた夫婦は、もめごとの会話で批判・軽蔑・防御・壁が多かった。あとで別れた夫婦は、それらは多くなく、関心やユーモアなどのあたたかい表情が少なかった
その後の研究
よく聞く「93%の精度」は、満足度などの質問も入れた式を、同じ79組に後から当てはめた値。予測の式は、別のデータで確かめると当たりにくくなる、という指摘がある(2001年)

こんな言い合い、ないにゃ?

車の点検、また予約してないの?
忘れてたわけじゃないし。忙しかったんだよ
いつもそう。言わないと何もしないよね
はいはい、どうせ全部こっちが悪いんでしょ
(…もういい。テレビの音だけが大きい)

こんな夜のあと、
「こんなことばかりで、
うちはもうだめなのかも」
と思ったことがあるかもしれないにゃ。

反対に、もう何年も
言い合いをしていない夫婦もいるにゃ。

それは、安心していいことなのかにゃ。

🧪 研究 14年の追跡

79組の夫婦が、
実験室で話した30分

心理学者のゴットマンさんとレベンソンさん(2000年)は、アメリカ・インディアナ州の79組の夫婦を、14年にわたって追いかけたにゃ。

夫婦を集めたのは1983年。新聞広告に応えた人たちで、多くは30歳前後だったにゃ。

ふたりには、8時間以上離れて過ごした日に、実験室へ来てもらったにゃ。

まず「今日あったこと」を15分。次に「ずっともめていること」を15分。そのようすを録画して、ことばのひとつずつを、表情や声の調子もふくめて記録したにゃ。

それから14年、別れたかどうかを確かめ続けたにゃ。

🧪 もめごとの会話で数えたもの

とくに見た、
4つの話し方

記録のなかで、とくに見たのが次の4つにゃ。ゴットマンさんが本の中で「黙示録の4騎士」と名づけた話し方にゃ。

批判

出来事でなく、人を責める

「点検を忘れてたね」ではなく、「いつもそう」「何もしない」。困った一件が、相手の人がらの話にすり替わるにゃ。

軽蔑

相手を下に見る

皮肉、あきれた顔、鼻で笑う、小ばかにした口調。ことばより先に、表情に出ることも多いにゃ。

防御

受け取る前に、押し返す

「だって忙しかった」「そっちこそ」。言われたことを聞く前に、言い訳や言い返しが出るにゃ。

壁

聞き手が、会話から引く

うなずきも返事もなくなって、相手の話を受けとめる人がいなくなるにゃ。

14年のあいだに、79組のうち22組が離婚したにゃ。別れた時期は、早めと、ずっとあとの二つに分かれたにゃ。

予想してみるにゃ

早く別れた夫婦と、あとで別れた夫婦。最初の会話に、ちがいはあったと思う?

📊 結果の読み方

別れ方には、
二つの道があった

📊 わかったこと

早く別れた夫婦:
もめごとの会話で、4つの話し方が多かった。
とくに、ふたりとも防御と軽蔑が多かった

あとで別れた夫婦:
4つの話し方は、別れなかった夫婦と変わらない。
少なかったのは、関心・ユーモア・やさしさ

つまり、言い合いのとげが多い家ほど、早く行き詰まりやすかったにゃ。

でも、けんかが静かな家が安心とは限らなかったにゃ。あとで別れた夫婦は、ぶつかり合うのではなく、あたたかさが薄いまま年月を重ねていたにゃ。

おもしろいのは、「今日あったこと」を話すだけの、記録する人の多くが「退屈」と感じたような会話にも、差が出ていたことにゃ。

録画には、妻が子どもの今日のできごとを弾んで話しても、夫は気のない返事。あとで夫が仕事の話を弾んで話すと、今度は妻がいらだって返す。そんな場面もあったにゃ。

🤔 なぜ、二つの道に分かれるのか

とげは早く効き、
冷えはゆっくり効く

研究者たちの説明は、こうにゃ。

とげの多い家

いっしょにいること自体が、つらくなる

責められる、見下される、話を押し返される。それが毎回続くと、同じ家にいることが早いうちに限界になる、と考えられているにゃ。

あたたかさの薄い家

続けられてしまう、からこそ

ぶつからないから、暮らしは回るにゃ。でも笑いや関心のない毎日は、少しずつ効いてくる。さびしさががまんできなくなったころに、別れを選ぶのかもしれない、と研究者たちは書いているにゃ。

もうひとつ、研究者たちは順番にも目をつけていたにゃ。「今日あったこと」の会話で笑いや関心が多い夫婦ほど、もめごとの話で、片方が責めて片方が黙りこむ形になりにくかったにゃ。

けんかの言い方は、けんかの場だけで決まるわけではないのかもしれないにゃ。

🔍 その後の研究

よく聞く「93%」は、
どこから来たのか

この論文の要約には、「93%の正確さで離婚を予測できた」とあるにゃ。

ただこの数字は、会話だけで出したものではないにゃ。結婚の満足度や「別れを考えたことがあるか」という質問も入れた式を、同じ79組のデータに後から合わせて出した値にゃ。同じ14年のデータを使ったのちの論文では、研究者たち自身が「後からの分析なので、結論は仮説づくりのためのもの」と書いているにゃ。

