
…「5:1」の研究が数えていたのは、言い合いの最中の「うん」や笑いだったにゃ。
こんなこと、思ったことないにゃ?
幸せな夫婦は、いいことが5、悪いことが1。
そんな「魔法の比率」を、
どこかで見たことがあるかもしれないにゃ。
この5は、どこで、何を数えた数字なのかにゃ。
心理学者のゴットマンさん(1993年)は、1983年にアメリカ・インディアナ州の町で、新聞広告で集めた79組の夫婦に、研究室へ来てもらったにゃ。
夫婦には、15分の会話を3つしてもらったにゃ。その日のできごと、楽しい話題、そして、ふたりのあいだでずっともめている問題。
もめごとの話し合いは録画して書き起こし、ひと言ずつ印をつけたにゃ。笑い、「うん」という相づちや同意、問題を前向きに切り出す言い方は「いい側」。責める、言い訳する、見下す、聞くのをやめる、は「とげのある側」。
それから4年後。73組にもう一度連絡して、離婚を本気で考えたか、実際に離婚したかを聞いたにゃ。
4年後も安定していた夫婦。もめごとの話し合いのあいだ、「いい側」は「とげのある側」の何倍くらいあったと思う?
話し合いが「いい側」へ傾いていた夫婦で、
4年のうちに離婚したのは3%。
そうでない夫婦では19%だった
この比は、よく「きつい一言のあとには、やさしい言葉を5回」と紹介されるにゃ。でも研究で数えたのは、15分の話し合いの合計どうしの比にゃ。
きつい一言のすぐあとに、5回返したかを見たわけじゃないにゃ。言い合いの途中で笑いがこぼれる。「それはそうだね」がはさまる。そういうものが、話し合いのあちこちに散らばっていたにゃ。
それから、5と1は、たくさんの夫婦の平均にゃ。4.9なら危ない、という境目ではないにゃ。
4年後も安定していた夫婦。そのなかに、大きな声で言い合う夫婦はいたと思う?
安定していた夫婦は、話し合い方で3つに分かれたにゃ。
はじめから言い合いになって、怒りも多い。でも笑いや愛情の表し方も、いちばん多かったにゃ。
最初は相手の言い分を「うん」と聞く。言い合いは途中にきて、最後は折り合いをさがすにゃ。
ちがいを確かめたら、それ以上は深追いしない。いい側も、とげのある側も少なめにゃ。
3つの型で、比はどれもおよそ5。型のあいだに差はなかったにゃ。
ちがっていたのは、とげの量じゃなかったにゃ。とげのまわりに、その何倍もの笑いや相づちがあったかどうか、だったにゃ。
ゴットマンさんは、夫婦にはそれぞれのつり合いの点があるのかもしれない、と考えたにゃ。にぎやかな夫婦はどちらもたくさん、静かな夫婦はどちらも少し。量はちがっても、いい側ととげのある側の比を、同じくらいに保っている、という見方にゃ。
じゃあ、なぜ1対1ではなく、5対1なのか。ひとつの説明は、悪いことのほうが重く残りやすい、というものにゃ。たくさんの研究をまとめた2001年の総説では、悪い出来事や悪い印象は、よいものより強く、長く効きやすいとまとめられているにゃ。
きつい一言は、その日の夜まで残る。いっしょに笑った一瞬は、すぐ流れていく。だから、つり合わせるには多めに要るのかもしれないにゃ。
ゴットマンさんは、もうひとつ考えていたにゃ。とげのあるやりとりにも、ふたりがそれぞれの自分を保つような役目があるのかもしれない。いいことだけの関係は、かえって不安定かもしれない。
これは、論文の中でも推測として書かれていたことにゃ。
2004年に、この夫婦の型が別の国でも見られるかを、スイスの結婚している人1,700人あまりに質問紙で答えてもらって確かめた研究があるにゃ。
ここでも、安定した3つの型の夫婦は、とげの多い型の夫婦より、前向きなやりとりが多く、満足していると答えていたにゃ。そして3つのうちでは、にぎやかにぶつかる型が、ほとんどの前向きな項目でいちばん高かったにゃ。
こちらは録画を数えたのではなく、本人たちの答えにゃ。それでも、向きは同じだったにゃ。
元の研究は、1980年代のアメリカのひとつの町の79組にゃ。
「夫婦の会話から、離婚を何割当てた」という数字もよく広まっているにゃ。でも別の研究では、そうした的中率は、式を作ったデータに当てはめたときの値で、別の夫婦で確かめると大きく下がることが示されているにゃ。5は、ひと組の未来を当てる数字というより、たくさんの夫婦の傾きを示す目安にゃ。
研究の夫婦は、研究室で15分話しただけ。数えたのは、録画を見た研究者たちで、本人たちじゃなかったにゃ。
いまは「いいこと5回で、悪いこと1回が帳消し」という形で、この数字が自分の手元に届くにゃ。数えるのは、自分にゃ。
夜、その日の「ありがとう」と「なんでそういう言い方するの」を思い出して数える。悪いことのほうが重く残りやすいなら、思い出してつける帳簿は、実際より赤字に寄るかもしれないにゃ。ふたりで笑った数秒は、帳簿に書き忘れやすいにゃ。
友だちの「うちはケンカしたことない」や、仲のよさそうな夫婦の話は、よく耳に入るにゃ。でも研究で長続きしていた夫婦には、よくぶつかる夫婦もいたにゃ。比べるなら、よその家の静かさより、自分たちの言い合いの中に、笑いや「それはそうだね」が残っているか、かもしれないにゃ。
大きな声で言い合っても翌朝はけろっとしている家で育った人と、言い合いがほとんどない家で育った人が、夫婦になることもあるにゃ。研究は夫婦ごとに型を分けていたから、ふたりの型がずれているときのことまでは見ていないにゃ。片方には「いつもの言い合い」が、もう片方には「大ゲンカ」に見えている、ということもあるかもしれないにゃ。
言い合いになったとき、あなたの家にいちばん近いのはどれ?

グラフの「5」は、
夫婦でひとつの数字では
なかったにゃ。
夫の口から出た言葉で、ひとつ。
妻の口から出た言葉で、ひとつ。
安定していた夫婦では、
5.10と5.06。
ふたりとも、自分の言葉の中で
およそ5だったにゃ。
夜に思い出してつける帳簿は、
「されたこと」の帳簿に
なりやすいにゃ。
研究が数えていたのは、
それぞれが「言ったこと」のほう。
相手の「うん」と、自分の「うん」は、
別々の欄に入っていたにゃ。
どちらの欄が先に動いたのか。
片方が5に近づけば、
もう片方もついてくるのか。
79組の録画は、そこまでは
答えていないにゃ。
それから、とげがいつも
片方からだけ来て、
こわいと感じているなら、
それは自分の欄の「うん」で
埋め合わせる話じゃないにゃ。
帳簿の外で、
信頼できる人に聞いてもらう話にゃ。
研究室に来た79組は、
ひとつずつ持ってきていたにゃ。
ずっともめている問題を。
長続きした夫婦も、
みんな。
研究が数えたのは、
その問題が片づいたかどうかでは
なかったにゃ。
もめごとを話す15分の、
「うん」や笑いがはさまる
すきまのほう。
きのうの言い合いのタネも、
たぶん、まだ片づいていないにゃ。
79組も、そこから
話しはじめていたにゃ。
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