
…「どこからが浮気?」の線は、自分のことになると、少しだけ外側に引かれるらしいにゃ。
こんなモヤモヤ、覚えはないにゃ?
いいねひとつで、浮気とは言えない。
でも、何でもないとも言いきれない。
そして、最後の吹き出し。
自分のことになると、
線がちょっとゆるむ。
これ、ちゃんと人に聞いて
確かめた研究があるにゃ。
「マイクロチーティング(小さな浮気)」は、研究から生まれた言葉ではないにゃ。2018年のはじめ、オーストラリアの恋愛・関係の専門家がメディアで使って広まった、と言われているにゃ。こっそりSNSでつながる、ふたりだけの冗談、連絡先を別の名前で登録する。そんな例が挙げられていたにゃ。
心理学者のトンプソンさんとオサリバンさん(2016年)は、オンラインの調査で、大人810人に「どこからが浮気か」を聞いたにゃ。
使ったのは、ふたりが同じころに作った、行動の一覧。体の関係にまつわること、スマホやネットでのやりとり、気持ちの親しさ、ひとりですること、の4つのまとまりがあるにゃ。
工夫したのは聞き方にゃ。ある人たちには「自分がこれをしたら、浮気?」。別の人たちには「パートナーがこれをしたら、浮気?」。
それから、その行動を自分がしたことがあるかも聞いたにゃ。
「自分なら」のほうが甘く判断されたのは、どのまとまりだったと思う?
・気持ちの親しさと、スマホ・ネットでのやりとりは、
「自分なら」のほうが甘く判断された
・体の関係と、ひとりですることでは、差がなかった
・浮気だと判断した行動を、自分もしたことがある人が多かった。とくに気持ちとネットのまとまりで
体の関係なら、だれにでも同じ線を引く。ところが、いいねやメッセージ、ふたりきりで話しこむことになると、自分の線だけが少し外側に引かれる、ということにゃ。
冒頭の最後の吹き出しは、あなたがずるいから出てきたわけじゃないにゃ。たくさんの人に起きていた、線のずれにゃ。
同じふたりの別の論文では、体の関係は多くの人がはっきり浮気と見たけれど、ほかの3つのまとまりは、そこまで「浮気」とは見られていなかったにゃ。グレーに感じるのは、あなたの感じ方がおかしいからではなく、もともと線が引きにくいところだからにゃ。
かといって、画面の中だから軽い、ともかぎらないにゃ。2003年にオーストラリアで1,117人に聞いた研究では、ネットの上の行為は「ネットだから別」の箱には入らず、体の裏切りや気持ちの裏切りと同じものさしで見られていたにゃ。
この研究のもとにあるのは、社会心理学で古くからある「行為者と観察者のずれ」という説にゃ。
自分のことは、事情ごと知っている。「同期だから」「犬の写真がかわいかったから」。でも相手のことは、外から見える行動しかわからない。だから相手の行動は、そのまま「そういう気持ちがあるんだ」と読みやすい、という考え方にゃ。
もうひとつ、自分がしていることを「浮気」と呼ぶのは苦しいから、行動を変えるより先に、線のほうを動かしてしまう、という見方もあるにゃ。
アメリカで長く、浮気に悩む夫婦をみてきた臨床心理学者が、2003年の本で示した「壁と窓」というたとえもあるにゃ。人を数えて確かめたものではなく、臨床家の見立てにゃ。
ふたりの間には、なんでも見せあえる窓がある。外の人との間には、ふたりを守る壁がある。
パートナーに話していないことを、その人には話している。その人とのことは、パートナーには見せない。窓と壁の場所が、少しずつ入れかわっていくにゃ。
この見立てで見ると、大事なのは「いいねか、DMか」という行動の種類より、窓と壁の向きにゃ。そのやりとりは、パートナーにも見せられるものかどうか。持ち帰るなら、この問いひとつで足りるかもしれないにゃ。
2023年、アメリカの大学の研究者たちが、結婚している人と離婚した人465人に、二通りの聞き方をしたにゃ。
