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ふたりの科学

ケンカになると、追いかけるのはいつも私のほう?

…追う側と黙る側を分けていたのは、女か男かより、「変えてほしい」がどちらにあるかだったにゃ。

この研究を一枚で
問い
ケンカで「話したい人」と「黙る人」に分かれるのは、男女の体のちがいのせい?
どこで
アメリカで、男女の夫婦・男性同士・女性同士のカップル、あわせて63組(Holley ほか 2010)
どうやって
ふたりの間でずっと意見が合わないことを15分話し合ってもらい、録画を見た人が「追う」「黙る・引く」に点をつけた
わかったこと
「黙る・引く」も「追う」も、3つのカップルでほとんど差がなかった。形を分けていたのは、相手より強く変えてほしいと思っているかどうか
その後の研究
4か国の調査では、平均すると「女性が追い、男性が引く」のほうが多かった。追う・引くのやりとりが多いふたりほど、関係に満足していなかった

こんなケンカ、ないにゃ?

ねぇ、ちゃんと話そう
…
なんで黙るの
今は無理。ちょっと一人にして
(離れたい時こそ、話したいのに)

追えば追うほど、彼は逃げる。
こっちは話したいのに、
彼はどんどん閉じていく。

よく聞くのは
「男と女は、ホルモンがちがうから」。

ほんとうに、そうなのかにゃ。

🧪 研究 男女ではないカップルでは?

女性同士、男性同士の
カップルにも
ケンカをしてもらった

「ホルモンのちがい」の話の元のひとつは、2000年に出された、ストレスを受けた女性は「世話をし、仲間とつながる」に向かいやすいのでは、という仮説にゃ。動物の研究も多く集めて組み立てた考えで、夫婦げんかを見たものではなかったにゃ。

カリフォルニア大学バークレー校のホリーさんたち(2010年)は、ケンカそのものを見て確かめたにゃ。

男性と女性の夫婦21組、男性同士21組、女性同士21組。あわせて63組に、ふたりの間でずっと意見が合わないことを15分話し合ってもらったにゃ。その録画を見た人が、ひとりずつ「追う」と「黙る・引く」に点をつけたにゃ。

もし「追う・黙る」が男女の体のちがいから来るなら、同性のカップルでは同じ形にならないはずにゃ。

予想してみるにゃ

男性同士・女性同士のカップルで、「黙る・引く」の多さはどうだったと思う?

📊 結果の読み方

分けていたのは、
どちらが変えてほしいか

📊 わかったこと

「黙る・引く」も「追う」も、
カップルの種類で差はなかった。

相手より強く変えてほしい人ほど追い、
そのぶん相手が黙っていた

男女の夫婦でも、同性のカップルでも、同じ形だったにゃ。

つまり、ケンカの夜にあなたが「話そう」と追いかけるのは、女性だからというより、その話であなたが変えてほしい側に立っているから、かもしれないにゃ。

彼が黙るのも、男性だからというより、その話で「変えてほしい」と言われている側にいるから。

話題が変われば、立つ側も変わりうるにゃ。

🤔 なぜ、変えてほしい側が追うのか

言わないと変わらない人と、
黙っていれば
今のままでいられる人

ひとつの説明はこうにゃ。

何かを変えてほしい人は、言わないと何も変わらない。だから頼む、不満を言う、問いつめる。

今のままでいい人は、黙っていれば今のままでいられる。話をそらしたり、その場を離れたりするのが、いちばん手軽に今を守るやり方になってしまうにゃ。

この見方は、1990年に夫婦31組の話し合いを見た研究から出てきたにゃ。

妻が変えてほしい話題

「妻が追い、夫が引く」が、その逆より多かった

世間でよく言われる形が、はっきり出たにゃ。

夫が変えてほしい話題

その差が、はっきりしなくなった

同じ夫婦なのに、話題が変わると形が変わったにゃ。

夫も妻も、自分が変えてほしい話では追う側に、相手が変えてほしい話では引く側に回りやすかったにゃ。ただ、全体では夫のほうが引きやすかったにゃ。男女の差がまったくないとまでは言えないにゃ。

