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ふたりの科学

離婚を考える私は、わがままなの?

…望んだのは、離婚では妻が約7割。結婚していないふたりの別れでは、ほぼ半々だったにゃ。

この研究を一枚で
問い
離婚をより望むのは、妻と夫のどちら? 結婚していないカップルの別れでも同じ?
どこで
アメリカの全国調査で、2009年に異性のパートナーがいた2,538人を、2015年のはじめまで約6年追いかけた(Rosenfeld 2018)
どうやって
別れた人に「どちらが別れをより望んだか」を聞き、結婚・同棲・いっしょに住んでいない恋人で比べた(別れは371件、うち離婚は92件)
わかったこと
離婚では妻の側が69%。結婚していないカップルの別れは53〜56%で、半々と区別できなかった。結婚している妻は、夫より関係の満足が少し低かった
その後の研究
1995年の離婚の記録4万6千件あまりでも、申し立てたのは妻が3分の2あまりで、いちばん強く結びついていたのは子どもを引き取る見込みだった(2000年の研究)。なぜ妻に偏るのかは、まだはっきりしていない

こんな話、聞いたことないにゃ?

私が切り出した
夫は最後まで信じられない顔をしてた
あんなにつらかったのに、気づいてなかった
(私だけが、ずっと我慢してた)

「最後の一言」を口にするのは、
妻のほうが多いらしい。

それは、ひとりひとりの性格の話なのか。
それとも、結婚という形に
何かがあるのか。

数えてみた人がいるにゃ。

🧪 研究 別れを「より望んだ」のは

2,538人を、
6年追いかけた全国調査

社会学者のローゼンフェルドさん(2018年)は、アメリカの全国調査のデータを使ったにゃ。2009年に異性のパートナーがいた2,538人を、2015年のはじめまで、約6年追いかけた調査にゃ。

そのあいだに別れたのは371件。そのうち離婚は92件。

別れた人に「別れをより望んだのは、あなたと相手のどちら?」と聞いて、結婚していた人、結婚せずにいっしょに住んでいた人、いっしょに住んでいない恋人とで比べたにゃ。

予想してみるにゃ

離婚では、妻の側が望んだ割合は約7割だったにゃ。では、結婚せずにいっしょに住んでいたカップルの別れでは、女性の側が望んだ割合はどのくらいだったと思う?

📊 結果の読み方

妻に偏るのは、
結婚しているときだけ

📊 離婚した92件のうち

妻の側が離婚をより望んでいた割合

69%

「ふたりとも同じくらい」は半分ずつに数えて

離婚の数は多くないけど、半々とははっきり違う大きさだったにゃ。1940年代からのほかの調査でも、だいたい3分の2と出ていて、それとも合っていたにゃ。

いっぽう、結婚していないふたりの別れは、男女ほぼ半々。だとしたら、女性がもともと「別れたがり」なわけじゃないにゃ。結婚のなかで、何かが起きているのかもしれないにゃ。

もうひとつ。だれが答えたかでも、数字が変わったにゃ。

離婚で、妻の側が望んでいた割合(答えた人別)
妻が答えた0%
夫が答えた0%
ふたつを合わせて0%

どちらが答えても、半分より多かったにゃ。

別れのあとでは、人は自分の役を少し大きめに覚えるらしいにゃ。妻も夫も、それぞれ「自分が決めた」に少し寄せて答えている。

それでも、夫の側から見ても、離婚を望んでいたのは妻のほうが多かったにゃ。

🤔 なぜ、結婚すると妻に偏るのか

満足の、
小さな差

ローゼンフェルドさんは、よく言われる理由をひとつずつ確かめたにゃ。

「女性のほうが関係の不調に敏感だから」なら、結婚していないカップルでも女性が多くなるはず。でも、そうはならなかったにゃ。ふたりの収入や学歴の差、妻の年齢、子どもがいるかどうかも、妻に偏る理由を説明できなかったにゃ。

見えてきたのは、結婚している人の満足の差だったにゃ。調査の最初の年に、ふたりの関係が「とてもよい・よい・まあまあ・よくない・とてもよくない」のどれかを聞いていたにゃ。

結婚している人の答え(2009年)
「とてもよい」夫0%
「とてもよい」妻0%
「まあまあ」以下 夫0%
「まあまあ」以下 妻0%

結婚していないカップルでは、男女の答えにほとんど差がなかったにゃ。

差は小さいにゃ。多くの妻は、幸せに結婚しているにゃ。

それでも、この小さな差だけで、離婚を望む側が妻に多くなることは起こりうる。ローゼンフェルドさんは、そう考えているにゃ。

では、なぜ結婚している妻だけ、少し満足が低いのか。ひとつの説は、結婚という形そのものにゃ。

家事の分け方の男女差は、同棲より結婚のほうが大きい。これまでの研究で、くり返しそう出ているにゃ。共働きの夫婦を調べた別の研究でも、家事の分け方を「不公平」と感じていると、離婚につながりやすかったのは妻の側だけだったにゃ。