ひとつは「浮気したことはありますか」と、まっすぐ聞く。もうひとつは、行動を一つずつ「したことがあるか」「それは浮気だと思うか」と聞いて、自分で浮気と思う行動をしていたかを数えるやり方にゃ。
行動ごとに聞いたほうが、
浮気にあたることをしていた人は、ずっと多かった。
そして、男女の割合は近かった
「浮気なんてしたことない」と答える人の多くも、自分の線の外へ、少しはみ出したことがある。2016年の結果と、同じ向きにゃ。
どちらの研究も、ネットの調査に答えた北アメリカの大人たちで、日本の人に聞いたものではないにゃ。
1998年、ネットと性の行動をみていた臨床心理学者が、ネットの上で性にまつわる行動が広がるわけを「トリプルAエンジン」と名づけたにゃ。浮気のために作られた考えではないけれど、その後、浮気の話でもよく使われてきたにゃ。近づきやすさ(Access)、お金のかからなさ(Affordability)、名前を出さずにすむこと(Anonymity)の3つにゃ。
810人の調査は、それから20年近くあと。さらに10年たったいまの暮らしに置き直すと、こうなるにゃ。
昔の同級生や、前の職場で少し気になっていた人。自分から探さなくても、「知り合いかも」に出てくるにゃ。近づいたつもりがなくても、指一本の距離にいる。「見ちゃった」と「見に行った」の区別が、本人にもつきにくくなっているかもしれないにゃ。
押した側には「指が当たった」くらいの重さ。見た側には「わざわざ押した」に見える。安い行動だからこそ、ふたりの受け取り方の差が開きやすいのかもしれないにゃ。
1998年の考えでは、ネットは「だれにも見られない」場所だったにゃ。いまのSNSは、いいねの一覧に名前が並び、ストーリーを見れば足あとが残る。ただ、見えるのは足あとだけで、中身や気持ちは見えないにゃ。研究の「自分には中身、相手には行動」が、画面の上でそのまま起きているのかもしれないにゃ。
「それ、浮気じゃない?」と行動の名前で聞くと、言われた側は「中身」で言い返すにゃ。「あの足あとを見たとき、わたしはこう感じた」と、見えた側の気持ちから話すほうが、線のずれが話に乗りやすいかもしれないにゃ。
パートナーのSNSで、あなたがいちばんモヤモヤするのはどれ?

相手のいいねにはモヤモヤして、
自分のいいねは平気。
それに気づいたとき、
「わたし、勝手だな」と
思ったかもしれないにゃ。
810人の答えで、
自分の線だけが外へ出たのは、
体の関係ではなかったにゃ。
いいねや、メッセージや、
ふたりきりで話しこむこと。
もともと、だれが引いても
線がぼやけるところにゃ。
そのぼやけた線が、
事情を知っている自分の側へ
少しずつ寄っていたにゃ。
冒頭の、うすい吹き出し。
「わたしも、前の職場の人の投稿は、
ぜんぶ見てるけど」。
調査では、ひとりが答えたのは
「自分なら」か「相手なら」の片方だけ。
だから、ずれは本人には見えないまま、
数字の上にだけ出てきたにゃ。
あの一行は、その両方を、
あなたが自分ひとりで
並べてみた一行だった。
研究所のねこたちは、
あの吹き出しをそう読んでいるにゃ。
研究者が変えたのは、
聞き方ひとつにゃ。
810人の線を
少し外へずらしたのは、
「自分なら」の
四文字だったにゃ。
見た側のモヤモヤも、
押した側の「何でもない」も、
どちらも、うそではないにゃ。
足あとの向こうの中身は、
聞いてみないと見えないにゃ。
…研究所のねこも、
よそのねこが自分のお皿をのぞくと
うなるのに、
自分がよそのお皿に
顔をつっこむときは、
「見てただけ」にゃ。🐾
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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