2001年に、別の研究者たちが、離婚を当てる式を、式を作ったのとは別の人たちに当てはめて確かめたにゃ。すると、当たる割合は大きく下がったにゃ。

結論は、「別のデータで確かめていない予測は、どんなに数字がすごくても、かなり用心して読むこと」だったにゃ。

4つの話し方が多い夫婦ほど早く別れやすい、という傾向は見えたにゃ。でもそれは、「この話し方が出たら離婚」と言い当てる占いではないにゃ。

📱 今に置き換えて考える

いまの家の会話は、
いろんなことと重なっている

研究の夫婦は、1983年のアメリカで、実験室という静かな部屋で向かい合って話したにゃ。ほかに気を取られるものは何もなかったにゃ。

いまの日本の家に置き換えると、研究所のねこたちには、こんなふうに見えるにゃ。

「おかえり」のあと

「へえ」が、ながら聞きになる

帰ってきた人が話しはじめるのは、夕飯の支度や、お風呂の声かけや、明日の準備と重なる時間にゃ。手が離せないのはお互いさま。ただ、あとで別れた夫婦で少なかったのは、こういう何気ない会話での関心や笑いだったにゃ。「あとで聞かせて」と言って、ほんとうにあとで聞く。それだけでも、ちがうのかもしれないにゃ。

けんかのない家

静かなのは、仲がいいから?

波風を立てないのが大人、という空気は、いまの日本にもあるにゃ。言い合いが少ないこと自体は悪くないにゃ。でもこの研究で、あとで別れた夫婦は、けんかが多かったわけではなかったにゃ。気にかけたいのは、言い合いの数より、いっしょに笑ったり「それで?」と聞いたりする時間が残っているか、かもしれないにゃ。

けんかの次の朝

「なかったこと」にして流す

研究では、もめごとの話のあと、最後にふたりで楽しい話をしてもらってから帰したにゃ。気持ちを戻すためにゃ。日本の家では、次の朝なにごともなかったように「おはよう」で流すことも多いにゃ。それで戻れる日もあるにゃ。ただ、流したあとに、ひとつ笑える話がはさまるかどうか。研究はそこまで見ていないけれど、そこに差が出るのかもしれないにゃ。

あなたならどれ?

言い合いになったとき、あなたにいちばん出やすいのはどれ?

🐱 猫の国の研究所より

研究所のねこたちが
数え直してみたこと

「いつもそう」「だって」。

ここまで読みながら、
うちの言い合いに、4つのうち
いくつ出ているか、
指を折った人もいるかもしれないにゃ。

ねこたちも、79組を数え直してみたにゃ。

14年で別れたのは22組。
4つの話し方が目立っていたのは、
そのうち早く別れた9組のほうだったにゃ。
あとの13組は、言い合いの言い方では、
別れなかった夫婦と見分けがつかなかった。

4つを数える指からは、
別れた夫婦の半分より多くが
こぼれ落ちていたにゃ。

よく聞く「93%」も、
同じ79組に、あとから式を合わせた数字だったにゃ。
ここに書いたのは、
1983年に集まった79組の録画から
ねこたちが読んだことで、
あなたの家の先行きを当てる話ではないにゃ。

ただ、ひとつ言えそうなのは、
4つの話し方は、けんかのとげをはかる物差しで、
ふたりのあたたかさまでは
はかっていなかった、ということにゃ。

📼

録画は、けんかからではなく、
「今日あったこと」から
はじまっていたにゃ。

8時間以上はなれて過ごした日の、
なんでもない報告の15分。
記録する人の多くが
退屈だと感じたその会話にも、
14年後につながる差が出ていたにゃ。

けんかの夜をふり返るより、
夕方の「今日さ」のあとに
どんな返事が行き来したかのほうが、
ふたりのことをよく映している
のかもしれないにゃ。

📚 参考文献

この記事で紹介した研究

📋 研究所のほかのレポートにゃ

🚪
RESEARCH No.85

離婚を考える私は、わがままなの?

…望んだのは、離婚では妻が約7割。結婚していないふたりの別れでは、ほぼ半々だったにゃ。

📈
RESEARCH No.86

「子育てが終われば、また戻るよ」。このしんどさ、待てば戻る?

…結婚の満足度は「U字で戻る」と言われてきた。同じ人を17年追いかけた調査があるにゃ。

⏰
RESEARCH No.87

親が離婚したから、恋がこわいのかな?

…「大人になってから出てくる」とも、「子どもは順応する」とも聞く。25年追いかけた答えは、そのあいだにあったにゃ。

Gottman, J. M., & Levenson, R. W. (2000). The timing of divorce: Predicting when a couple will divorce over a 14-year period. Journal of Marriage and the Family, 62(3), 737-745. リンク
Gottman, J. M. (1994). What Predicts Divorce? The Relationship Between Marital Processes and Marital Outcomes. Lawrence Erlbaum Associates.
Gottman, J. M., & Levenson, R. W. (2002). A two-factor model for predicting when a couple will divorce: Exploratory analyses using 14-year longitudinal data. Family Process, 41(1), 83-96. リンク
Heyman, R. E., & Smith Slep, A. M. (2001). The hazards of predicting divorce without crossvalidation. Journal of Marriage and Family, 63(2), 473-479. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
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