
…「男の脳は箱でできている」と言われるけど、調べてみると、すこしちがう姿が見えたにゃ。
こんな会話、ないにゃ?
何かあったのに、教えてくれない。
つらいなら一緒に背負わせてほしいのに、
箱の中に閉じ込めて
出してこない。
「男の脳は、箱でできている」
なんて話も聞くけど、
ほんとうにそうなのかにゃ。
心理学者のシュルツさんたち(2004年)は、夫婦42組・82人に、3日間、毎日2回、質問に答えてもらったにゃ。
1回目は、仕事が終わったとき。その日の仕事で、気持ちがどれくらいざわついたか。
2回目は、寝る前。その夜、夫婦のやりとりで怒りっぽくなったか、引きこもりがちになったか。
仕事がしんどかった日と、そうでない日の夜を見比べたにゃ。
気持ちがざわつく仕事の日の夜、夫と妻はどうなっていたと思う?
夜のやりとりで怒りっぽくなるか、引きこもりがちになるか。いつもの様子には、男女のちがいがなかったにゃ。
夫のほうは、怒りはむしろ減って、ひとりになりたがったにゃ。研究チームは、男女のちがいはストレスがかかったときに大きくなる、とまとめているにゃ。
だから「家では仕事の話をしない」は、いつもの性格というより、しんどい日の休み方なのかもしれないにゃ。
「べつに普通」と返ってきた夜は、もしかしたら、ふつうじゃなかった日なのかもしれないにゃ。
もちろん、だれにでも当てはまるわけではないにゃ。しんどい日に黙る女性も、話して楽になる男性も、ちゃんといるにゃ。
ヒントになる研究が、それより前にあるにゃ。
1989年に、空港の航空管制官とその妻に、3日続けてその日の様子を書いてもらった研究にゃ。妻の支えがあった夜には、仕事が重かった日ほど、管制官たちは家で口数が減り、ひとりでいたがったにゃ。怒りを出すことは、むしろ減っていたにゃ。
ひとつの説明はこうにゃ。黙ってひとりになるのは、高ぶった心と体をふだんの状態に戻すための時間なのかもしれない。そして、それをそっと許してくれる相手が、小さなストレスのクッションになっているのかもしれない、と。
「箱にしまう」ように、いやなことを別にしておく心の守り方を調べた研究もあるけど、それは男女のちがいを調べたものではなかったにゃ。だれでもやる守り方のひとつにゃ。
2005年に、男女差を調べた46のまとめ研究から、124の差の大きさを集めて、大きさごとに分けた研究があるにゃ。
合わせて78%が、ほとんど差がないか、小さい差だったにゃ。2015年に、もっと多くのまとめ研究で数え直した分析でも、85%が「小さい」か「とても小さい」だったにゃ。
自分のことを話す量も、たくさんの研究をまとめると、女性のほうが少しだけ多い程度だったにゃ。
「男だから話さない」と片づけるには、差は小さすぎるにゃ。
研究の夫婦は、仕事を終えて、家に帰ってくる夜を記録していたにゃ。
いまの私たちの夜は、少しちがう形をしているにゃ。
電車の中や、駅から歩く道。あれは、しんどい気持ちを少し置いてくる時間だったのかもしれないにゃ。在宅勤務だと、パソコンを閉じたらすぐ夕ごはん。黙る時間が、家の中で起きるぶん、目に入りやすくなるにゃ。
夜の通知ひとつで、終わったはずの仕事の日が、またざわつき出すことがあるにゃ。「べつに」の理由が、さっき届いたメッセージかもしれないにゃ。
同じ夜に、ひとりは黙りたくて、ひとりは話したい。どちらも「しんどい日」の出かたなら、どちらかがまちがっているわけじゃないにゃ。帰る前のLINEで「今日はちょっと静かにしたい」「今日は聞いてほしい」と、先にひと言だけ渡しておくやり方もあるにゃ。
彼が「べつに」と黙ったとき、あなたがしてみたいのはどれに近い?

「べつに」と閉じられると、
聞いた側は、
自分が締め出されたように
感じるにゃ。
1989年の管制官たちの記録で、
重い一日のあと家で口数が減ったのは、
妻の支えがあった夜のことだったにゃ。
ひとりになりたがった夜と、
支えてもらえた夜が、
重なっていたにゃ。
締め出すための沈黙なら、
支えのある夜に出てくるのは、
すこし筋が合わないにゃ。
戸の向こうでしているのは、
あなたを外に出すことより、
一日をおろすことに
近いのかもしれないにゃ。
ただ、見ていたのは3日ぶんの夜。
何週間も続く沈黙のことまでは、
この記録は語っていないにゃ。
休む時間を守ることと、
あなたがさみしいままでいることは、
別の話にゃ。
「全部話して」の大きな箱は
開かなくても、
「今日、一つだけ教えて」の
小さな引き出しなら、
開くことがあるにゃ。
体は家に着いても、
気持ちはまだ
帰り道にいる夜があるにゃ。
42組の夫婦の研究には、
「ざわついたまま、帰ってくる」
という題がついていたにゃ。
電車の中や、駅からの道で
置いてくるはずだった一日を、
ソファの上で、
まだ置いている途中。
ほんとうの「ただいま」は、
玄関を入ったときより、
もう少しあとに
聞こえてくることがあるにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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