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ふたりの科学

「家事手伝うよ」に、ありがとうと言いつつモヤッとするのはなぜ?

…「手伝う」の一言には、「だれの仕事か」が隠れてるにゃ。

この研究を一枚で
問い
夫が家事を「手伝う」夫婦と、「いっしょに担う」夫婦は、何がちがう?
どこで
アメリカの共働き夫婦20組(学校に通う年ごろの子どもがいる)への聞き取り(Coltrane 1989)
どうやって
家事と育児を、だれが段取りし、だれが割りふり、だれが実際にやっているかを、夫婦の話から読み取った
わかったこと
約半分の家庭では、夫は多くの家事をしていても「手伝う人」の役にとどまっていた。残りの家庭では、夫が同じだけの責任を持っていた。毎日いっしょに子育てをすることと、夫婦の話し合いが続いていることが、分け合う形を支えていた
その後の研究
家事についてくる「先回りして気づく」「できたか見届ける」という考える仕事は、女性が多く担っていた(2019年・35組への聞き取り)

こんな言葉、聞いたことないにゃ?

今日、家事手伝ったから!
俺ってけっこうやるほうだよね
言ってくれれば手伝うのに
(…うん、ありがとう)
(でも、なんかモヤッとする)

善意で言ってる。
感謝もしてる。
なのに、どこかで引っかかる。

その引っかかりのもとを、
夫婦の話から
ていねいに読み取った研究があるにゃ。

🧪 研究 20組の夫婦の話から

家のことを、
だれが段取りして、
だれがやっている?

社会学者のコルトレーンさん(1989年)は、アメリカで、学校に通う子どもがいる共働きの夫婦20組に、家事と育児をどう分けているかを聞いたにゃ。

見たのは、やっている量だけじゃないにゃ。だれが段取りして、だれが割りふって、だれが実際に手を動かしているのか。それを、夫婦それぞれの話から読み取っていったにゃ。

この20組は、夫もそれなりに家事や育児をしている家が多かったにゃ。

予想してみるにゃ

夫が家事をたくさんしている家。家のことの責任も、ふたりで分け合えていたと思う?

📊 結果の読み方

ちがいは、量より
だれの仕事として
回っているか

約半分の家庭

夫は「手伝う人」

昔なら母親がしていた家事を、夫もたくさんしていたにゃ。それでも、家のことの責任は妻にあって、夫はそれを手伝う役にとどまっていたにゃ。

残りの家庭

夫も同じだけ担う

夫が、家のことに妻と同じだけの責任を持っていたにゃ。

暮らしの言葉にすると、こんな感じにゃ。

お風呂も洗ってくれる。ごみも出してくれる。でも「洗剤がもうない」「明日はごみの日」と気づいて頼むのが妻なら、どれだけ動いてくれても、家のことは妻の持ちもののまま。夫はそれを手伝っている側にいるにゃ。

分け合う形になっていた家を支えていたのは、毎日いっしょに子育てをすることと、夫婦の話し合いが続いていることだったにゃ。そのなかで夫も「ちゃんと子どもの世話ができる人」として、ふたりのあいだで見られるようになっていったにゃ。

🤔 なぜ、モヤッとするのか

「ありがとう」の重さが、
ふたりでちがう

ひとつの説明として、「感謝の経済」という見方があるにゃ。共働き夫婦への聞き取りをまとめて、1989年にベストセラーになった本で語られたものにゃ。

感謝の経済

何が「贈りもの」で、何が「当たり前」か

夫の家事は、もともとの期待が低いぶん、大きな贈りものに見えやすい。妻が毎日していることは、当たり前として数えられにくい。夫婦のあいだのそんな感じ方を、お金のやりとりにたとえた見方にゃ。

「手伝ったから!」と言う人は、きっと贈りものをしたつもりにゃ。

でも、毎日それを回している側から見ると、もともとふたりの家のこと。ありがとうと言いながらモヤッとするのは、このずれのせいかもしれないにゃ。

オランダの夫婦を調べた別の研究でも、男らしさ・女らしさの思いこみや、言葉にされない決まりごとが、結婚のなかの平等をゆっくりにしているのではないか、と論じられているにゃ。

🔍 その後の研究

「言ってくれれば」の
「言う」までの仕事

コルトレーンさんの研究から30年ほどたった2019年に、アメリカの35組の夫婦に聞いた研究があるにゃ。家のことには、手を動かす前の考える仕事がついている、と整理したにゃ。

