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ふたりの科学

「聞いてるよ」と言いながら目は画面。あのさびしさは、気にしすぎ?

…「たかがスマホ」でしょんぼりするのは、あなただけじゃないにゃ。

この研究を一枚で
問い
いっしょにいるとき、相手がスマホを見る。それは、ふたりの関係のどこに響くのか
どこで
アメリカの大人。2つの調査で308人と145人(Roberts & David 2016)
どうやって
「話しているとき、相手がスマホをちらっと見る」など9つの質問で、相手のスマホでの「無視」の多さを答えてもらい、スマホをめぐる言い争いや、関係への満足度と合わせて調べた
わかったこと
スマホで無視されることが多い人ほど、スマホをめぐる言い争いが多く、関係への満足度が低かった。満足度の低さは、言い争いをはさんでつながっていた
その後の研究
52の研究・約2万人をまとめた2025年の分析でも、関係の満足度や親密さとの結びつきが確かめられた。強さは小さめから中くらい

夕飯の食卓で、こんなこと、ないにゃ?

ねえ、来月のお母さんの誕生日なんだけどさ
うん
(親指だけが動いている)
…聞いてる?
聞いてる聞いてる。誕生日でしょ
(そこから先は、もう話さなかった)

けんかするほどのことじゃない。
でも、なんだか一人でしゃべっていたみたいで、
少しさびしい。

そして、ふと思い出すにゃ。
自分も、きのう同じことをしていたかも。

この「話しているのに、相手は画面」には、
ファビングという名前がついているにゃ。
phone(電話)と snubbing(そっけなくする)を
くっつけた言葉にゃ。

🧪 研究 スマホと、ふたりの満足度

「相手がスマホをちらっと見る」
を数えた人たち

アメリカのベイラー大学で、心理学者のロバーツさんとデイヴィッドさん(2016年)が、恋人や夫婦の「スマホでの無視」を数えるものさしを作ったにゃ。

質問は9つ。たとえば「話しているとき、相手がスマホをちらっと見る」「会話がとぎれると、相手はスマホを確かめる」「いっしょにいるとき、相手はスマホを手に持っている」。

どれくらい当てはまるかを、見られる側として答えてもらったにゃ。

調査は2回。308人と145人のアメリカの大人に答えてもらって、スマホをめぐる言い争いや、ふたりの関係への満足度と合わせて見ていったにゃ。

予想してみるにゃ

2回目の調査の145人。「パートナーにスマホで無視されたことがある」と答えたのは、どのくらいだったと思う?

📊 結果の読み方

間にはさまっていたのは、
スマホをめぐる言い争い

スマホで無視されることが多いと答えた人ほど、ふたりの関係への満足度が低かったにゃ。

おもしろいのは、そのつながり方にゃ。画面を見ることと満足度は、まっすぐつながっていたわけじゃなかったにゃ。

1

話しているのに、相手は画面

ちらっと見る。手に持ったまま。会話がとぎれると開く。

2

スマホをめぐる言い争い

「またスマホ?」「別に見てないって」。こういうやりとりが多い人ほど、

3

ふたりの関係への満足度が下がる

2回目の調査では、そこから暮らし全体の満足度の低さや、気分の落ちこみにまでつながる道筋が見えたにゃ。

ちらっと見た一回で関係がこわれる、という話ではないにゃ。くり返されて、言い合いの種になって、少しずつふたりの空気が変わっていく。そんな流れにゃ。

それから、相手に離れていかれるのが心配になりやすい人ほど、スマホのことで言い争いになりやすかったにゃ。気にする度合いは、人によってちがうにゃ。

ただ、これは一度のアンケートにゃ。もともとうまくいっていないから、相手の顔よりスマホを見たくなる、という逆の向きもありうるにゃ。

🤔 なぜ、こんなにさびしいのか

「ちょっと無視された」で、
ゆらぐもの

仲間はずれ(オストラシズム)を調べてきた心理学では、こう考えられてきたにゃ。人は無視されると、4つの感覚がゆらぐ。

4つ

つながり・自分の値打ち・思いどおりにできる感じ・ここにいていい感じ

大げさに聞こえるけれど、ふだんは意識しないくらい、あたりまえに足もとにあるものにゃ。

この考えを、スマホで確かめた実験があるにゃ。友だちに大事な話をしているとき、相手がスマホを見はじめた場面を思い出してもらうと、スマホのない会話を思い出した人より、「無視された」「痛い」という気持ちが強く、4つの感覚もゆらいでいたにゃ。