ただ、別の説もあるにゃ。結婚するかどうかは男性の側が主導しやすいので、男性の好む役割分担のカップルほど、結婚に進みやすいのかもしれない。

どちらなのかは、まだ決まっていないにゃ。

🔍 その後の研究

離婚の記録でも、
申し立てたのは妻が多かった

「望んだ」ではなく、だれが離婚を申し立てたかを、記録で数えた研究もあるにゃ。

2000年に発表された研究では、アメリカの4つの州の、1995年の離婚の記録4万6千件あまりを調べたにゃ。

📊 1995年の離婚の記録

妻の側が離婚を申し立てた割合

3分の2あまり

州によって少しずつ違う

いちばん強く結びついていたのは、子どもを引き取る見込みだったにゃ。引き取ると見込める側が、申し立てることが多かったにゃ。

それが損得の話なのか、家事や子育てをひとりで抱えた疲れの話なのかは、まだわかっていないにゃ。

オーストラリアの別の研究でも、子どもがいることは夫と妻どちらの「別れよう」もおさえていて、妻に偏る理由は子どもとは別のところにありそうだ、と見ているにゃ。

ローゼンフェルドさんも、「なぜ妻が離婚を望むことが多いのかは、まだはっきりしない」と書いているにゃ。

📱 今に置き換えて考える

「ふたりの暮らし」が
「家」になるとき

研究のデータは、2009年から2015年のアメリカのものにゃ。手がかりとして挙がっていたのは、家事の分け方だったにゃ。

いまの日本の暮らしに置き換えると、結婚して増えるものは、家事だけじゃないかもしれないにゃ。

結婚して増える役目

「家の窓口」が、ひとりに寄る

義実家とのLINEグループ、親戚へのお礼、保育園の連絡アプリ、名字が変わったあとの手続き。同棲のころにはなかった役目が、結婚するとまとめてやってくるにゃ。調査はそこまで聞いていないけれど、共働きでも、その窓口がいつのまにか妻に寄っている家は、少なくないかもしれないにゃ。

見えにくい差

小さな引っかかりは、口に出されない

研究では、あとで離婚した人のなかにも、最初の年には関係を「とてもよい」と答えていた人が少なくなかったにゃ。忙しい毎日のなかでは、小さな引っかかりほど「いま言うほどじゃない」と後回しになりやすいにゃ。

できること

責めるためじゃなく、並べて見る

「私ばかり」と言う前に、ふたりの役目を書き出して並べてみる。共有のメモやカレンダーに置くだけでも、相手に見えていなかったものが見えることがあるにゃ。

理由がひとつに決まっていないぶん、ふたりの家の形は、ふたりで見直していいと思うにゃ。

あなたならどれ?

もし、ずっと引っかかっていることをパートナーに伝えるとしたら、いまのあなたはどれに近い?

🐱 猫の国の研究所より

研究所のねこたちが
見比べたこと

「離婚を考えるなんて、
私のわがままなのかな」。

ねこたちはこの問いを、
結婚していないふたりの別れと
並べてみたにゃ。

離婚を望んだのは、妻が7割。
それだけ見れば、
「やっぱり女のほうが」と
読めてしまう数字にゃ。

でも、結婚していないふたりの別れは、
男女ほぼ半々だったにゃ。
偏りが出たのは、
結婚しているときだけ。

では、結婚の何がそうさせるのか。
ここから先は、まだ地図に
道が描かれていないところにゃ。

家事の分け方の差かもしれない。
男の人の好む分け方のふたりほど
結婚に進む、というだけかもしれない。
ローゼンフェルドさん自身が
「まだはっきりしない」と書いた所に、
ねこたちも、旗は立てないでおくにゃ。

📄

「結婚している女性の多くは、
幸せに結婚している」

離婚の7割を数えたローゼンフェルドさんが、
結論のところに書きそえた一文にゃ。

望んだのは妻が多い。
それでも、妻の多くは幸せでいる。
ふたつが並んで本当なのは、
夫と妻の満足の差が、
10人に1人ほどの小ささだからにゃ。

大きな不満じゃないぶん、
外からも、本人からも見えにくい。
「こんなことで」と
自分を疑いたくなるのは、
たぶん、その小ささのせいにゃ。

📚 もっと深く知りたい人へ

猫の国には
こんな場所もあるにゃ

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📚 参考文献

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Rosenfeld, M. J. (2018). Who Wants the Breakup? Gender and Breakup in Heterosexual Couples. In D. F. Alwin, D. H. Felmlee, & D. A. Kreager (Eds.), Social Networks and the Life Course (pp. 221-243). Springer. リンク
Brinig, M. F., & Allen, D. W. (2000). "These boots are made for walking": Why most divorce filers are women. American Law and Economics Review, 2(1), 126-169. リンク
Hewitt, B. (2009). Which spouse initiates marital separation when there are children involved? Journal of Marriage and Family, 71(2), 362-372. リンク
Frisco, M. L., & Williams, K. (2003). Perceived housework equity, marital happiness, and divorce in dual-earner households. Journal of Family Issues, 24(1), 51-73. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
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