
…「たかがスマホ」でしょんぼりするのは、あなただけじゃないにゃ。
夕飯の食卓で、こんなこと、ないにゃ?
けんかするほどのことじゃない。
でも、なんだか一人でしゃべっていたみたいで、
少しさびしい。
そして、ふと思い出すにゃ。
自分も、きのう同じことをしていたかも。
この「話しているのに、相手は画面」には、
ファビングという名前がついているにゃ。
phone(電話)と snubbing(そっけなくする)を
くっつけた言葉にゃ。
アメリカのベイラー大学で、心理学者のロバーツさんとデイヴィッドさん(2016年)が、恋人や夫婦の「スマホでの無視」を数えるものさしを作ったにゃ。
質問は9つ。たとえば「話しているとき、相手がスマホをちらっと見る」「会話がとぎれると、相手はスマホを確かめる」「いっしょにいるとき、相手はスマホを手に持っている」。
どれくらい当てはまるかを、見られる側として答えてもらったにゃ。
調査は2回。308人と145人のアメリカの大人に答えてもらって、スマホをめぐる言い争いや、ふたりの関係への満足度と合わせて見ていったにゃ。
2回目の調査の145人。「パートナーにスマホで無視されたことがある」と答えたのは、どのくらいだったと思う?
スマホで無視されることが多いと答えた人ほど、ふたりの関係への満足度が低かったにゃ。
おもしろいのは、そのつながり方にゃ。画面を見ることと満足度は、まっすぐつながっていたわけじゃなかったにゃ。
ちらっと見る。手に持ったまま。会話がとぎれると開く。
「またスマホ?」「別に見てないって」。こういうやりとりが多い人ほど、
2回目の調査では、そこから暮らし全体の満足度の低さや、気分の落ちこみにまでつながる道筋が見えたにゃ。
ちらっと見た一回で関係がこわれる、という話ではないにゃ。くり返されて、言い合いの種になって、少しずつふたりの空気が変わっていく。そんな流れにゃ。
それから、相手に離れていかれるのが心配になりやすい人ほど、スマホのことで言い争いになりやすかったにゃ。気にする度合いは、人によってちがうにゃ。
ただ、これは一度のアンケートにゃ。もともとうまくいっていないから、相手の顔よりスマホを見たくなる、という逆の向きもありうるにゃ。
仲間はずれ(オストラシズム)を調べてきた心理学では、こう考えられてきたにゃ。人は無視されると、4つの感覚がゆらぐ。
大げさに聞こえるけれど、ふだんは意識しないくらい、あたりまえに足もとにあるものにゃ。
この考えを、スマホで確かめた実験があるにゃ。友だちに大事な話をしているとき、相手がスマホを見はじめた場面を思い出してもらうと、スマホのない会話を思い出した人より、「無視された」「痛い」という気持ちが強く、4つの感覚もゆらいでいたにゃ。
その痛みの一部は、「私は大事にされていない」という感じで説明できたにゃ。大事な話だけでなく、軽い雑談の場面でも、同じことが起きていたにゃ。
心の痛みと体の痛みは、脳の中で同じところを使っている、という説もあるにゃ。2003年に、ボール回しのゲームで仲間はずれにされた人の脳を調べた研究から広まった見方にゃ。
ただ、のちに脳の反応のパターンを細かく見比べると、ふたつは別ものだった、という研究も出て、いまも議論が続いている説にゃ。仕組みはまだ決まっていない。それでも、無視されて「痛い」と感じる人がいるのは、たしかなことにゃ。
アメリカで、人とテクノロジーの関係を長く調べてきた社会学者が、学生や家族に話を聞いて書いた本(2015年)があるにゃ。数を比べた研究ではなく、たくさんの声から見立てを組み立てた本にゃ。
その本に出てくる大学生たちは、食事のときに「3人ルール」を守っていたにゃ。何人かで食べるとき、少なくとも3人が顔を上げているのを確かめてから、自分はスマホを見ていい。
会話は止まらない。でも、だれかがいつも画面に目を落としている。
著者の見立てはこうにゃ。いつ途切れるかわからない場では、人は途切れてもかまわない話を選ぶようになる。軽くて、すぐ抜けられる話題ばかりになっていく、と。
夕飯の食卓で、話しかけた人が「もういいや」と飲みこんだのも、相手を責めたからじゃない。大事な話を、しまっておくことにしたのかもしれないにゃ。
2025年に、ファビングを調べた52の研究、あわせて約2万人ぶんを、まとめて分析した人たちがいるにゃ。
パートナーのファビングと、ふたりの関係への満足度。まとめると、結びつきはどのくらいの強さだったと思う?