🔍 その後の研究

ほかの国でも、
追う・引くが多いふたりほど
満足していなかった

2006年に、ブラジル・イタリア・台湾・アメリカの4か国、363人にアンケートをした研究があるにゃ。

どの国でも

「女性が追い、男性が引く」のほうが、その逆より多かった

平均で見ると、よく言われる形は国をこえて出ていたにゃ。

どの国でも

追う・引くのやりとりが多い人ほど、関係に満足していなかった

「もっと近くにいたい」と「ひとりの時間もほしい」の望みがふたりでずれているほど、追う・引くも多かったにゃ。

74の研究をまとめた分析でも、追う・引くのやりとりと満足度の低さは同じ向きに結びついていたにゃ。

ただ、どれも「一緒に起きている」ことを見たものにゃ。追う・引くが満足を下げるのか、うまくいっていないから追う・引くが増えるのかは、ここからは決められないにゃ。

📱 今に置き換えて考える

いまのケンカは、
LINEの中でもつづく

研究のカップルは、向かい合って15分話し合ったにゃ。

いまの私たちのケンカは、そのあと仕事中のLINEでつづいたり、別の部屋からスマホで送り合ったりするにゃ。

文字だと

「黙る」が、既読のままの画面になる

向かい合っていれば、考えこんでいる顔も見えるにゃ。LINEだと、既読がついて返事がない画面しか見えないにゃ。追う側は、もう一通送りたくなる。引く側は、通知を見るのもしんどくなる。研究の「追う・引く」が、文字だと強まって見えるかもしれないにゃ。

共働きの家だと

「変えてほしい話」が、毎日の中にある

家事や育児の分担、帰る時間、休日の過ごし方。共働きの暮らしでは、「変えてほしい」の種が毎日のように生まれるにゃ。その多くを抱えている側が、追う役を引き受けやすいのかもしれないにゃ。

離れるときは

「今は無理」に、戻る時間を添える

「今は無理。夜9時に話そう」。一行あるだけで、追う側は待つ場所ができるにゃ。追いたくなった側は、送る前に言いたいことをメモに書いておくのも手にゃ。

あなたならどれ?

ケンカのとき、いまのあなたはどれに近い?

🐱 猫の国の研究所より

ここからは、
研究所の考察にゃ。

男性同士のカップルにも、
女性同士のカップルにも、
話そうとする人と、
黙る人がいたにゃ。

黙る・引くの点は、
15.8、15.5、15.6。
録画の中の沈黙は、
どの組み合わせでも
ほとんど同じ量だったにゃ。

「話したがるのは女のほう」。
そう聞いていると、
追いかけるたびに
「私が感情的なのかな」と、
自分のほうを疑う夜もあるにゃ。

録画の中で、だれが追うかを
分けていたのは、
女か男かより、
相手より強く
「変えてほしい」と思っているかどうか。
追いかけるのは、性分というより、
変えたいことを抱えている人の
持ち場だったのかもしれないにゃ。

とはいえ、男女の差が
まったくないわけではないにゃ。
夫婦の研究では夫のほうが引きやすく、
4か国の調査でも、平均すると
女性が追うほうが多かった。

ただ、その差だけでは、
同性のカップルの録画が
男女の夫婦とそっくりだったことを
説明しきれない。
ねこたちは、そのそっくりのほうを
大事に読みたいにゃ。

1990年の夫婦の話し合いには、
題がふたつあったにゃ。

妻が変えてほしいこと。
それから、
夫が変えてほしいこと。

ふたつめの題になると、
「妻が追い、夫が引く」の差は
はっきりしなくなったにゃ。

彼のほうにも、
あなたに変えてほしいことが
ひとつくらいあるのかもしれない。
それを持ち出された夜、
言葉より先に「今は無理」が
出てきそうになったら、
その重さが、
いつもの彼の沈黙を知る
いちばん近い手がかりにゃ。

📚 もっと深く知りたい人へ

猫の国には
こんな場所もあるにゃ

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📚 参考文献

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Holley, S. R., Sturm, V. E., & Levenson, R. W. (2010). Exploring the basis for gender differences in the demand-withdraw pattern. Journal of Homosexuality, 57, 666-684. リンク
Christensen, A., & Heavey, C. L. (1990). Gender and social structure in the demand/withdraw pattern of marital conflict. Journal of Personality and Social Psychology, 59(1), 73-81. リンク
Christensen, A., Eldridge, K., Catta-Preta, A. B., Lim, V. R., & Santagata, R. (2006). Cross-cultural consistency of the demand/withdraw interaction pattern in couples. Journal of Marriage and Family, 68(4), 1029-1044. リンク
Schrodt, P., Witt, P. L., & Shimkowski, J. R. (2014). A meta-analytical review of the demand/withdraw pattern of interaction and its associations with individual, relational, and communicative outcomes. Communication Monographs, 81(1), 28-58. リンク
Taylor, S. E., Klein, L. C., Lewis, B. P., Gruenewald, T. L., Gurung, R. A. R., & Updegraff, J. A. (2000). Biobehavioral responses to stress in females: Tend-and-befriend, not fight-or-flight. Psychological Review, 107(3), 411-429. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com