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ふたりの科学

夫の「べつに普通」。夫婦なのに、何も共有してくれないのはなぜ?

…「男の脳は箱でできている」と言われるけど、調べてみると、すこしちがう姿が見えたにゃ。

この研究を一枚で
問い
仕事でしんどかった日、夜の夫婦のやりとりはどう変わる? 男女でちがう?
どこで
夫婦42組(82人)の3日間の記録(Schulz ほか 2004)
どうやって
毎日、仕事の終わりと寝る前に質問票に答えてもらい、その日の仕事の気分と、夜の夫婦のふるまい(怒る・引きこもる)を見くらべた
わかったこと
気持ちがざわつく仕事の日は、妻は怒りっぽくなり、夫は怒りが減って引きこもりがちになった。ふだんの日には、男女でふるまいの差は見られなかった
その後の研究
心理学で調べられた男女差を集めると、8割前後は「ほとんど差がない」か「小さい」だった(2005年・2015年の分析)

こんな会話、ないにゃ?

今日仕事どうだった?
べつに普通
なんかあったでしょ
いや、家では仕事の話したくない
(夫婦なのに何も共有してくれない)

何かあったのに、教えてくれない。
つらいなら一緒に背負わせてほしいのに、
箱の中に閉じ込めて
出してこない。

「男の脳は、箱でできている」
なんて話も聞くけど、
ほんとうにそうなのかにゃ。

🧪 研究 仕事のあとの夜を、3日間

42組の夫婦が、
仕事の終わりと寝る前に
つけた記録

心理学者のシュルツさんたち(2004年)は、夫婦42組・82人に、3日間、毎日2回、質問に答えてもらったにゃ。

1回目は、仕事が終わったとき。その日の仕事で、気持ちがどれくらいざわついたか。
2回目は、寝る前。その夜、夫婦のやりとりで怒りっぽくなったか、引きこもりがちになったか。

仕事がしんどかった日と、そうでない日の夜を見比べたにゃ。

予想してみるにゃ

気持ちがざわつく仕事の日の夜、夫と妻はどうなっていたと思う?

📊 結果の読み方

男女のちがいは、
しんどい日に出てくる

ふだんの日

夫と妻のふるまいに、差は見られなかった

夜のやりとりで怒りっぽくなるか、引きこもりがちになるか。いつもの様子には、男女のちがいがなかったにゃ。

気持ちがざわつく仕事の日

妻は怒りっぽく、夫は黙りがちに

夫のほうは、怒りはむしろ減って、ひとりになりたがったにゃ。研究チームは、男女のちがいはストレスがかかったときに大きくなる、とまとめているにゃ。

だから「家では仕事の話をしない」は、いつもの性格というより、しんどい日の休み方なのかもしれないにゃ。

「べつに普通」と返ってきた夜は、もしかしたら、ふつうじゃなかった日なのかもしれないにゃ。

もちろん、だれにでも当てはまるわけではないにゃ。しんどい日に黙る女性も、話して楽になる男性も、ちゃんといるにゃ。

🤔 なぜ、しんどい日に黙るのか

黙っているあいだに、
心と体を戻している?

ヒントになる研究が、それより前にあるにゃ。

1989年に、空港の航空管制官とその妻に、3日続けてその日の様子を書いてもらった研究にゃ。妻の支えがあった夜には、仕事が重かった日ほど、管制官たちは家で口数が減り、ひとりでいたがったにゃ。怒りを出すことは、むしろ減っていたにゃ。

ひとつの説明はこうにゃ。黙ってひとりになるのは、高ぶった心と体をふだんの状態に戻すための時間なのかもしれない。そして、それをそっと許してくれる相手が、小さなストレスのクッションになっているのかもしれない、と。

「箱にしまう」ように、いやなことを別にしておく心の守り方を調べた研究もあるけど、それは男女のちがいを調べたものではなかったにゃ。だれでもやる守り方のひとつにゃ。

🔍 その後の研究

男女の差は、
まとめて数えるとどのくらい?