ふたりの間のことで、いちばん強く結びついていたのは、言い争いの多さだったにゃ。ロバーツさんたちの見つけた「間の段」は、ほかの研究でも出てきていたにゃ。
ファビングのもとになりそうなものの中では、SNSやスマホが「なかなかやめられない」感じが、いちばん強く結びついていたにゃ。画面を見てしまうのは、相手をどうでもいいと思っているから、とは限らないみたいにゃ。
「女性のほうが傷つきやすい」と言われることもあるにゃ。たしかに、さっきの思い出してもらう実験では女性のほうが痛みが大きかったにゃ。でも2万人ぶんのまとめでは、女性の多い研究ほど満足度との結びつきが強い、ということはなかったにゃ。男女で決めつけないほうがよさそうにゃ。
調査が行われたのは、スマホが広まってまだ数年のころにゃ。
いまの日本の暮らしでは、仕事の返事も、振り込みも、乗りかえも、子どもの予定も、同じ画面の中にあるにゃ。見ているのが遊びなのか用事なのか、外からはますますわからなくなったかもしれないにゃ。
自分にとっては「明日の会議の返事」でも、相手に見えるのは、うつむいた顔と動く親指だけにゃ。研究の質問も、相手が何を見ていたかではなく、「話しているときに画面を見るか」をたずねていたにゃ。
「ごめん、仕事の返事だけ先にさせて」とひと言そえて、終わったら画面を伏せる。それだけで、無視が用事に変わるかもしれないにゃ。
公園のすべり台の上から「ママ見て!」。目は画面のまま「見てるよー」。研究が調べたのは大人どうしで、子どもは調べていないにゃ。
ずっと見ていなくていいにゃ。親にも、ひと息つく時間はいるにゃ。ただ「見て」のときだけは、顔ごと向ける。それくらいでいいのかもしれないにゃ。
研究では、関係の満足度は言い争いをはさんで下がっていたにゃ。だとしたら、言い出し方で分かれ道が変わるのかもしれないにゃ。
責める言い方は「見てないって」を呼びやすい。「いま、ちょっとだけこっち見てほしい」なら、顔を上げるきっかけになりやすいにゃ。たかがスマホで、と飲みこまなくていいにゃ。
話の途中で相手が画面を見はじめたとき、あなたはどうすることが多い?

ファビングのもとをたどったとき、
いちばん強く出てきたのは、
スマホが「なかなかやめられない」
という感じだったにゃ。
親指を動かしていたのは、
相手への気持ちより、
手のくせのほうだったのかもしれないにゃ。
いっぽう、見られる側の痛みは、
その一部を
「私は大事にされていない」という感じが
説明していたにゃ。
同じ食卓の、同じ数秒。
こっちの席では「後回しにされた」が起きて、
あっちの席では、たぶん
親指がいつもどおり動いていただけにゃ。
向かいの席から見えるのは、
うつむいた顔と動く親指だけにゃ。
そこに「後回し」を読むのは、
気にしすぎというより、
見えたものを見えたとおりに
読んだだけにゃ。
別々の研究を、ねこたちが
ひとつの食卓に並べてみた読みにゃ。
それに、どちらの席にも、
きのうと今日で
同じ人が座っていたりするにゃ。
「聞いてるよ」より、
顔を上げるほうが
よく聞こえるにゃ。
この記事も、たぶん
スマホで読んでくれているにゃ。
ありがとうにゃ。
読み終わったら、
となりの人の「ねえ」に、
顔ごと返事をしてみるにゃ。
…研究所のねこは、
呼ばれたらしっぽで返事をするにゃ。🐾
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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