
…立て直した夫婦も、別れた夫婦もいたにゃ。どちらの道にも、その先があったにゃ。
わかってしまったあと、
こんな声が頭の中をめぐるにゃ。
浮気のあと、
やり直す夫婦もいる。
別れる夫婦もいる。
でも、それぞれの道に進んだ人たちが
何年もたってどうなったのかは、
あまり語られないにゃ。
5年かけて追いかけた研究があるにゃ。
心理学者のマリンさん、クリステンセンさん、アトキンスさんたち(2014年)は、アメリカのロサンゼルスとシアトルで夫婦療法の試験に参加した134組の夫婦を、療法が終わったあと5年間、追いかけたにゃ。
参加したのは、長いあいだ深く悩んできた夫婦ばかり。8か月ほど、ふたりで療法に通ったにゃ。
そのうち19組には、どちらかの浮気があったにゃ。療法の前か途中で、浮気が相手に明かされていた夫婦が14組。療法のあいだ、相手には秘密のままだった夫婦が5組。
研究者たちは半年ごとに、離婚したかどうかと、ふたりの関係にどれくらい満足しているかを聞いていったにゃ。
5年後、離婚していた夫婦の割合。いちばん高かったのは?
浮気が明かされていた夫婦の半分あまりは、5年後も夫婦のままだった。
別れた夫婦は、関係がどんどん不安定になっていた。
続いた夫婦は、年をおって満足度が上がっていた
研究者たちは、浮気のあとの夫婦にはふたつの道があるのかもしれない、と書いているにゃ。少しずつよくなっていく道と、はっきり悪くなって、別れにいたる道。
続いた夫婦の満足度は、浮気がなかった夫婦と比べてどうだった?
比べた相手も、深く悩んで療法に来た夫婦だったことは覚えておきたいにゃ。「浮気のない、うまくいっている夫婦」と同じになった、という話ではないにゃ。
それでも、浮気があったら、その先はずっと冷えたまま、と決まっているわけではなかったにゃ。
そして別れた道も、悪くなっていく関係から出て、自分の暮らしを取り戻した道だったのかもしれないにゃ。この研究は、どちらが正しいかを決めたものではないにゃ。
何が道を分けたのかは、この研究ではまだわからないにゃ。手がかりになるのは、浮気のあとの夫婦を間近でみてきた人たちの見立てにゃ。
夫婦の研究と治療をしてきた3人の心理学者は、夫婦向けに書いた本で、立て直しを3つの段階に分けているにゃ。人数を数えて確かめた結果ではなく、治療の現場から組み立てた見立てにゃ。
わかった直後の、眠れない夜や、問い詰めずにいられない気持ち。そこを少しずつ落ち着かせるのが先。大きなことを決めるのは、そのあとでいい。
ふたりの関係のこと、外の事情、それぞれの事情。理由を知ることは、した側を許すことでも、された側のせいにすることでもない。
この本の副題には「いっしょでも、別々でも」とあるにゃ。進む先は、やり直しだけじゃないにゃ。
夫婦の研究で知られる別の心理学者も、一般向けの本で、立て直しの最初に置いているのは、した側の償いにゃ。償って、気持ちを合わせ直して、それから結び直す。どちらの見立てでも、最初の仕事は、された側が許すことじゃないにゃ。
秘密のままだった夫婦が別れやすかったのも、ここから考えられるかもしれないにゃ。隠れたままでは、②の「なぜ」をふたりで話すことができないからにゃ。ただ、別れたから秘密が出てきた、という逆の順番もありうるにゃ。
浮気のあとの夫婦を長くみてきた臨床心理士は、許しについて書いた本で、4つの形を分けているにゃ。これもデータではなく、臨床家の見立てにゃ。
早く元に戻りたくて、ふたを閉める。その場は静かになっても、傷は手つかずのまま残る、と著者は見ているにゃ。
相手を罰する力にはなっても、怒りに自分のほうが縛られてしまうことがある、と。
許さなくても、怒りを抱え続けなくていい。自分のために傷の手当てをして、先へ進む道にゃ。
