
…33か国の調べでは、恋に落ちる時期が、男女でひと月ほどずれていたにゃ。
こんなこと、ないにゃ?
彼の「好き」は、もうはっきりしている。
自分の「好き」は、まだ輪郭がぼんやりしている。
「女の子のほうが恋に夢中になるもの」
とよく言われるから、
なおさら、自分が冷たい気がしてくるにゃ。
ほんとうは、恋に落ちるのは
どっちが先なのかにゃ。
オーストラリアの研究者ボードさんたち(2025年)は、ヨーロッパや北米、南アフリカなど33か国の、18〜25歳の808人の答えを調べたにゃ。2022年にネットで集めた調査で、全員が「いま、付き合っている人に恋をしている」と答えた人たちにゃ。
聞いたのは、ふたつ。
「その人に恋をして、どのくらい?」
「恋人として会うようになって、どのくらい?」
ふたつの差を見れば、恋に落ちたのが付き合いはじめの前か、同じころか、あとかがわかるにゃ。
付き合いはじめる前から、もう恋に落ちていた人。多かったのは、男性と女性のどっち?
いちばん多かった答えは、男女どちらも「付き合いはじめと同じころ」だったにゃ。
平均すると、男性は付き合いはじめて1か月ほどで、女性は2か月ほどで恋に落ちていたにゃ。真ん中の人で見ると、女性は付き合って1か月後、男性は付き合いはじめと同じころ。
付き合いはじめと同じころか、
そのあとに恋に落ちた人が
「付き合ってから好きになる」は、
めずらしい順番ではなかったにゃ。
それに、ひとりひとりの答えは、平均から4か月ほど前後にばらついていたにゃ。ひと月のずれより、人によるちがいのほうがずっと大きい。著者たち自身も、男女の差は「小さい」と書いているにゃ。
もうひとつ。恋に落ちたあと、相手のことを考えている時間は、女性のほうが長かったにゃ。起きている時間のうち、女性は54%、男性は44%。
落ちるのはゆっくりでも、落ちたあとの気持ちが薄いわけではなさそうにゃ。
よく知られているのは、進化から考える説にゃ。
子どもを身ごもり、育てる重さは、長いあいだ女性の側に大きくかかってきた。だから女性は、相手が本気かどうかを慎重に見きわめる。男性は先に恋に落ちて、それを見せることで「本気だよ」と伝えてきた――という筋書きにゃ。
恋は、「この人に決めた」と自分をしばり、相手にもそれを示すしるしだ。そんな考えを、1988年にある経済学者が本で示したにゃ。この研究の著者たちもそれを下敷きに、女性は相手の本気のしるしを見てから恋に落ちきるのかもしれない、と考えているにゃ。
ただ、大昔の暮らしは確かめようがないにゃ。著者たちも、この調査だけでは進化の筋道までは言えない、と書いているにゃ。
研究所のねこたちは、いまの暮らしの理由もありそうだと思うにゃ。体のこと、まわりの目、別れるときのこと。付き合うことで背負うものが男女でちがえば、慎重になるのは自然なこと。どちらの説で見ても、ゆっくりなのは冷たさというより、確かめている時間に近いのかもしれないにゃ。
アメリカの大学生172人に聞いた、2011年の研究があるにゃ。男女とも、「恋に落ちるのも、『好き』と言うのも、女性が先」と思っていたにゃ。
ところが、自分の恋をふり返ってもらうと、先に恋に落ち、先に「好き」と口にしていたのは男性のほうだった。男性は「数週間」の終わりごろ、女性は「数か月」のはじめごろだったにゃ。
おもしろいのは、恋やロマンスについての考え方には、男女の差がなかったことにゃ。恋をどう思うかは同じで、時計の進み方だけがずれていたにゃ。
いろんな年齢の人に聞いた別の研究では、男女の差がはっきり出たのは、一部の質問だけだったにゃ。
それから、ボードさんたちの調査に答えたのは、いま恋をしている人だけ。付き合ったけれど恋にならなかった人は、この数字に入っていないにゃ。答えたのも、主に欧米の、英語で答えられる若い人たちだったにゃ。
研究が線を引いたのは、「デートを始めた、恋人として会うようになった」とき。英語圏では、何度か会ううちに、だんだん恋人になっていくことが多いと言われるにゃ。
いまの日本の恋は、その線の引き方が少しちがうにゃ。
日本では、どちらかの「付き合ってください」で、その日から恋人になることが多いにゃ。「嫌いじゃないし」「いい人だから」と返事をして始まる恋もある。調査は日本の始まり方までは聞いていないけれど、線が早く引かれるぶん、気持ちがあとから追いかけるのは、研究の女性たちよりもっとよくあることかもしれないにゃ。
研究の「先に好きと言う」は、付き合ってしばらくしてからの話だったにゃ。日本では、告白した人が、始まりの日にいちばん最初に言う。言った人の気持ちはもう先にあって、言われた人の気持ちはこれから。彼の「好き」がやけに早く聞こえるのは、言う順番が最初に来る仕組みのせいもありそうにゃ。
婚活では、何度か会ったら、この先も会うかを返事する場面があるにゃ。「ときめかないから、だめなのかな」と迷う人もいると聞く。研究の女性の半分は、付き合って1か月かそれより後に恋に落ちていた。「まだ」と「ない」は、分けて考えてよさそうにゃ。ただ、会うたびに気が重いなら、それは「まだ」とは別の合図かもしれないにゃ。
あなたの「好き」は、どんなふうにやって来ることが多い?

自分を冷たく思わせていた
「女の子のほうが、恋に夢中になるもの」。
アメリカの大学生たちも、男女そろって
「恋に落ちるのは女性が先」と
思っていたにゃ。
その思いこみは、
本人たちの思い出とは
逆向きだったにゃ。
思い出のほうで先に落ちていたのは、男性。
恋をどう思うかに、男女の差はなかった。
ずれていたのは、
気持ちの深さじゃなくて、
時計の進み方だったにゃ。
先に「好き」と言った彼は、
そのあと、あなたの時計が
追いつくのを待っている側でもあるにゃ。
平均のひと月が、
あなたたちふたりに
そのまま当てはまるとは限らない。
でも、ふたつの時計が
ずれて動きはじめるのは、
どうやら、恋のよくある始まり方にゃ。
待っている人に返せる言葉は、
「好き」のほかにもあるにゃ。
「うれしい」「また会いたい」。
もうあなたの中にある言葉なら、
うそはひとつも混ざらないにゃ。
調査の質問は、ふたつだけだったにゃ。
「恋をして、どのくらい?」
「付き合って、どのくらい?」
「付き合って」のほうには、
もう日にちが書ける。
「恋をして」のほうは、まだ空いている。
答えた808人の中にも、
「恋をして」のほうが短い人は
たくさんいたにゃ。
その人たちの恋は、
付き合ってから始まっていたにゃ。
空いている欄は、
書きまちがえた欄じゃないにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
📋 研究所のほかのレポートにゃ