その痛みの一部は、「私は大事にされていない」という感じで説明できたにゃ。大事な話だけでなく、軽い雑談の場面でも、同じことが起きていたにゃ。

心の痛みと体の痛みは、脳の中で同じところを使っている、という説もあるにゃ。2003年に、ボール回しのゲームで仲間はずれにされた人の脳を調べた研究から広まった見方にゃ。

ただ、のちに脳の反応のパターンを細かく見比べると、ふたつは別ものだった、という研究も出て、いまも議論が続いている説にゃ。仕組みはまだ決まっていない。それでも、無視されて「痛い」と感じる人がいるのは、たしかなことにゃ。

🤔 なぜ、話すのをやめてしまうのか

画面がそばにあると、
大事な話は
しまわれていく

アメリカで、人とテクノロジーの関係を長く調べてきた社会学者が、学生や家族に話を聞いて書いた本(2015年)があるにゃ。数を比べた研究ではなく、たくさんの声から見立てを組み立てた本にゃ。

その本に出てくる大学生たちは、食事のときに「3人ルール」を守っていたにゃ。何人かで食べるとき、少なくとも3人が顔を上げているのを確かめてから、自分はスマホを見ていい。

会話は止まらない。でも、だれかがいつも画面に目を落としている。

著者の見立てはこうにゃ。いつ途切れるかわからない場では、人は途切れてもかまわない話を選ぶようになる。軽くて、すぐ抜けられる話題ばかりになっていく、と。

夕飯の食卓で、話しかけた人が「もういいや」と飲みこんだのも、相手を責めたからじゃない。大事な話を、しまっておくことにしたのかもしれないにゃ。

🔍 その後の研究

2万人ぶんを
まとめてみたら

2025年に、ファビングを調べた52の研究、あわせて約2万人ぶんを、まとめて分析した人たちがいるにゃ。

予想してみるにゃ

パートナーのファビングと、ふたりの関係への満足度。まとめると、結びつきはどのくらいの強さだったと思う?

ふたりの間のことで、いちばん強く結びついていたのは、言い争いの多さだったにゃ。ロバーツさんたちの見つけた「間の段」は、ほかの研究でも出てきていたにゃ。

ファビングのもとになりそうなものの中では、SNSやスマホが「なかなかやめられない」感じが、いちばん強く結びついていたにゃ。画面を見てしまうのは、相手をどうでもいいと思っているから、とは限らないみたいにゃ。

「女性のほうが傷つきやすい」と言われることもあるにゃ。たしかに、さっきの思い出してもらう実験では女性のほうが痛みが大きかったにゃ。でも2万人ぶんのまとめでは、女性の多い研究ほど満足度との結びつきが強い、ということはなかったにゃ。男女で決めつけないほうがよさそうにゃ。

📱 今に置き換えて考える

スマホの中に、
暮らしの用事が
ぜんぶ入った

調査が行われたのは、スマホが広まってまだ数年のころにゃ。

いまの日本の暮らしでは、仕事の返事も、振り込みも、乗りかえも、子どもの予定も、同じ画面の中にあるにゃ。見ているのが遊びなのか用事なのか、外からはますますわからなくなったかもしれないにゃ。

見ている側から

画面の中身は、向かいの席からは見えない

自分にとっては「明日の会議の返事」でも、相手に見えるのは、うつむいた顔と動く親指だけにゃ。研究の質問も、相手が何を見ていたかではなく、「話しているときに画面を見るか」をたずねていたにゃ。
「ごめん、仕事の返事だけ先にさせて」とひと言そえて、終わったら画面を伏せる。それだけで、無視が用事に変わるかもしれないにゃ。