傷ついた側が痛みを話し、した側が謝って責任を引き受ける。片方だけでは成り立たない、と。
この本の副題は「許す勇気と、許さない自由」。
許すかどうかと、続けるかどうかは、別々に考えていいのかもしれないにゃ。許さないまま別れる人も、許しきれないまま続けながら手当てをしていく人も、いるにゃ。
最初の研究で浮気があったのは19組。秘密のままだったのは、そのうち5組だけにゃ。80%という数字は、1組ちがうだけで大きく動くにゃ。
もっと大きな数で確かめた研究があるにゃ。2010年に、ドイツとオーストリアのふだんの相談機関でカップル療法を受けた530組を調べ直した研究では、浮気が悩みにあった145組と、ほかの理由で来た385組を比べたにゃ。
浮気のあった夫婦は、始まりのつらさも、気分の落ちこみも強かった。
でも療法のあいだも、終わって半年後まで、よくなり続けた。
半年後には、ほかの夫婦と見分けがつかなくなっていた
どちらの研究も、相談に来た夫婦の話にゃ。相談に行かなかった夫婦、行けなかった夫婦がどうなるかは、まだよくわかっていないにゃ。
研究の夫婦は、20年あまり前のアメリカで、専門家のいる部屋に8か月ほど通ったにゃ。
いまの日本で浮気がわかったとき、話し合いの場所は、たいてい家の中にゃ。
夫婦そろって相談に行くことは、日本ではまだ身近とはいえないかもしれないにゃ。そうすると、問い詰める・謝るの往復が、毎晩の食卓でくり返される。研究の夫婦には、その往復を受けとめる第三者がいたにゃ。ふたりで行くのがむずかしければ、まずひとりで専門家に話すところからでもいいにゃ。
「二度としない」と紙に書いてもらう夫婦もいるにゃ。区切りとして支えになることもある。でも臨床家たちの見立てでは、償いは一度きりの約束じゃなくて、そのあとの毎日のなかで続くもの。紙を交わした日は、終わりじゃなくて、始まりなのかもしれないにゃ。
研究では、続いた夫婦の満足度は年をおって上がっていったにゃ。それでも、わかった日と同じ季節や同じ行事が来ると、気持ちが戻る年もあるかもしれない。研究は半年ごとの点でしか見ていないけれど、上がっていく線の途中にそういう日がまざっていても、ふしぎじゃないにゃ。別れを選んだ人にも、その季節はめぐってくるにゃ。
もし、いま浮気のあとの場所にいるとしたら。いちばん近い気持ちはどれ?

「どっちを選んでも、こわい」。
そのこわさには、
こんな心配もまざっているかもしれないにゃ。
続けても、ずっと冷えたままなんじゃないか。
別れたら、ずっと負けたままなんじゃないか。
研究所のねこたちが目をとめたのは、
研究者たちが描いた道が、
ふたつとも動いていたことにゃ。
よくなり続けて、
浮気がなかった夫婦と変わらないところまで
上がっていった道。
はっきり悪くなって、
別れにいたった道。
冷えたまま、じっと止まっている道は、
そこには描かれていなかったにゃ。
下がっていった道も、
夫婦の線としては、別れたところで終わる。
その先は、ひとりひとりの暮らしの線にゃ。
研究はそこまで追いかけていないけれど、
「負けたまま」で止まる線だとは、
ねこたちには思えないにゃ。
浮気があったのは19組。
もっと大きな数で、これから
描き直されるかもしれない道すじにゃ。
研究者たちが、
半年ごとにたずねていたことにゃ。
いま、ふたりの関係に
どれくらい
満足しているか。
道がふたつに分かれて見えたのは、
その答えを、5年ぶん
つないだあとだったにゃ。
きょう、あなたの中に浮かんだ答えも、
たぶん、まだ点ひとつ。
線がどっちを向いているかは、
点がいくつか並んだころに、
見えてくるにゃ。
猫の国は、優しい人のための場所にゃ。
📋 研究所のほかのレポートにゃ