①

先回りして気づく

「そろそろ子どもの靴がきつそう」。必要になることを、先に見つけるにゃ。

②

やり方を探す

どのお店で、どれにするか。選べるものを調べるにゃ。

③

決める

探したなかから、どれにするかを選ぶにゃ。

④

ちゃんとできたか見届ける

買えたか、届いたか、合っていたか。最後まで気にかけるにゃ。

女性が多く担っていたのは、とくに「気づく」と「見届ける」だったにゃ。「決める」は、男女でほぼ同じだったにゃ。

「言ってくれれば手伝うのに」の「言う」までの部分が、ちょうどここにあたるにゃ。

📱 今に置き換えて考える

いまの日本の、
「手伝う」と「担う」

研究の夫婦は、1980年代のアメリカの共働き夫婦だったにゃ。

いまの日本はどうかにゃ。総務省が5年ごとに「1日の時間の使い方」を調べているにゃ。6歳未満の子どもがいる夫婦で、家事・育児・買い物などにかける時間を見ると、夫は2001年の48分から、2021年には1時間54分になったにゃ。

じゃあ、そのあいだに妻の時間はどうなったのかにゃ。

予想してみるにゃ

2001年から2021年の20年で、妻の家事・育児の時間はどう変わったと思う?

この数字だけでは、理由まではわからないにゃ。子育てにかける時間が全体に増えたのかもしれないにゃ。ただ、「夫がやってくれるようになった」と「妻の荷物が軽くなった」は、同じではないことは見えてくるにゃ。

通知の行き先

「気づく」は、いまスマホに届く

保育園や学校の連絡アプリ、家族のLINEグループ、義実家からの連絡。いまの「先回りして気づく」仕事の多くは、通知の形でやってくるにゃ。その通知がひとりのスマホにだけ届く家では、気づく役もひとりに寄りやすいかもしれないにゃ。

LINEで頼める時代

頼むのは楽に、頼むまでは重いまま

「牛乳買ってきて」と送れば、帰りに買ってきてくれる。頼むのはずいぶん楽になったにゃ。でも、牛乳がないと気づいて、送るところまでは、いまも頼む側の仕事のままにゃ。

できること

用事ではなく、持ち場ごと渡す

「ごみ出しお願い」ではなく、「ごみの日を覚えて、袋を買い足すところまで」をひとまとめに。連絡アプリの通知を、ふたりのスマホに来るようにしておくのも、ひとつのやり方にゃ。

どう分けるかに、決まった正解はないにゃ。研究の夫婦がそうだったように、それぞれの家で話しながら決めていくことなんだと思うにゃ。

あなたならどれ?

「手伝うよ」と言われたとき、いまのあなたの気持ちに近いのは?

🐱 猫の国の研究所より

ここからは、
研究所の考察にゃ。

「手伝う人」は、
夫ひとりの呼び名に見えて、
じつは家の中の席の名前にゃ。

手伝う人がいる家には、
かならず「持ち主」の席もある。
洗剤が切れそうだと気づいて、
頼んで、できたかを見ている人の席にゃ。

20組のうち、持ち主の席に
ふたりで座っていた家にあったのは、
毎日いっしょにする子どもの世話と、
途切れずに続く夫婦の話し合い。
そのなかで、ふたりとも
夫を「ちゃんと世話ができる人」と
見るようになっていたにゃ。

「手伝うよ」と言う人に、
たぶん悪気はないにゃ。
持ち主の席に、
まだ座ったことがないだけ
なのかもしれない。

そしてモヤッとするのは、
その席の名前に
先に気づいたほうにゃ。

20組の夫婦の話から、
ねこたちが読めたのはここまでにゃ。

「感謝の経済」の帳簿を、
ねこたちも少しのぞいてみたにゃ。

「ありがとう」は、
贈りもののほうにだけ
つきやすいにゃ。

「手伝ったよ」には、ありがとう。
毎日回している家のことには、
あまり言われない。
帳簿の上で、ありがとうは
いつも同じ向きに流れていくにゃ。

この一週間、
あなたが言った「ありがとう」と、
言われた「ありがとう」。
どっちが多かったかにゃ。

📚 もっと深く知りたい人へ

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📚 参考文献

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Coltrane, S. (1989). Household Labor and the Routine Production of Gender. Social Problems, 36(5), 473-490. リンク
Hochschild, A. R., with Machung, A. (1989). The Second Shift: Working Parents and the Revolution at Home. Viking.
Komter, A. (1989). Hidden power in marriage. Gender & Society, 3(2), 187-216. リンク
Daminger, A. (2019). The Cognitive Dimension of Household Labor. American Sociological Review, 84(4), 609-633. リンク
総務省統計局 (2022). 令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の概要. 表2-2「6歳未満の子供を持つ夫・妻の家事関連時間の推移」. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com