子どもとの時間

「ねえ見て」に、画面のまま「見てるよ」

公園のすべり台の上から「ママ見て!」。目は画面のまま「見てるよー」。研究が調べたのは大人どうしで、子どもは調べていないにゃ。
ずっと見ていなくていいにゃ。親にも、ひと息つく時間はいるにゃ。ただ「見て」のときだけは、顔ごと向ける。それくらいでいいのかもしれないにゃ。

見られる側から

「またスマホ」より、「ちょっとこっち見て」

研究では、関係の満足度は言い争いをはさんで下がっていたにゃ。だとしたら、言い出し方で分かれ道が変わるのかもしれないにゃ。
責める言い方は「見てないって」を呼びやすい。「いま、ちょっとだけこっち見てほしい」なら、顔を上げるきっかけになりやすいにゃ。たかがスマホで、と飲みこまなくていいにゃ。

あなたならどれ?

話の途中で相手が画面を見はじめたとき、あなたはどうすることが多い?

🐱 猫の国の研究所より

同じ食卓の、
こっちの席と、あっちの席

ファビングのもとをたどったとき、
いちばん強く出てきたのは、
スマホが「なかなかやめられない」
という感じだったにゃ。

親指を動かしていたのは、
相手への気持ちより、
手のくせのほうだったのかもしれないにゃ。

いっぽう、見られる側の痛みは、
その一部を
「私は大事にされていない」という感じが
説明していたにゃ。

同じ食卓の、同じ数秒。
こっちの席では「後回しにされた」が起きて、
あっちの席では、たぶん
親指がいつもどおり動いていただけにゃ。

向かいの席から見えるのは、
うつむいた顔と動く親指だけにゃ。
そこに「後回し」を読むのは、
気にしすぎというより、
見えたものを見えたとおりに
読んだだけにゃ。

別々の研究を、ねこたちが
ひとつの食卓に並べてみた読みにゃ。
それに、どちらの席にも、
きのうと今日で
同じ人が座っていたりするにゃ。

「聞いてるよ」より、
顔を上げるほうが
よく聞こえるにゃ。

この記事も、たぶん
スマホで読んでくれているにゃ。
ありがとうにゃ。

読み終わったら、
となりの人の「ねえ」に、
顔ごと返事をしてみるにゃ。

…研究所のねこは、
呼ばれたらしっぽで返事をするにゃ。🐾

📚 参考文献

この記事で紹介した研究

📋 研究所のほかのレポートにゃ

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RESEARCH No.29

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Roberts, J. A., & David, M. E. (2016). My life has become a major distraction from my cell phone: Partner phubbing and relationship satisfaction among romantic partners. Computers in Human Behavior, 54, 134-141. リンク
Ni, N., Ahrari, S., Zaremohzzabieh, Z., Zarean, M., & Roslan, S. (2025). A meta-analytic study of partner phubbing and its antecedents and consequences. Frontiers in Psychology, 16, 1561159. リンク
Hales, A. H., Dvir, M., Wesselmann, E. D., Kruger, D. J., & Finkenauer, C. (2018). Cell phone-induced ostracism threatens fundamental needs. The Journal of Social Psychology, 158(4), 460-473. リンク
Eisenberger, N. I., Lieberman, M. D., & Williams, K. D. (2003). Does rejection hurt? An fMRI study of social exclusion. Science, 302(5643), 290-292. リンク
Woo, C.-W., Koban, L., Kross, E., Lindquist, M. A., Banich, M. T., Ruzic, L., Andrews-Hanna, J. R., & Wager, T. D. (2014). Separate neural representations for physical pain and social rejection. Nature Communications, 5, 5380. リンク
Turkle, S. (2015). Reclaiming Conversation: The Power of Talk in a Digital Age. Penguin Press.
上記の研究知見をもとに、ニャンタルヘルスが独自に構成・考察したものです。原論文の翻訳ではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、医学的・心理学的な診断やアドバイスではありません。つらい状況にいる方は、信頼できる専門家にご相談ください。

著者:研究所のねこたち|ニャンタルヘルス
🐱 猫の国 研究所 ― nyantal.com