
…本気の「やる」でも、「いつ・どこで」がないと流れていってしまうにゃ。
こんなやりとり、ないにゃ?
うそをついているわけじゃない。
「やる」と言ったときは本気なのも、
ちゃんと知っている。
なのに、ソファはまだそこにある。
「やるつもり」と「やった」のあいだには、
なにがあるのかにゃ。
1997年、ドイツ・ミュンヘンの大学で、心理学者のゴルヴィツァーさんとブランドシュテッターさんが、86人の学生にひとつ頼みごとをしたにゃ。
クリスマスの1週間前。「イブをどう過ごしたかを、そのあとの休みの2日のうちにレポートに書いて、送ってほしい」。お礼の出ない、ボランティアのお願いにゃ。
半分の人には、それだけを頼んだ。もう半分の人には、いつ・どこで書くかを自分でひとつ決めてもらったにゃ。「次の日、朝ごはんのすぐあとに」のように。
休みの2日のうちにレポートを書いていたのは、どちらが多かったと思う?
クリスマスのレポートは、全員が同じ用事を、同じように頼まれていたにゃ。ちがったのは、「いつ」が決まっているかどうかだけ。
ふたりは同じ論文で、もうひとつ調べているにゃ。女子学生111人に、冬休みにやるつもりのことを「かんたんなこと」と「むずかしいこと」でひとつずつ挙げてもらい、休みが明けてから、やれたかどうかを聞いたにゃ。
こちらは、本人が「いつ・どこで」を決めていたかを聞いて、あとから見比べた調べにゃ。むずかしいことの例は「レポートを書く」「新しい部屋を探す」など。
かんたんなことは、決めていなくても8割近くがやれていたにゃ。差が大きかったのは、段取りがいくつもある用事のほう。
粗大ごみなら、品目を調べて、申し込んで、シールを買って、決まった朝に出す。電球を1個買ってくるのとは、わけがちがうにゃ。「やるやる」が消えやすいのは、たぶんこういう用事にゃ。
やるつもりなのに、やらずに終わる。それ自体は、めずらしいことじゃないにゃ。運動や検診のような健康のための行動を調べた研究をまとめると、「やるつもり」と答えた人の半分近くが、やらずに終わっていたにゃ。
つまずき方は、だいたい3つと考えられているにゃ。ほかのことにまぎれて忘れる。始めどきに気づかず、機会を逃す。いざその時が来ると「今じゃなくても」とためらう。
ひとつの説明はこうにゃ。「朝ごはんのあとに書く」と決めておくと、朝ごはんが終わったこと自体が合図になる。その場で「いつやろう」と考え直さなくても、手が動きやすくなる、と研究者たちは考えているにゃ。
「今週中にやっとく」には、この合図がない。だから、ほかの用事に押し流されてしまうのかもしれないにゃ。
2006年に、このやり方を試した94の研究、8000人あまりをまとめた分析があるにゃ。
効き目は「中くらいから大きめ」。いろいろな目標で、「いつ・どこで」を決めた人のほうが、やり遂げやすかったにゃ。
ただ、決めれば誰でも9割やる、という魔法ではないにゃ。クリスマスの71%も、ひとつの実験の数字にゃ。
もうひとつ、大事なことがあるにゃ。別の研究では、「いつ・どこで」がよく効いたのは、もともとのやろうという気持ちが強いときだったにゃ。気持ちが弱いままだと、決めても、やれた量はほとんど変わらなかったにゃ。
「いつ」は、本気の「やる」を前に進める道具。「やる」の代わりにはならないにゃ。
研究の学生たちは、紙の用紙に手で書いて、封筒で送ったにゃ。「休みの2日のうちに」という区切りもあったにゃ。
いまの家の用事は、スマホひとつで片づくものが増えたにゃ。粗大ごみも、夜中に寝ころんだまま申し込めることがあるにゃ。
夜でも、出先でもできる。だから「今じゃなくていい」が、いつまでも続くのかもしれないにゃ。クリスマスの学生には、「この2日」という区切りと、「朝ごはんのあと」という場面の両方があったにゃ。
リマインダーを入れても、鳴ったのが会議中なら「あとで」と消してしまうにゃ。学生たちが決めたのは、時計の時刻というより「朝ごはんのすぐあと」のような、自分の一日の中の場面だったにゃ。研究は通知と比べてはいないけれど、「土曜、コーヒーを飲み終わったら」のように暮らしの流れに結んでおくほうが、流れにくいかもしれないにゃ。
クリスマスの実験でも、時間と場所は学生が自分で選んでいたにゃ。こちらが「土曜の10時に申し込んで」と決めて渡すより、「いつやる?」と聞いて、本人にひとつ決めてもらうほうが、研究のやり方に近いにゃ。
「やるやる」がまた聞こえたとき、あなたなら、どうしたくなる?

3回目の「やるやる」のあと、
「やる気がないんでしょ」と
言いたくなる夜もあるにゃ。
外から見ると、
「やる気がない」と「いつがない」は
同じ顔をしているからにゃ。
どちらの家でも、ソファは動かない。
見分ける手がかりは、
2005年の研究にあったにゃ。
「いつ・どこで」がよく効いたのは、
もとの「やろう」が強い人。
弱い人は、決めても
ほとんど動かなかったにゃ。
だから「いつやる?」は、
急かす言葉というより、
確かめる言葉になるにゃ。
時間が決まって、ソファが出ていけば、
足りなかったのは「いつ」。
決まったのに、また流れたなら、
足りないのは、その手前の
「やる」のほうかもしれないにゃ。
ミュンヘンの学生たちは、
夫でも妻でもなかったにゃ。
クリスマスのレポートを
ソファに置き換えたのは、
ねこたちのほうにゃ。
それでも、「やる気がない」と
名前をつけてしまう前に、
もうひとつの顔があることは
数に入れておきたいにゃ。
学生たちのレポートは、
封筒で届いたにゃ。
「やる」が宛先なら、
「いつ」は切手にゃ。
「いつ・どこで」を決めた学生が
レポートを書いたのは、イブの2.3日後。
決めなかった学生は、7.7日後。
書くつもりは、どちらにもあったにゃ。
宛先の書いてある封筒でも、
切手がなければ、
机の上で待つことになるにゃ。
あなたの「あとでやる」の山にも、
宛先だけの封筒が
何通かまざっていないかにゃ。
いちばん上の一通には、
いつの切手を貼るにゃ?
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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