
…よそのカップルと比べてしまう心のくせを、のぞいてみたにゃ。
友だちとのランチで、
こんな話にならないにゃ?
人の話を聞きながら、
心のどこかで比べている。
「うちは、まだいいほうかも」。
そう思ったあとで、
ちょっと気まずくなったこと、
ないにゃ?
心理学者のラスバルトさんたち(2000年)は、アメリカの大学で、つき合って3か月以上の恋人がいる学生249人に集まってもらったにゃ。
やることはシンプルにゃ。恋愛の「いいところ」を5分、「よくないところ」を5分、思いつくだけ書く。それぞれ「うちの関係は…」か「よその関係は…」で書きはじめて、どちらに多いかを決めてもらったにゃ。
書く前にかける言葉は、3通りにしたにゃ。
・何も言わない
・「できるだけ正直に、正確に書いてください」
・「学生の恋は、ほかの関係より続きにくいことがわかっています。平均の話ですが」
「よその関係のよくないところ」をいちばんたくさん書いたのは、どのグループだと思う?
どのグループでも、いいところは「うち」に、
よくないところは「よそ」に置きがちだった。
「続きにくい」と聞かされると、その差は広がり、
「正直に」と頼まれると、縮んだ
たった一言で、比べ方がこれだけ変わったにゃ。
「うちは違う」は、ふたりの関係そのものの成績表というより、そのときの心の状態に合わせて動く見え方なのかもしれないにゃ。
おもしろいのは、「正直に」と頼まれたグループにゃ。うちのよくないところが、よそより多く出てきたにゃ。
つまり、悪いところが見えていないわけじゃない。ふだんは、手前に並べていないだけかもしれないにゃ。
研究者たちは、相手の見た目やユーモア、考えの近さなど、具体的な点の評価とも照らし合わせたにゃ。それを差し引いても「うちはいいほう」は残ったにゃ。実際にいい関係だから、という面もある。でもそれだけでは説明しきれない、ということにゃ。
同じ論文には、夫婦の調査もあったにゃ。結婚して1年あまりの63組に同じやり方で書いてもらい、20か月ほどあとに、もう一度たずねたにゃ。
はじめに「うちはいいほう」と強く書いていた夫婦ほど、
20か月後もいっしょにいることが多く、
ふたりの関係の調子も少しよくなる傾向があった
ただ、これは「そう思ったから続いた」とは言い切れないにゃ。研究者たち自身が、逆もありうると書いているにゃ。別れに向かっていた夫婦が、うちのことをよく書けなくなっていただけかもしれない、ということにゃ。
ちなみに、のちに別れた夫婦は、よその関係についても「いいところのほうが多い」と書いていたにゃ。どちらが先だったのかは、この調査ではわからないにゃ。
関係を続けたい気持ちが強い人ほど、この傾向ははっきりしていたにゃ。同じ夫婦の中でも、気持ちが強いほうが「うちはいいほう」と強く書いていたにゃ。
大事なものほど、いいものだと思っていたい。「続きにくい」と聞いて揺れた心を、よそと比べて立て直していたのかもしれない、と研究者たちは考えたにゃ。
うちのことは、相手が言わずにしてくれたことや、がんばっている気持ちまで知っているにゃ。よそのことは、外から見える部分と、うわさ話くらい。
そしてうわさは、悪い話ほど耳に残りやすいにゃ。
どちらも、確かめきった答えではなく、有力な説明のひとつにゃ。
「自分は人よりすぐれている」と見る心のくせは、日本の人たちを調べるとあまり出てこないことが知られていたにゃ。
では、関係のほうはどうか。2000年に、日本とカナダの人たちを比べた研究があるにゃ。親友、いちばん近い家族、恋人。それぞれとの関係を、まわりの同じ年ごろの人たちの関係と比べてもらったにゃ。
どちらの国の人たちも、自分の関係のほうがいいと見ていて、
その強さも同じくらいだった。
日本の人たちには、相手のことを
自分より高く見る傾向も、いっしょに出ていた
「自分はすごい」とは言わなくても、「この人との関係はいい」とは思う。関係をよく見るくせは、自分をよく見るくせとは別のところ、つながっていたい気持ちから来ているのかもしれない、と研究者たちは考えたにゃ。
オランダで千人をこえる大人に聞いた別の調査でも、「うちの関係はたいていの人よりいい」という答えが出ていて、関係に満足している人ほどはっきりしていたにゃ。
研究で「続きにくい」と聞かされたのは、教室でのたった一言だったにゃ。
いまはスマホを開くと、夫の浮気や離婚の体験談マンガの広告が、頼んでもいないのに流れてくるにゃ。
体験談を読んだあとに「うちは大丈夫」と思うのは、ふしぎなことじゃないかもしれないにゃ。研究のとおりなら、揺さぶられたぶんだけ、心が立て直そうとしている。調査はスマホの広告までは調べていないけれど、あの一言と似たことが、毎日少しずつ起きているのかもしれないにゃ。
研究のころ、よその関係はうわさ話で知るものだったにゃ。いまは記念日の写真や旅行の投稿で、よそのいちばんいい日が届くにゃ。
その一枚の裏の言い合いや、疲れた夜は写っていないにゃ。「うちだけ地味」と感じる日は、こちらのふだんの顔と、よその晴れ着の顔を並べているのかもしれないにゃ。
ネットの「ふたりの関係チェック」に正直に答えると、研究の「正直に」と似たことが起きるかもしれないにゃ。よくないところが、いつもより先に出てくる。
研究者たちも、「正直に見つめ直して」を強く求めすぎると、思わぬ重さになることがあるかもしれない、と書き添えていたにゃ。そのとき見えたものが、ふたりの全部というわけじゃないにゃ。
友だちから恋人や夫の愚痴を聞いたあと、あなたの心に浮かびやすいのはどれ?

人の愚痴を聞きながら、
ちょっとだけ、ほっとする。
あとになって、それが
意地悪だったような気がして、
ひとりで気まずくなる日が
あるかもしれないにゃ。
実験で「うちはいいほう」が
いちばん強く出たのは、
「学生の恋は続きにくい」と
聞かされた直後だったにゃ。
友だちの愚痴も、言ってみれば
小さな「続かない話」にゃ。
仲のいいふたりにも、
記念日を忘れる年がある。
そう聞いて揺れた心が、
いっしゅん自分の足もとを
確かめにいく。
あの「ほっ」は、友だちを
下に見た音というより、
足もとがあった音に近い
のかもしれないにゃ。
教室での一言と、ランチの愚痴を
同じ棚に並べたのは、ねこたちにゃ。
研究は、ランチの席までは
のぞいていないにゃ。
「続きにくい」と聞かされた
あとの、5分の紙にゃ。
うちのいいところ、
10個近く。
よそのいいところ、
ほぼゼロ。
ふたりを続けたい気持ちの
強い人ほど、たった一言で、
紙はここまで片寄ったにゃ。
片寄ったのは、その一言を
自分たちのこととして
聞いたからだと思うにゃ。
友だちの話のあとに浮かんだ
「まだいいほう」も、たぶん同じ。
あの日の愚痴を、あなたは
聞き流していなかったにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
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