2005年に、男女差を調べた46のまとめ研究から、124の差の大きさを集めて、大きさごとに分けた研究があるにゃ。

124の男女差を、大きさで分けると
ほとんど差がない0%
小さい差0%
それより大きい差0%

合わせて78%が、ほとんど差がないか、小さい差だったにゃ。2015年に、もっと多くのまとめ研究で数え直した分析でも、85%が「小さい」か「とても小さい」だったにゃ。

自分のことを話す量も、たくさんの研究をまとめると、女性のほうが少しだけ多い程度だったにゃ。

「男だから話さない」と片づけるには、差は小さすぎるにゃ。

📱 今に置き換えて考える

「帰り道」が
なくなった夜

研究の夫婦は、仕事を終えて、家に帰ってくる夜を記録していたにゃ。

いまの私たちの夜は、少しちがう形をしているにゃ。

在宅勤務

切り替えの時間が、消えやすい

電車の中や、駅から歩く道。あれは、しんどい気持ちを少し置いてくる時間だったのかもしれないにゃ。在宅勤務だと、パソコンを閉じたらすぐ夕ごはん。黙る時間が、家の中で起きるぶん、目に入りやすくなるにゃ。

スマホ

仕事が、夜までついてくる

夜の通知ひとつで、終わったはずの仕事の日が、またざわつき出すことがあるにゃ。「べつに」の理由が、さっき届いたメッセージかもしれないにゃ。

共働き

ふたりとも、しんどい日を持ち帰る

同じ夜に、ひとりは黙りたくて、ひとりは話したい。どちらも「しんどい日」の出かたなら、どちらかがまちがっているわけじゃないにゃ。帰る前のLINEで「今日はちょっと静かにしたい」「今日は聞いてほしい」と、先にひと言だけ渡しておくやり方もあるにゃ。

あなたならどれ?

彼が「べつに」と黙ったとき、あなたがしてみたいのはどれに近い?

🐱 猫の国の研究所より

黙りたかった夜は、
どんな夜だったか

「べつに」と閉じられると、
聞いた側は、
自分が締め出されたように
感じるにゃ。

1989年の管制官たちの記録で、
重い一日のあと家で口数が減ったのは、
妻の支えがあった夜のことだったにゃ。
ひとりになりたがった夜と、
支えてもらえた夜が、
重なっていたにゃ。

締め出すための沈黙なら、
支えのある夜に出てくるのは、
すこし筋が合わないにゃ。

戸の向こうでしているのは、
あなたを外に出すことより、
一日をおろすことに
近いのかもしれないにゃ。

ただ、見ていたのは3日ぶんの夜。
何週間も続く沈黙のことまでは、
この記録は語っていないにゃ。

休む時間を守ることと、
あなたがさみしいままでいることは、
別の話にゃ。

「全部話して」の大きな箱は
開かなくても、
「今日、一つだけ教えて」の
小さな引き出しなら、
開くことがあるにゃ。

🚃

体は家に着いても、
気持ちはまだ
帰り道にいる夜があるにゃ。

42組の夫婦の研究には、
「ざわついたまま、帰ってくる」
という題がついていたにゃ。

電車の中や、駅からの道で
置いてくるはずだった一日を、
ソファの上で、
まだ置いている途中。

ほんとうの「ただいま」は、
玄関を入ったときより、
もう少しあとに
聞こえてくることがあるにゃ。

📚 参考文献

この記事で紹介した研究

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Schulz, M. S., Cowan, P. A., Cowan, C. P., & Brennan, R. T. (2004). Coming home upset: Gender, marital satisfaction, and the daily spillover of workday experience into couple interactions. Journal of Family Psychology, 18(1), 250-263. リンク
Repetti, R. L. (1989). Effects of daily workload on subsequent behavior during marital interaction: The roles of social withdrawal and spouse support. Journal of Personality and Social Psychology, 57(4), 651-659. リンク
Hyde, J. S. (2005). The gender similarities hypothesis. American Psychologist, 60(6), 581-592. リンク
Zell, E., Krizan, Z., & Teeter, S. R. (2015). Evaluating gender similarities and differences using metasynthesis. American Psychologist, 70(1), 10-20. リンク
Dindia, K., & Allen, M. (1992). Sex differences in self-disclosure: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 112(1), 106-124. リンク
Showers, C. (1992). Compartmentalization of positive and negative self-knowledge: Keeping bad apples out of the bunch. Journal of Personality and Social Psychology, 62(6), 1036-1049. リンク
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com